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「となると……これはある程度の落ち着いた色合いを好む世代向けーーということになるのか……」

 ゼクスはそう呟きながら、頭の中でどういった売り方を展開すべきか頭の中でプランを組み立てていく。

 そんなゼクスを不思議そうに首を傾げながらもリアーヌは一人考えを巡らせる。

(……ご年配向けな気もするっちゃするけど……ーー黒真珠が最も適してるのって喪服じゃない……?)

「ーーなにか考えがあるなら聞かせて?」

 その考えを言うべきか黙るべきか迷い、チラチラとゼクスに視線を投げかけていたリアーヌ。
 そんな姿にに気がついたゼクスは、優しい笑顔を浮かべながら、リアーヌが自由に意見を言えるように促した。
 ーー心の中でガッツポーズを取りながら。

「ーー喪服とかも良いのかな? って……」

 リアーヌはそう口にしながら(そんなん当然思ってたし! とか思われたらどうしよう……)と不安に襲われ、その言葉尻がどんどんと小さくなっていった。

「喪服……」
「確かに黒いが……」

 リアーヌの言葉にゼクスとテオは、表情を渋くすると、顔を見合わせて緩く肩をすくめ合う。

 この国の考え方では、誰も亡くなっていないうちから葬儀の準備を行うことは縁起が悪いからと、ほとんどの者が忌避感を持つ行為だった。
 そして喪服の場合は過度な装飾品をつけないことも常識だっのだ。

「ーーダメ、ですかね?」
「ダメというか、縁起が悪いというか……喪服用に似合うアクセサリーなんて店に置いたら他の客まで逃げちまうぞ……⁇」
「なんで⁉︎」

 テオの言葉にリアーヌは漫才のようにツッコミを入れる。

「ーーリアーヌは売れると思ったんだね?」
「売れるというか、喪服でアクセサリーつけようと思ったら黒真珠がオニキスかぐらいでは……?」

 ゼクスに真剣な顔で確認され、ドギマギしながら答えつつ、首をかしげるリアーヌ。
 
 前世の記憶やゲームの知識に邪魔をされ、この世界の常識をなかなか理解できていないリアーヌだったが、この世界の喪服に白い真珠が使われない、ということぐらいは知っていた。
 この世界の葬儀では、その列席者たちは黒以外の色を身に纏わないのが常識だ。
 そしてあまりにも華美な装飾品を付けることも。

 それは面子を重んじる貴族たちも例外ではなくーー皆が皆、どこか不満に思いながらも「そういうものだから……」と深く考えずに現状を受け入れている現状を、ゼクスはきちんと理解していた。
 ーーだからこそ、予言めいてすらいると感じたリアーヌの意見に、全面的に乗る覚悟を素早く固めたのだった。
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