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「紹介、ですか?」

 ラッフィナート商会本店の応接室でリアーヌは今聞いたばかりの言葉を繰り返していた。

 プレゼントを渡すため、予定よりも早い時間にボスハウト邸を訪れていたゼクス。
 しかしにより、少々早めにボスハウト邸を出発することにしたのだった。

 その少し空いた時間、リアーヌをどうもてなそうかと考えていたゼクスだったが、下手にもてなすよりも予定を前倒しした方が有意義だと考え、リアーヌにギフト持ちの従業員からその能力をコピーしてもらうことに決めたようで、リアーヌを本店の応接室に案内し、事情を説明し終えたところだった。

「うん。 うちの従業員なんだけど、ギフトをコピーしさせてくれるって人がいてね?」
「ーー本心からですか……?」

 思わず疑わし気な視線をゼクスに送るリアーヌ。
 コピーする相手が“従業員”で、その相談を持ちかけたのが跡取り息子であるならば、そこには強制的な力が働いているのでは……と疑っているようだった。

「本心からだよ! ……そりゃ無条件でってわけじゃないけど、それでもこっちが提示した条件で、快く引き受けてくれた人たちだよ」

(たち……? え、複数いらっしゃる感じです⁇)

「ーーそもそも、本心からコピーすることを許可しないと出来ないんだろ?」
「……そうだとは思うんですけど……」

 少々歯切れ悪く答えるリアーヌ。
 家族やヴァルムの時はそうだったが、必ずしも“本心から”であるかどうかは自信が持てていなかった。

(本当は嫌々でも、心の中で『コピーしていいですよ』って唱えてたら、コピー出来ちゃう、とかいうシステムだったらどうすればいいのかと……)

「ーー問題が起こるような交渉はしてなから……」
「はぁ……」

 ゼクスの言葉に曖昧に頷きながら、リアーヌは(ぶっちゃけ私との婚約話の時も、問題“は”なに一つ怒らなかったんですよねぇー……)と、少し不満気に唇を窄めていた。
 そしてそんなリアーヌの態度から、リアーヌがなにに引っ掛かっているか、正しく理解したゼクスは、気まずそうに眉をかいて、テーブルに用意されていたお茶に手を伸ばした。



 しばらく待っていると応接室のドアがノックされた。
 ゼクスの許可の元、部屋に入って来たのは、二人組の男女だった。

「お待たせいたしました」

 二人並んで綺麗な仕草でお辞儀をして見せる男女。
 その光景を見てリアーヌの心はさわり……と波立ち、ゆっくりと背筋を伸ばした。

「忙しいところわざわざ悪かったね? リアーヌ嬢、こちらラフィナート商会のオットマー・バーレと、エルナ・ケプラーです」

 ゼクスもわざわざソファーから立ち上がり二人のそばに立っての紹介を始めたところでリアーヌは覚悟を決めなくてはいけないのだと悟っていたーー
 ゆっくりと唾を嚥下して、ニコリと口角を上げて見せる。
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