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 ゼクスは照れ臭そうに笑い合っている二人の姿が、なぜだかとても面白くなくて、ムッとしながら口を開く。

「ーーいいじゃん。 リアーヌのおかげだって言ってるんだから、きっちりお礼の品はもらっておこうよー……あ、あっちの棚の中の真珠なんてどう?」

 そうリアーヌに話しかけ始めたゼクスは、テオが座るソファーの後ろにある大きく重厚な棚を指差した。
 これまでの取引から、その棚にはそれなりの大きさの金庫が備え付けられていて、テオが貴重な真珠をしまっていると知っていたためだ。

「おい」

 テオとて、子爵家のご令嬢に相応しい真珠を送るつもりではいたのだが、ゼクスが主体となって、貴重な真珠を巻き上げられるとなれば、抗議の声をあげざるをえなかった。

「おやっさん、おとこ見せろってー」

 揶揄うようにニヤニヤと笑いながらゼクスが言い、テオはそんなゼクスに盛大に鼻を鳴らすのだった。

(ーーどうしよう。 正直、真珠になんの興味もないんですけどー……ーー普通の真珠より、さっき買ったドロップ型とかハート型のほうが付けたいし……ーーあのビンなんだろう……?)

 リアーヌが見つけたのは何かが詰められた茶色い薬瓶のようなものだった。
 それは棚のそばに置かれたテーブルの上に雑然と置かれていて、その下の木箱の中にも似たようなビンが詰められているようだった。

(ーー見た目からして薬……? でもあの量明らかに売り物で……ここは真珠の店で……ーーならあれも真珠⁇ ーーえっ、真珠って食べられるの⁉︎ ……どんな味なんだろ……ちょっと食べてみたいな……)

 興味津々の顔つきでジッとビンを見つめ続けるリアーヌの横顔に、ゼクスがやんわりと言葉をかける。

「……ちなみにあれは薬であって食べ物じゃないからね? まぁ、飲み薬だから口に入れられるんだけど……」

 その呆れたような、揶揄うような表情に神経を逆撫でされたリアーヌは、ツンッと唇を尖らせながらそっぽを向いて答える。

「……私、薬が欲しかったんですもん」
「ーーそっか?」
「そうですもん……」

(その生ぬるい疑い“分かってるけどね……”的な眼差しやめて! 真珠以外のものが欲しかったのは本当なんだからっ!)

「ーー確か美容にいいんでしたっけ?」

 リアーヌの反応にクスリと笑みを浮かべたゼクスは、テオに向かって確認するようにたずねた。
 意地を張ってそれを求めそうなリアーヌに、どんな薬なのか知らせるかのように。

「ああ。 俺にはよく分からねぇが「飲んだ次の日は弾力が違う!」……らしいぜ?」

 二人の会話に、リアーヌの瞳がキラリと光る。
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