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「ーーはい、これ。 他のみんなにもちゃんと説明してあげてね」
「おう! ……なぁ、嬢、これどうやって書いたんだ?」

 青年は渡されたメモ用紙を受け取り、ジッと見つめてみたり、裏返してみたり、匂いを嗅いでみたりしながら、しきりに首をかしげている。

「ーー私のギフトすっごいでしょ?」

 褒められたリアーヌは、ツンっと鼻を高くしながら胸を張り得意げに答えた。
 青年はそんなリアーヌをポカン……と見つめていたが、やがてヘラリ……と顔を崩した。
 そして、再びメモ用紙に視線を移すと「ああ……ーー嬢はすげぇなぁ……」と、眩しそうに目を細めながらしみじみと呟いた。



「ーーそろそろお開きにしようか?」

 ゼクスのその一言で、村人たちとの話し合いは終了し、村人たちもゼクスも、始まった時よりもだいぶ明るい表情でその場を後にするのとになったのだったーー



 それから数日後のサンドバル村。
 これから王都に戻るラッフィナート家の馬車に、次々と運び込まれるフルーツや野菜、瓶や箱に詰められたものーーその光景をリアーヌは目を丸めて眺めていた。

「え、まだあるの……?」

(ーーあれ? これ前領主と同じに分類される気が……?)

 リアーヌは不安げな瞳でゼクスを振り返った。
 そんなリアーヌの様子に、ゼクスはリアーヌがなにを考えているのか瞬時に理解して、プッと吹き出しながら口を開いた。

「きっとリアーヌがたくさん頑張ってくれたから、そのお礼なんだと思うよ? ーーほら、おっちゃんやおばちゃんって、色々ものくれるだろ⁇」
「ーー多すぎでは……?」

(馬車一台じゃ収まり切らなくて、二台目突入しちゃってるじゃん……)

「リアーヌ、ここの人たちと凄い仲良くなっただろ? みんな喜んで欲しいんだよ」

(……そういう建前で渡された、ゼクスへの賄賂わいろ説……)

 リアーヌはゼクスの説明を聞いてもなお、その言葉が信じられなかった。

 しかし、このゼクスの言葉は正しく、今馬車に乗せられている品物たちはリアーヌへの贈り物であり、感謝の印でもあった。

「ーー僭越ながら、お嬢様がここの人々に心を砕き、手を差し伸べられた結果なのではないかと……」

 そう声をかけてきたのはアンナでーー答えを求められていなかったにも関わらず、迷うことなくリアーヌに助言を発していた。
 ーーこちらも、この数日間で柔軟な対応を取るべき状況に、だいぶ慣れた様子だ。

「……手を?」

 アンナの言葉にぐるりと視線をを斜め上に引き上げながら、リアーヌはここ数日の自分の行動を思い返していた。

(……ーーえ? ここ数日って……好き勝手にこの村を散策しながら遊んでただけでは……⁇)
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