298 / 1,038
298
しおりを挟む
「まぁ、つまりは「やるな」ってこと。 万が一、それでも抜けるってお金用意してくるんだったら、どーぞどーぞって笑顔で送り出せるでしょ?」
「そういうもんか……?」
「だって、みんなで100G山分けだよ?」
「……ーー笑顔で送り出せるわ」
リアーヌの問いかけに、青年は神妙な面持ちで力強く頷いたのだった。
「ーーんでこの他に、お裁縫が得意な人たち作った団体で、ポプリ用の袋作ったり、ハンカチにグランツァの刺繍とかしても売れるかも?」
リアーヌは青年にそう話ながら、メモ用紙に説明を書き加えていく。
「ーーどっちも不得意だったらどうなる?」
「ポプリ作りか、材料のかき集めかなぁ?」
「かき集め……?」
「このおみやげ物作りって、グランツァがなきゃ始まらないんだから、それを取ってくる人が必要になるでしょ?」
「……と思う」
青年はリアーヌの問いかけに、首を傾げながら自信なさげに同意する。
「……多くの場合必要になるのよ。 花だったり葉っぱだったり実だったりの材料がね?」
「おう」
「それを集めて売るとかもできる」
「……それだけで売りもんにになんのか?」
「え? ああ、ゼクス様は買い取ってくれないよ」
「ならーー」
「売る相手は村のみんな」
その言葉を聞いていた周りの村人たちは、ざわりっと一際大きくざわめくと、小声で周りの人間と意見を交わし合う。
「ーー買ってもらえんのか……?」
青年はざわつく周りの村人たちをチラチラと気にしながらたずねる。
「んー……あんまり高くしたら買ってもらえないと思うけど……お金を出せば集めに行かなくていいって、結構良くない?」
「……でも自分で集めに行けばただだろ?」
「……毎朝早起きできるとは限らないし、雨の日とか外出るのやだなぁ……とか思うでしょ?」
「そりゃ、まぁ……」
なにかしらでそんなことを思った経験があるのか、青年は苦笑いを浮かべながら同意する。
「それを代わりにやってくれるんだから、対価をもらって当たり前。 でも、あんまりやりすぎると村の人たちとギクシャクしちゃうから気をつけて?」
「……どう気をつける?」
「んー……基本は自分たちで使い切れる分、って考えとけばいいと思う」
「自分たちで……」
「お菓子や裁縫じゃない人はポプリ作るでしょ?」
「ああ」
「自分たちで乾かしきれない量の花は取らない方が良い」
「なるほど……」
うむうむと、納得したように何度も頷く青年に、小さく微笑みをこぼしたリアーヌは、そのままメモ用紙に視線を落として、今言ったことをもう少し細かく説明した文を写しとっていった。
「そういうもんか……?」
「だって、みんなで100G山分けだよ?」
「……ーー笑顔で送り出せるわ」
リアーヌの問いかけに、青年は神妙な面持ちで力強く頷いたのだった。
「ーーんでこの他に、お裁縫が得意な人たち作った団体で、ポプリ用の袋作ったり、ハンカチにグランツァの刺繍とかしても売れるかも?」
リアーヌは青年にそう話ながら、メモ用紙に説明を書き加えていく。
「ーーどっちも不得意だったらどうなる?」
「ポプリ作りか、材料のかき集めかなぁ?」
「かき集め……?」
「このおみやげ物作りって、グランツァがなきゃ始まらないんだから、それを取ってくる人が必要になるでしょ?」
「……と思う」
青年はリアーヌの問いかけに、首を傾げながら自信なさげに同意する。
「……多くの場合必要になるのよ。 花だったり葉っぱだったり実だったりの材料がね?」
「おう」
「それを集めて売るとかもできる」
「……それだけで売りもんにになんのか?」
「え? ああ、ゼクス様は買い取ってくれないよ」
「ならーー」
「売る相手は村のみんな」
その言葉を聞いていた周りの村人たちは、ざわりっと一際大きくざわめくと、小声で周りの人間と意見を交わし合う。
「ーー買ってもらえんのか……?」
青年はざわつく周りの村人たちをチラチラと気にしながらたずねる。
「んー……あんまり高くしたら買ってもらえないと思うけど……お金を出せば集めに行かなくていいって、結構良くない?」
「……でも自分で集めに行けばただだろ?」
「……毎朝早起きできるとは限らないし、雨の日とか外出るのやだなぁ……とか思うでしょ?」
「そりゃ、まぁ……」
なにかしらでそんなことを思った経験があるのか、青年は苦笑いを浮かべながら同意する。
「それを代わりにやってくれるんだから、対価をもらって当たり前。 でも、あんまりやりすぎると村の人たちとギクシャクしちゃうから気をつけて?」
「……どう気をつける?」
「んー……基本は自分たちで使い切れる分、って考えとけばいいと思う」
「自分たちで……」
「お菓子や裁縫じゃない人はポプリ作るでしょ?」
「ああ」
「自分たちで乾かしきれない量の花は取らない方が良い」
「なるほど……」
うむうむと、納得したように何度も頷く青年に、小さく微笑みをこぼしたリアーヌは、そのままメモ用紙に視線を落として、今言ったことをもう少し細かく説明した文を写しとっていった。
0
お気に入りに追加
345
あなたにおすすめの小説
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
婚約者様にお子様ができてから、私は……
希猫 ゆうみ
恋愛
アスガルド王国の姫君のダンス教師である私には婚約者がいる。
王室騎士団に所属する伯爵令息ヴィクターだ。しかしある日、突然、ヴィクターは子持ちになった。
神官と女奴隷の間に生まれた〝罪の子〟である私が姫君の教師に抜擢されたのは奇跡であり、貴族に求婚されたのはあり得ない程の幸運だった。
だから、我儘は言えない……
結婚し、養母となることを受け入れるべき……
自分にそう言い聞かせた時、代わりに怒ってくれる人がいた。
姫君の語学教師である伯爵令嬢スカーレイだった。
「勝手です。この子の、女としての幸せはどうなるのです?」
〝罪の子〟の象徴である深紅の瞳。
〝罪の子〟を片時も忘れさせない〝ルビー〟という名前。
冷遇される私をスカーレイは〝スノウ〟と呼び、いつも庇護してくれた。
私は子持ちの婚約者と結婚し、ダンス教師スノウの人生を生きる。
スカーレイの傍で生きていく人生ならば〝スノウ〟は幸せだった。
併し、これが恐ろしい復讐劇の始まりだった。
そしてアスガルド王国を勝利へと導いた国軍から若き中尉ジェイドが送り込まれる。
ジェイドが〝スノウ〟と出会ったその時、全ての歯車が狂い始め───……
(※R15の残酷描写を含む回には話数の後に「※」を付けます。タグにも適用しました。苦手な方は自衛の程よろしくお願いいたします)
(※『王女様、それは酷すぎませんか?』関連作ですが、時系列と国が異なる為それぞれ単品としてお読み頂けます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる