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 話している最中に割り込むという、分かりやすくもあからさまなゼクスのマナー違反にに、フィリップの鉄壁とも思えた笑顔が歪む。
 しかしゼクスはそんなことはお構いなしに言葉を続ける。
 ーーまるでフィリップが不機嫌になったことなど、どうでもいいとでも言うように。

「いざとなったらうちで用意するからねー? なんたって婚約者なんだからー。 だからヴァルム殿には納得がいくまで吟味していただこうねー⁇」
「……そッスね?」

 口の端をヒクつかせながら、そう答えたリアーヌは次の瞬間、足先に痛みを覚えた。
 その痛みは、リアーヌにとってもはや馴染み深いものとなっていたので、すぐさま口元に手を添え「そうですわね?」と、口角を引き上げ首を傾げて見せた。

「それは残念だ……しかし我々は元を辿れば同じ血筋ーーいつでも気軽に声をかけてください」
「……うふふふふ?」

 ニコニコ笑いながら、冗談とも本気ともつかない言葉をかけてくるフィリップに、リアーヌも肯定とも否定とも取れないような微笑みを返した。

(……この人たち、よく毎回毎回飽きもせずに毎回バチバチしてられるよ……もうそろそろ、お互いに居ないものとして、お互いにシカトしてれば良いのに……ーーいや、それをしたら社交にならないってのは分かるけど……でも社交って結局のところ、表面上では仲良くして「お互いに持ちつ持たれつで行きましょうね!」って意思の確認をし合うのが基本でしょ? パワーバランスとかで違いは出てくるんだろうけどーーここまでバチバチにやり合っといて、社交になんかなってないでしょ……⁇ ……仲悪く見せる社交……絶対無いな。 こんな小さなお茶会でそんなんされても困るし……ーー本当、なんでこんな気まずい会を開こうと思ったのか……そういえばビアンカはフィリップたちがなにかを企んでるって言ってたけど……ーーそれはまだ仕掛けて来てないのかな? ……それともゼクス同伴だったから仕掛けるのをやめたとか……⁇)

 ニコニコと笑顔を貼り付けたまま考え事を続けるリアーヌの耳がビアンカの小さな咳払いを拾う。
 これを聞き逃すと、再び足先に痛みが走ることを嫌というほど知っているリアーヌは、すぐさまビアンカのほうに視線を走らせた。

「ーーそういえば、この間家族で花園に行きましてよ?」

 分かりやすい話題提供も兼ねてビアンカはリアーヌに話かける。
 しかし、その他の者たちには話を振らず、そのまま話を続けようとしているところを見ると、どんなに話を盛り上げてもゼクスに突っかかって、台無しにしてしまうフィリップに対するささやかな意趣返しが含まれているようだった。
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