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「ーーどうなんでしょうねぇ……?」

 リアーヌはここ最近で増えた単語の一つをくり出しながら、すがるような視線をビアンカに向けるが、そのビアンカはスッとリアーヌから顔を背けたまま決して視線を合わせようとはしなかった。

(そんな露骨にムシする⁉︎)

「リアーヌ嬢教えてくれないか?」

 目を丸めてビアンカを見つめるリアーヌにフィリップが再び声をかけ、再び自分に注意を向けさせた。

「ーーそのようなこと……」
「頼む!」

 ガバリと勢いよく頭を下げながら言うフィリップ。
 12月のテラス席とはいえ、今日は快晴でレジアンナがテラス席を選ぶほどには気持ちの良い一日でーー
 そんな日であるからこそ、テラス席にも庭にも通路にも、決して少なくない生徒たちが出てきていてーーリアーヌに向かって頭を下げるフィリップの姿にギョッとした顔つきを向けていた。

「……うふふふふ」
 
 そんな状況に引きつった顔を必死に笑顔で取り繕いながら、助けを求めるようにゼクスを見つめるリアーヌ。

「ーー流石にごまかせないよ?」
「うふ……」
「……最初からそうしてくれてたらごまかせたんだけどね……?」
「まぁ……」

 見つめあいながら小声でヒソヒソと会話する二人。
 しかしゼクスだけはリアーヌに気が付かれないよう細心の注意を払いながら、頭を下げ続けるフィリップに意地の悪い笑みを向けていた。

「ーーたわむれていないで、さっさと説明しなさい?」
「ーーはいっ」

 見かねたビアンカがピシャリと言い放つと、条件反射のように背筋を伸ばしたリアーヌがすぐさま返事を返す。
 ゼクスはそんな二人のやりとりを眺めながら(……この条件反射こそ、どうにかしなきゃいけないんじゃ……?)とこれからの未来を少しだけ不安に感じた。

「ーーえっとですね?」

 真っ直ぐに自分を見つめるフィリップを少し気まずく感じながらも、リアーヌはおずおずと説明を始めた。

「おそらくパーティに合わせて帰って来られるなら、デートに合わせて帰って来られたんじゃないの⁉︎ ……とかいう憤りは感じていると」
「だが……パーティに一人で出席するのも婚約者意外をパートナーにするのも嫌がると……ーー私は少しでもレジアンナを安心させたいと思って……」
「お気持ちは分かるんですけど……その……ーーほんのちょっとの違いなんですけど「必ずパーティには間に合わせてみせる。 決して一人にはしないと誓うから安心しておくれ」とかだったら、かなり印象は良くなったんじゃ無いのかなって……」

 リアーヌは自信なさげに意見を披露する。
 自分は間違いなくこっちの言い方のほうがいいと思っているが、レジアンナがどう感じるのかまでは分からなかった。
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