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「……こっちを解決すりゃ、すぐに違う問題が出てきて、潰す順番間違えりゃ、こっちまで共倒れ……なのに、そこを潰さねぇと大奥様がマズかったり……あんときもイライラさせられたが、今回も相当だぞ……」
「それでも上手くやれたじゃない。 だから今回だってきっと平気よ。 ね?」

 リエンヌはそう言いながら隣に座る夫に手を差し出す。
 その手をギュッと握り締め返しながら、サージュはリアーヌとザームに視線を流した。
 そして力強く頷き返す。

「当たり前だ。 うちの子たちは幸せになるーーこれは絶対だ!」
「そうよね!」

 その言葉がギフトによるものだったのか、それとも二人の願望だったのか、それはリアーヌたちには分からなかったが、やはり受ける安心感は大きく、ホッとしたようにクスクスと笑いながらザームと顔を見合わせた。
 そしてその会話を聞いていた使用人たちも、安心したように頬を緩ませるのだったーー


「ーーなぁ、俺たちも旅行に行ってみないか?」
「急になぁに?」
「いや、リアーヌはアルレラに行くだろ?」
「ーーうちにとってもリアーヌにとっても良いことが起こるわよー?」
「そりゃ良いんだが……ザームだってどこかに連れてってやりてぇし……ーー俺たちだって旅行の一つくらい行ったって良いんじゃねぇか……?」

 チラチラとリエンヌの反応を確認しながらサージュは提案する。
 その言葉には、なんの嘘もなかったがーーどちらかというとサージュ自身が(俺だって旅行の一つぐらい……)と、強く希望しているようだった。

「……確かにザームだけ旅行無しは可哀想ねぇ?」
「ーーネルリンガから招待は受けてたろ?」
「……確かに?」

 そう答えたリエンヌは再びテーブルに肘をつきながら瞳を閉じた。
 そしてニンマリと笑いながら口を開く。

「ーーいい考えよ! 向こうの方々とも仲良くなれそうだし、私たちはとっても羽を伸ばせそう!」
「よしきた! 決まりだ!」

 パシン! とテーブルを叩きながらそう言ったサージュだったが、すぐさま壁際から聞こえてきたヴァルムの咳払いに、テーブル叩いたところを摩りながら「ハハハ……」と愛想笑いを浮かべるのだった。

「ーーソフィーナんトコ行くのか?」
「ええそうよ!」
「……ふーん?」

 ニマニマとにやけそうになる口元をごまかしながら、大したことのないような態度で答えるザームに、家族たちや使用人たちの頬が緩む。

「ーー用意をお願いできる?」
「かしこまりましてございます」

 リエンヌから頼まれたヴァルムは恭しく頭を下げると数名の侍女たちに視線を走らせる。
 その者たちが小さくお辞儀をしながら部屋を出ていく頃、サージュもヴァルムに話しかけていた。
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