成り上がり令嬢暴走日記！

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　呆れを滲ませたゼクスの言葉に、ぐぬぅ……とリアーヌが言葉を詰まらせたぐらいで、困ったようなヴァルムが口を開いた。

「ーー旦那様からのご伝言は以上なのですが……おそらくは王家的ななにか、のほうでございましょう」

　ヴァルムは内心で苦笑しながらも、同時に、時と場所を考えきちんと言葉をぼかして見せたリアーヌの対応力を誇らしく感じていた。

「……ま、そうですよね？　そうなんじゃ無いかなーとは……半分ぐらい」
「え、半分もザーム様の話だと思ってたの？」

　気が抜けてしまったのか、ゼクスはいつもの調子でリアーヌに向かって答えていた。

「だってうちの長男はザームですし……時々ダメなこともありますし……ーー父さんからダメだとか言われるほどのダメでは無いんですけど……ーー結局は父さんの伝言が紛らわしいのが悪いんじゃ無いかと……」

　モゴモゴと言葉を転がすように答えるリアーヌに「……だといいね？」と肩をすくめるゼクス。
　いつもよりもだいぶ気安い対応をする二人に、レジアンナやクラリーチェが瞳を輝かせ、フィリップやレオンたちが気まずげに視線を逸らし始めた頃、ヴァルムが再び口を開いた。

「ーー当家といたしましては苦渋の判断ではございますが……ーー旦那様の決定でございます。　お嬢様も今後はそのようにお立ち振る舞い下さいますよう……」
「ーー分かりました……」

（……今、見間違いじゃなければ「苦渋の判断」のところで、かっつりレオン見てたなぁ……ーーでも私としてもユリアが王妃に納まるより、クラリーチェが王妃になってくれたほうがいい。　優しいし仲も良好だし……悪役令嬢認定してこないし……）

「……よろしいのですか？」
「え？」
「ーー旦那様からは、お嬢様がどうしても嫌だとおっしゃるのであれば……との言葉も頂戴しております」
「なっ⁉︎」

　ヴァルムの言葉に大きく反応したのはフィリップ、そしてレオンだった。

「――なにか問題でも？」

　ヴァルムは未だにレオンが身分を偽っていることを逆手に取り、素知らぬふりを続けながら首を傾げた。


「……いや、失礼した」

　グッと手を握りしめたレオンは、そう答えながら浮かしかけた腰をソファーに沈み込ませる。

「あー……まぁ、その辺りはどうでも……ーー」

　良いと言いかけて、リアーヌはヴァルムからご指導の気配を察知して、スッと背筋を伸ばした。

（王城の中では気を抜かないちゃダメなのよリアーヌ！　たとえ信用に値する使用人たちだったとしても、耳も目も口も付いてるんだから！　胸張って足揃える！　扇子は膝元でいつでも使えるようにしておいて……ええと、この場合守護とかはボカせる限りボカしたほうが良いからーー）