成り上がり令嬢暴走日記！

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「ご両親のことでしてよ……」
「ーーあ、ラッフィナート商会とのこと？」
「そうーー確か“特別アドバイザー”とやらに就任したんでしたっけ？」
「あー……うん、そう……」

　リアーヌは少々気まずそうに答えた。
　ーーこのリアーヌの反応には理由があった。
　ビアンカの出した“特別アドバイザー”という役職を作り出したのがリアーヌなのだ。

　通常、貴族が商家などと共同で事業を起こす場合は、その貴族がその商家の“後見”についたとみなされる。
　この後見とは、貴族絡みのトラブルなどから店を守ってやる代わりに毎月まとまった金を貰うーーというものなのだが……
　今回の場合、ボスハウトがラッフィナートの後見についてしまうと、ラッフィナート商会が抱える貴族とのトラブルをボスハウト家が請け負うとみなされてしまう危険性が大いにあったのだ。
　両家にとってそれは本意ではなく、頭を悩ませていた父サージュはリアーヌに「なにかいい肩書きはないだろうか？」とたずね、この役職を引き出していた。
　そしてその時にリアーヌがした説明ーー「貴族とは後ろ盾とかは関係なくて、アドバイスをするだけの人ってことだよ」という言葉に、大人たちは「それだ！」と大いに喜んで見せたのだったがーー

　リアーヌとしては、自分が作り出したわけではない役職をそこまで自分の手柄のように誉めそやされると、やはり居心地の悪さを感じてしまいーーその時の感情をリアーヌは思い返していたのだった。

「名前も知らないような工房と契約しては次々と流行を作り出していると噂の的よ？」
「あー……らしいよねー⁇」

（それに関してはラッフィナート家の人たちも凄いんだよなぁ。　私たちは家族だし、昔からそういう者だって理解してるから、父さんが「やめた方がいいな」って言えば（あーダメなのかー）ってなるし、母さんが「こっちの方がお得ね」って言えば（へぇーそうなんだー）って納得するんだけど、あんな大きなお店の代表やら大旦那様たちがすんなり受け入れて、お店の取引先改革にまで乗り出すとは思っても見なかったよねー……ゼクスは「ボスハウトを立て直した張本人たちだって知ってるからだよ」とか言ってたけど、だからってねぇ……？　限度があるんじゃないかと……ーーそう考えると、うちの大奥様ってやっぱりキモの座った人だったんだなぁ……元使用人を後継に指名して、家の采配丸投げして第二の人生謳歌中だもんなぁ……）

「加えて、今までの契約相手の見直しまで上手くやって随分ずいぶんと見綺麗になったっていうのは叙爵を受ける準備だーなんて話も聞くけれど……面白い噂よねぇ？」

　ビアンカは冗談めかしてたずねる。
　しかし、その目には真剣な色がありありと浮かんでいて、見る者が見れば、自分が有利となり得る情報を探っているのがすぐに分かったのだろう。