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「……それでも現在のあの二人の様子や、ボスハウト家とラッフィナート商会の業務提携の状況を考えるならば、上手く婚約条件のすり合わせを行なったようだな?」
「しかし、そのような手段で娘をかすめ取った相手に……」

 ギュッと眉間に皺を寄せ、嫌悪感を露わにするレオンに、フィリップは達観したような表情で話しかける。

「レオン……」
「なんだ?」
「ーーあの家はほぼ全員が規格外だ。 家ののために……と動いてはいるが、あの家族がよしとする理は我らには到底測りきれない」

 フィリップのその言葉にレオンは反論するように口を開く。

「しかし、現当主はかなりのやり取りだと!」
「ああ、その通りだ。 王城に巣食う古狸どもをことごとくかわし続け、その上でご自身の足場を固めていらっしゃるのだからな」
「……どういうことだ? 平民として育った方ではない……?」

 フィリップの言葉に混乱したように視線を揺らし、周りの反応を伺うレオン。
 フィリップも含めて周りの者たちは、
そんなレオンを気の毒そうに見つめていた。
 ーー知れば知るほど混乱するその状況に覚えがあったようだった。

「ーー信じられないかも知れないが……子爵は接触自体をことごとく回避している。 会話や政治ーーそんなやりとりで回避してるわけじゃないんだ」
「……は?」

 フィリップの言葉にポカン……とした表情になるレオン。
 それほどまでにフィリップの言葉は荒唐無稽な、信じ難い話だった。

「ーー気持ちはわかる。 だが事実だ。 私も散々調べた。 あるときは「疲れたから家に帰る」別に日には「なんとなくこちらの道を通りたい」ほかには「そっちはダメな気がする」「この方とならば行ってもいいか」なんてのもあったな……そんな思いつきで、手ぐすね引いて待ち構えている古狸どもをかわし続けているんだ」
「いや、流石に……」
「ーーああ、子爵とて完璧にかわせるわけじゃない……ーーだがな? そんなときは同行なさっている方が居て、これが全てはかったかのように古狸どもが話を切り出すのに、都合の悪い相手なんだ」
「……そんなことが可能なのか……?」

 フィリップや周りの反応から、少しっつではあったが、その話を信じる気持ちがレオンの中に芽生え始めていた。
 しかし当然信じきれない気持ちも強く残っていて、探るような視線をフィリップに向けながら念を押すようにたずねた。

「……可能なんだろうな『豪運』というギフトの力があれば」

 そんなレオンに少し投げやりに答えるフィリップ。
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