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「それに、相手の方には“慎ましいけれど、しっかりした女性”だと思われたいじゃないですか」

 エミーリエの言った言葉に、同意するように大きく頷きながら伺うようにリアーヌを見つめるマーリオン。

「ーーリアーヌ様、なにか良い案はございますかしら……?」
「……そう、ですねぇ……?」

 曖昧に微笑みながら首をかしげて見せるリアーヌ。

(うん、その話を全部まるっと相手側にしよっか? なにも本人対本人でやらなくても、使用人同士が意見交換してくれたら、どことなく解決するんじゃない⁇ ーー大体さ? 手袋を付けてない状態で手と手が触れ合ってたらハレンチ認定されるこの世界で、ウワサにならないけれど、相手との仲を発展させ、慎ましくも恋人同士のようになりたいとか……ーーえ、そんな方法実在しますか?)

 二人から期待に満ちた視線で見つめられ、リアーヌは内心をごまかすようにカップに手を伸ばした。

(大体ゼクス様と、放課後のゴチになりますデートを月に二、三回してるこの私が「仲がおよろしくて、羨ましいですわ?」とか「ラッフィナート男爵は情熱的ですね」ってからかわれるんだぜ……? ーーなんだ、それで良いじゃん)

「一緒にお出かけすれば良いのでは?」

 リアーヌは名案だ! と、ばかりに顔を輝かせたが、二人はそうは思わない ったのか、その表情は曇っている。

「たまに……のことであれば、それも良いとは思うんですけれどね……?」

 マーリオンはそう言いながらエミーリエに視線を向け、それを受けたエミーリエはコクコクと頷きながら同意する。

「ええ。 すでに縁組は整っておりますのに、貴重な時間をこちらに使え、とも言いにくいですわ?」

 学園に入学するほとんどの者たちは、そこでの人脈作りを優先させる。
 そこで築き上げた関係性は、社交界や社会に出た後も使え、それは自分の価値や切り札となり得るからだ。
 ーー必然的に、両家の間で正式な契約が交わされている婚約者同士ともなれば、不仲である、などと言う不名誉なウワサが流れない程度の付き合いになってしまうことが少なくはなかった。

(……つまり、相手に時間的負担を与えず、慎ましくもしっかりと二人の仲を深め、さらには人々の注目を集めてウワサにならないような、そんな案を考えろって言われてるのかな……? ーー注文が多すぎるんだよなぁ……⁇)

「あー……文通、とか?」

 リアーヌは全くなにも思いつかない頭を抱えるように、自分のおでこを抑えながら、苦し紛れに提案する。

「その程度ならば……ーーしかし、今でも便りが来ないわけでは……」

 案の定、その案にマーリオンはまったく乗り気ではなかった。
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