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「そうなってもおかしくなかったって話ですよ! 税金五割な上に色々あってーーこの人たちが受けたことは国が動く災害レベルだと思います。 ーーうちの弟だったら間違いなく餓死してましたよ……! ひもじいは敵なんですっ‼︎」

 手を握り締め力説するリアーヌに、弟ザームの食べっぷりを思い出したゼクスは(あの子だったら危なかったのかもな……?)と、リアーヌの言い分を少しだけ理解してしまったのだった。

「ーーでも全カットは……ーーだってこの人たち二割弱は払うって自分達で言ったんだよ? だったらそのぐらい貰ったって……」
「むしろ見舞金を包むレベルだと思いますけど?」
「それを出すのは国であって俺じゃないかなー?」
「……確かに?」
「……ーー税金なしにこの村を運営して行くのは不可能だと思うけど?」

 ゼクスは真面目な顔を作り、少し突き放すような言い方でリアーヌに語りかける。
 ここでリアーヌに嫌われたとしてもこの暴走を止められるのであれば構わないと考えていた。
 家のために有益となると思ったからこそ結婚を望んだーーその相手が家の金を食い潰そうというのであれば、多少心苦しくともそれなりの対応をするつもりだった。

「運営……」

 ゼクスの言葉にリアーヌの顔が曇る。
 貴族が運営村の行く末を想像してしまったからなのかもしれない。

「道路の金のことはいったん置いておくにしてもーー代官を雇う給料、土砂崩れなんかの自然災害に備える金ーーもちろん俺が納得するだけの報酬も全く無いわけで……正直に言うけど、俺には慈善事業をするつもりなんてこれっぽっちも無いからね? 旨味が無いなら手を引くーーこれは決定事項だよ」

 ゼクスの冷たい視線に晒されながら、リアーヌはヴァルムに叱られている時のような、むずむずとした居心地の悪さを感じていた。
 ーーこれは間違いなくゼクスからの叱咤であったので、リアーヌの感覚は正しかったのかもしれないが。

「……手を引くのはダメです」

 ゼクスの反応を見ながら、モゴモゴと口の中で言葉を転がすように答えるリアーヌ。

 そんなリアーヌの言葉にいち早く反応したのはゼクスでアンナでもなく、少し離れたところに座っていたディーターだった。

「ーーこちらとしてはそれでも構いませんが?」

 その言葉でディーターが貴族の存在を全く必要としていない事実に気がついたリアーヌは、うわぁ……と顔をしかめ、ゼクスは顔を歪ませて鼻を鳴らしながら攻撃的な笑顔を浮かべた。

 そんな二人の態度に、馬鹿にされたと感じたディーターは初めてその声に感情を乗せて答えた。

「私たちは本気だっ!」

 本気であるからこそタチが悪い……ーーリアーヌはそう思いながら、もう一度顔をしかめるのだったーー
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