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「あ、えっと……ーーちゃんとした名前があったんだなって……」
「ええ……?」
リアーヌの答えに、困惑した声をあげるゼクス。
「だ、だって! 子供たちみんな“木の下の”って呼んでて!」
だからてっきり! と続けるリアーヌの言葉にクスクスと笑いながら答えたのは、唯一この花の名前を知っていたディルクだ。
「そうですね、この村では大体それで通じてしまいます。 冬に咲く花というだけで限られてしまいますし、この花は木下にしか咲かないものなので……」
その説明をフムフムと大きく頷きながら聞くリアーヌ。
(言われてみれば、冬の花なんてそこまで無いもんなぁ……)
「ーーでもリンゼルって名前も可愛いですし、名前も形もベルっぽいし、これは花園で人気が出ますよ⁉︎」
「欲を言うならもう少し雪に映えてくれるほうが良かったけど……ーー今の季節なら、咲いてくれるだけで御の字だ」
「映えない方が探す難易度が上がるんで、いいんじゃないかと……」
「……難易度?」
ゼクスはリアーヌの話の意味が分からず、首を傾げながら視線で詳しい説明を求めた。
その視線にリアーヌはニヤリとイタズラっぽく微笑み、内緒話をするように声をひそめ、口元に手を添えて話し始めた。
「なんでも花園には冬にしか見つけられない小さなベルがあって、それを見つけられた人には幸せが訪れるんだそうですよ?」
「ーー……それがこのリンゼル?」
「はいっ!」
リアーヌは得意げに胸を張って答える。
「リアーヌ天才。 いける。 その話、絶対いける!」
「ですよね⁉︎」
ゼクスに褒められ得意満面のリアーヌは、ふへへーっと身を捩らせながら頬を押さえる。
しかし急に真顔に戻り、今度は心配そうな顔つきでゼクスに向かってたずねる。
「……この花って使えますかね? どこかのお家の紋章になってたりしませんかね?」
「リンゼルって花は聞き覚えが無いから大丈夫だと思うけど……ーーもしどこかの家が使ってたとしても、こっちで交渉しておくよ」
「ありがとうございます!」
ホッとしたように答えたリアーヌは、嬉しそうにリンゼルの花をちょんちょんっとつついた。
「ああーーリアーヌ様、もうすでにその花で遊んでみましたか?」
「え……子供たちみたいに指にはめてーーとかですか……?」
リアーヌのは答えにディルクは困ったように曖昧な微笑みを浮かべながら答えた。
「ーーでは無いですね。 あー……っと本当は朝露なんですけどーー今回はこちらで……」
そしてそう説明しながら、部屋に置いてあった水差しからコップに少しだけ水を注ぐと、ディルクはそのコップをリアーヌたちの前に差し出した。
「ええ……?」
リアーヌの答えに、困惑した声をあげるゼクス。
「だ、だって! 子供たちみんな“木の下の”って呼んでて!」
だからてっきり! と続けるリアーヌの言葉にクスクスと笑いながら答えたのは、唯一この花の名前を知っていたディルクだ。
「そうですね、この村では大体それで通じてしまいます。 冬に咲く花というだけで限られてしまいますし、この花は木下にしか咲かないものなので……」
その説明をフムフムと大きく頷きながら聞くリアーヌ。
(言われてみれば、冬の花なんてそこまで無いもんなぁ……)
「ーーでもリンゼルって名前も可愛いですし、名前も形もベルっぽいし、これは花園で人気が出ますよ⁉︎」
「欲を言うならもう少し雪に映えてくれるほうが良かったけど……ーー今の季節なら、咲いてくれるだけで御の字だ」
「映えない方が探す難易度が上がるんで、いいんじゃないかと……」
「……難易度?」
ゼクスはリアーヌの話の意味が分からず、首を傾げながら視線で詳しい説明を求めた。
その視線にリアーヌはニヤリとイタズラっぽく微笑み、内緒話をするように声をひそめ、口元に手を添えて話し始めた。
「なんでも花園には冬にしか見つけられない小さなベルがあって、それを見つけられた人には幸せが訪れるんだそうですよ?」
「ーー……それがこのリンゼル?」
「はいっ!」
リアーヌは得意げに胸を張って答える。
「リアーヌ天才。 いける。 その話、絶対いける!」
「ですよね⁉︎」
ゼクスに褒められ得意満面のリアーヌは、ふへへーっと身を捩らせながら頬を押さえる。
しかし急に真顔に戻り、今度は心配そうな顔つきでゼクスに向かってたずねる。
「……この花って使えますかね? どこかのお家の紋章になってたりしませんかね?」
「リンゼルって花は聞き覚えが無いから大丈夫だと思うけど……ーーもしどこかの家が使ってたとしても、こっちで交渉しておくよ」
「ありがとうございます!」
ホッとしたように答えたリアーヌは、嬉しそうにリンゼルの花をちょんちょんっとつついた。
「ああーーリアーヌ様、もうすでにその花で遊んでみましたか?」
「え……子供たちみたいに指にはめてーーとかですか……?」
リアーヌのは答えにディルクは困ったように曖昧な微笑みを浮かべながら答えた。
「ーーでは無いですね。 あー……っと本当は朝露なんですけどーー今回はこちらで……」
そしてそう説明しながら、部屋に置いてあった水差しからコップに少しだけ水を注ぐと、ディルクはそのコップをリアーヌたちの前に差し出した。
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