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 放課後の廊下。
 ビアンカと馬車乗り場で別れたリアーヌは、そのまま騎士科の教室などがある建物に足を進めていた。

 そんな時ーー
 建物の影から急に人が現れてリアーヌの前に立ち塞がった。

「やぁリアーヌ」
「……ゼクス様?」
「これから練習かい?」
「はい……⁇」

 リアーヌは頭の周りに沢山の疑問符を飛ばしながら、ゼクスの質問に頷く。

 エドガーがボスハウト家と契約している今、リアーヌはほぼ毎日と言っていいほど放課後は騎士科に顔を出し、エドガーに回復魔法をかけている。
 エドガーとの契約では、怪我や事故に合ってしまった場合は優先的に治療にあたるーーと書かれていたのだが、回復魔法の精度を上げたいリアーヌと、回復をかけてもらうと疲れも取れることを知ったエドガーの利害が一致し、リアーヌはほぼ毎日のように騎士科に姿を表すようになったのだった。

「ーーご一緒しても?」

 ゼクスはそう言いながらリアーヌの隣に立ち、スッと左腕をリアーヌに差し出した。

「……あ、はい。 ぜひ……?」

 リアーヌは差し出された腕に手を通しながら、キョトンと目を丸くし、視線を彷徨わせていた。

(……ご一緒もなにも……私、エドガーと合流したら五分もたたないうちに馬車まで戻りますけど? のんびりしててオリバーさんが放課後まで好き勝手し始めたらどうしてくれるのかと……ーーえ、マジでゼクス、誰になんの用があるん⁇)
 
「そうだ。 リアーヌ、セハの港のパール商を覚えてる?」
「あー……バロックの?」
「そう。 あそこのおやっさんが、とびっきりのパールとたこ焼き用意してるからまた遊びに来てくれってさ」
「たこ焼き⁉︎」

 リアーヌは瞳を輝かせながらゼクスを見つめる。
 そんなリアーヌにゼクスは苦笑を浮かべると、困ったように口を開く。

「少しはパールの方にも興味を持ってあげて……?」
「あ……ーー持ってますよ? 全然持ってますし!」
「ふぅーん?」

 ゼクスはからかうようにニヤニヤと笑いながらリアーヌの顔を覗き込む。
 リアーヌはそんなゼクスに思い切り顔をしかめて見せた。

「ふふっ ごめんごめん。 ーーそういえば花園の入場者数はどう? 落ち着いちゃってるかな⁇」
「あー……悪くはないみたいなんですけど、グランツァの並木道まで足を伸ばす人はちょっと減ったみたいですーーって言っても、テコ入れ前と比べたら全然多いんですけどねー」
「あの花園大きいもんね……? 地図上で見た時は、そこまで離れてるように見えなかったんだけどなぁ……」
「全体から見ると、全然近いんですよ。 ーーただ、あの花園……王城の4分の1取り囲んでますからね……?」

 ゼクスのぼやきに、リアーヌも困ったように笑いながら肩をすくめる。
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