774 / 1,038
774
しおりを挟む
「嬢は、どっかの店で働いてたのか?」
「図書館で写本してました。 顔役に仕事斡旋してもらって」
「写本! そりゃいい金になったろ?」
「あー……どうなんでしょう?」
「……写本は高級品だぞ?」
「そうなんですけど……ーーそこの顔役だった親方には最初から「あんまり割りのいい仕事は回せねぇからな」って言われてましたし」
「ーー子供だからって……!」
ムッと顔をしかめながら憤る船員たちに、リアーヌは慌てて詳しい事情を説明する。
「その、子供だからトラブル防止で私に任せても構わないって言ってくれる人の仕事しか回してもらえませんでしたしーー子供のお小遣い稼ぎで大人の稼ぎ場を荒らすのはあとがこえーんだって言われてたんで……!」
(あの人たちのほとんどは家庭があって家族がいた人たち。 いなくたって、自分の生活を自分で守らなきゃいけないんだから、稼ぎ場を荒らされて仕事にありつけなくなったら確実に恨まれてた。 あれだけの数の大人たちを敵に回すのは絶対得策じゃないって……)
「私はお菓子やちょっとした日用品ーーお茶や砂糖、ちょっといいお肉なんかが買えればそれで良かったんで……」
リアーヌの説明を聞いた船員たちは、面白くなさそうに鼻を鳴らしながらも、納得はしたようだった。
「……まぁ? そんな子供に仕事取られたらーー面白くはねぇよな?」
「頭にはきちまうよなー……?」
「だから子供のおこずかい程度しか稼いでませんでしたし、それでも文句言ってくるやつは親方が対応してくれてました。 ……その分、上前もはねられてましたけどー……」
「あー……」
「ーー顔役って感じだな……?」
「……まぁ、取られるよなー?」
身に覚えがあるのか、船員たちは顔をしかめ、困ったように肩をすくめ合いながらリアーヌに同情的な視線を送る。
そんな視線にリアーヌも肩をすくめ返しながら答える。
「きっとどこでも一緒だよね? でもそこの親方は……割といい人だったよ。 そのこともひっくるめて全部説明してくれてたし、私たちは親方にだいぶがめられてる可哀想な子供たちでいられた」
「……良いのか悪いのか」
「ーー子供だったんなら……安全に働けるだけで悪くはねぇんだろうけどな?」
「……その親方がいいとこ取り過ぎな気がしねぇか?」
そんな船員の言葉にリアーヌはきょとりと目を丸くしながら首を傾げた。
「……どこのどんな職業だって、顔役や元締めが一番いいとこ取ってくんじゃ無いの?」
「ーーその通りだな?」
「たまーに一歩引くが、たいがいいい思いすんのは元締めだわな?」
その言葉に頷きながら、リアーヌは(いや待てよ……?)と疑問を感じていた。
「図書館で写本してました。 顔役に仕事斡旋してもらって」
「写本! そりゃいい金になったろ?」
「あー……どうなんでしょう?」
「……写本は高級品だぞ?」
「そうなんですけど……ーーそこの顔役だった親方には最初から「あんまり割りのいい仕事は回せねぇからな」って言われてましたし」
「ーー子供だからって……!」
ムッと顔をしかめながら憤る船員たちに、リアーヌは慌てて詳しい事情を説明する。
「その、子供だからトラブル防止で私に任せても構わないって言ってくれる人の仕事しか回してもらえませんでしたしーー子供のお小遣い稼ぎで大人の稼ぎ場を荒らすのはあとがこえーんだって言われてたんで……!」
(あの人たちのほとんどは家庭があって家族がいた人たち。 いなくたって、自分の生活を自分で守らなきゃいけないんだから、稼ぎ場を荒らされて仕事にありつけなくなったら確実に恨まれてた。 あれだけの数の大人たちを敵に回すのは絶対得策じゃないって……)
「私はお菓子やちょっとした日用品ーーお茶や砂糖、ちょっといいお肉なんかが買えればそれで良かったんで……」
リアーヌの説明を聞いた船員たちは、面白くなさそうに鼻を鳴らしながらも、納得はしたようだった。
「……まぁ? そんな子供に仕事取られたらーー面白くはねぇよな?」
「頭にはきちまうよなー……?」
「だから子供のおこずかい程度しか稼いでませんでしたし、それでも文句言ってくるやつは親方が対応してくれてました。 ……その分、上前もはねられてましたけどー……」
「あー……」
「ーー顔役って感じだな……?」
「……まぁ、取られるよなー?」
身に覚えがあるのか、船員たちは顔をしかめ、困ったように肩をすくめ合いながらリアーヌに同情的な視線を送る。
そんな視線にリアーヌも肩をすくめ返しながら答える。
「きっとどこでも一緒だよね? でもそこの親方は……割といい人だったよ。 そのこともひっくるめて全部説明してくれてたし、私たちは親方にだいぶがめられてる可哀想な子供たちでいられた」
「……良いのか悪いのか」
「ーー子供だったんなら……安全に働けるだけで悪くはねぇんだろうけどな?」
「……その親方がいいとこ取り過ぎな気がしねぇか?」
そんな船員の言葉にリアーヌはきょとりと目を丸くしながら首を傾げた。
「……どこのどんな職業だって、顔役や元締めが一番いいとこ取ってくんじゃ無いの?」
「ーーその通りだな?」
「たまーに一歩引くが、たいがいいい思いすんのは元締めだわな?」
その言葉に頷きながら、リアーヌは(いや待てよ……?)と疑問を感じていた。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
やり直ししてますが何か?私は殺される運命を回避するため出来ることはなんでもします!邪魔しないでください!
稲垣桜
恋愛
私、クラウディア・リュカ・クロスローズは、子供の頃に倒れて、前世が柏樹深緒という日本人だったことを思い出した。そして、クラウディアとして一度生きた記憶があることも。
だけど、私、誰かに剣で胸を貫かれて死んでる??
「このままだと、私、殺されるの!?」
このまま死んでたまるか!絶対に運命を変えてやる!と、持ち前の根性で周囲を巻き込みながら運命回避のために色々と行動を始めた。
まず剣術を習って、魔道具も作って、ポーションも作っちゃえ!そうそう、日本食も食べたいから日本食が食べられるレストランも作ろうかな?
死ぬ予定の年齢まであと何年?まだあるよね?
姿を隠して振舞っていたら、どうやらモテ期到来??だけど、私……生きられるかわかんないから、お一人様で過ごしたいかな?
でも、結局私を殺したのって誰だろう。知り合い?それとも…
※ ゆる~い設定です。
※ あれ?と思っても温かい心でスルーしてください。
※ 前半はちょっとのんびり進みます。
※ 誤字脱字は気を付けてますが、温かい目で…よろしくお願いします。
【完結】婚約者が恋に落ちたので、私は・・・
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
ベアトリスは婚約者アルトゥールが恋に落ちる瞬間を見てしまった。
彼は恋心を隠したまま私と結婚するのかしら?
だからベアトリスは自ら身を引くことを決意した。
---
カスティーリャ国、アンゴラ国は過去、ヨーロッパに実在した国名ですが、この物語では名前だけ拝借しています。
12話で完結します。
【完結】私がいる意味はあるのかな? ~三姉妹の中で本当にハズレなのは私~
紺青
恋愛
私、リリアンはスコールズ伯爵家の末っ子。美しく優秀な一番上の姉、優しくて賢い二番目の姉の次に生まれた。お姉さま二人はとっても優秀なのに、私はお母さまのお腹に賢さを置いて来てしまったのか、脳みそは空っぽだってお母様さまにいつも言われている。あなたの良さは可愛いその外見だけねって。
できる事とできない事の凸凹が大きい故に生きづらさを感じて、悩みながらも、無邪気に力強く成長していく少女の成長と恋の物語。
☆「私はいてもいなくても同じなのですね」のスピンオフ。ヒロインのマルティナの妹のリリアンのお話です。このお話だけでもわかるようになっています。
☆なろうに掲載している「私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~」の本編、番外編をもとに加筆、修正したものです。
☆一章にヒーローは登場しますが恋愛成分はゼロです。主に幼少期のリリアンの成長記。恋愛は二章からです。
※児童虐待表現(暴力、性的)がガッツリではないけど、ありますので苦手な方はお気をつけください。
※ざまぁ成分は少な目。因果応報程度です。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
死に戻りの公爵令嬢は嫌われ者の下僕になりたい
荒瀬ヤヒロ
恋愛
理不尽に婚約を破棄され投獄された。
誇りを守るためには自害するしかなかった……
はずなんだけど、目がさめると十歳の頃に戻っていた。
やり直しの人生、自分を陥れたクズ外道どもとは関わりたくないのは勿論のこと、私の誇りと名誉を守らせてくれた恩人に恩返しがしたい!
たとえ彼が嫌われ者だったとしても!
「私をあなたの下僕にしてください!」
二度目の人生は恩返しのために使うと決めた公爵令嬢ステラの全力恩返し人生の幕が開く。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる