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 リアーヌはそう考えながらも、全く心当たりが無いわけでもなかった。

(……いや、散歩の途中でじーちゃんばーちゃんが困ってたら助けたりはしたけどーーまさかそれでこんなに大量の物資が……?)

 リアーヌは再び馬車に積み込まれていく大量の荷物に視線を移し、大きく首を傾げる。

(ーーそりゃ確かに畑や庭の果物や野菜の収穫手伝ったりすることもあったけど、あの時は採れたて新鮮な収穫物をお礼にって振る舞って貰えたし、お菓子やジャムのアドバイスしてくれってお願いされた時だって、私は好き勝手飲み食いして、好き勝手なことを言っただけ……ーー腰や膝が痛いって言ってた人に回復のギフト使ったのはありがたがってもらえたけど……あれって実はスキルに慣れる意味合いがものすごく強かったわけで……)

 そこまで考え、リアーヌは大きく息をついた。
 それはアンナが言った「手を差し伸べた」という状況がどれのことなはっきりしなかったためだったが、今リアーヌが考えていたこそが、まさに正解だった。

 ゼクスの婚約者だというのに、この村に同行してきたリアーヌのことを、初めは訝しんでいた村人たちだったが、自分たちと大差ない格好で村を闊歩し、年寄りの手伝いをして泥にまみれる“ご令嬢”に村人たちの警戒心はあっという間に消し飛んでいた。
 そして自分たちの相談事に嫌な顔ひとつせずアドバイスをくれる少女に好意をいだいた。
 ーーそしてなにより、医者のいないこの村で、【回復】のギフトはとても貴重であり、村を練り歩きながら些細な体の不調を治してくれるリアーヌは、村人たちの目には聖者のように映っていた。

 だからこそ村人たちは、ゼクスの婚約者であるリアーヌになんとかこの村をより一層気に入ってもらい、少しでも早く再訪してもらおうと、自慢の果物や野菜を持ってきたのだった。

(大体、村の人たちに返しきれないほど教えてもらったのは私のほうだったりするんだよなぁ……?)

 リアーヌは内心で苦笑いを浮かべながら小さく肩をすくめた。

(蛍がたくさん見れる川辺に、満点の星空が独り占めできる丘ーーそれにお酢リンスの正しいやり方や保湿クリームまで教えてもらっちゃってさぁ……ーー保湿クリームに至っては光の速さでアンナさんに買い漁っていただいた……ーーお酢リンスで髪はうるツヤ、パールパックと保湿クリームでお肌はぷるぷる……ーーここに来られて本当に良かった……ーーここに来なかったら、前世でお酢リンス試してたアイドルと和解できないところだった……ーーまさか、私が考えてた以上に薄めて、長く漬け込むものだったとは……匂いが残りそうでさっさと洗い流してたのが良くなかったんだなぁ……ヤラセか仕込みだと決めつけてゴメンよアイドル……)
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