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 ヴァルムが、ゼクスが持ち込んだラッフィナート家への招待状リストとビアンカのパーティー出席リストを眺めながら、リアーヌの夏休暇の予定を次々と決めていく。
 羊皮紙に続々と書き込まれるその様子を眉をひそめて見つめる人物が一人ーー

(……え、待って? なぁにあの量……⁇ 私ってばそんなに出席しなきゃいけないんです……? ーー夏休暇って夏休みのことですよ? お休みなんですよー⁇)

 そんなリアーヌに、ようやく本日の授業を終えたザームが近付いて行く。
 ゼクスに軽く会釈をしつつニマニマと揶揄うような顔つきで歩いて行くその姿が、あらかたの事情を聞かされてここにやってきたことを物語っていた。

「……うわ。 あれ全部出んの?」

 ザームはヴァルムが書き込んでいる羊皮紙に目を丸くすると、ニヤニヤ笑いを引っ込め、気の毒そうに姉を見つめた。

「ーーそう、みたい……?」
「……がんば?」
「……何個か代わる?」
「無理だろ……?」
「ーーだよねー……」

 同行する相手がゼクスで、婚約者の同伴としての出席なのだ。
 行けなくなったので弟を代わりに出席させますーーなんてことは許されないだろう……ということくらいはリアーヌたちにも理解できた。

「……なんか俺も狩りに行くこと決まった」

 想像以上に予定を組み込まれ、予想以上にゲンナリしている姉を気づかうようにザームは言った。
 それは『俺も頑張るから姉ちゃんも頑張れよ』という、ザームなりの励ましだった。

「狩り?」
「ん。 同い年の奴らと狩り行って友達作るんだと」

 ザームの言葉にリアーヌはハッと大きく目を見開いた。
 そしてゴクリと唾を飲み込むと、ゆっくりと口を開いた。

「ーー超頑張れ?」
「おう。 ーーイノシシ捕まえてきてやる。 そしたら肉パーティーだからな?」

 そう言ってニッといたずらっぽく笑うザーム。
 彼の中での姉はーー自分が未だにそうであるようにーー山盛りの肉が食卓に並べは、その瞳を輝かせて幸せそうに笑っている少女のままだった。
 ゲンナリしている姉が少しでも元気になれば……と、思いやりの心からそう伝えていた。

 ーーその優しさ溢れる発言にボスハウト家の使用人たちは、ギョッと目を剥くことになったのだが……
 
「絶対大物捕まえてきてやるから、姉ちゃんも美味い菓子持って帰ってこいよ?」
「……え? あれって持ち帰りOKなの……⁇」

(なんとなく「お育ちがお悪いことっ!」とかイヤミ言われそうな気が……?)

「バレなきゃ問題ねーだろ。 ハンカチにくるんでコッソリ持って帰ってこいよ」

(そうか。 バレなければ問題は起きないな……?)

「ーー私に出来るかな?」
「サッと持ってサッと隠すだけだろ。 ーーどこの菓子が一番美味かったか決めようぜ」
「ーーそれはちょっとやってみたい……!」

 ニヤリと笑って提案してくる弟に、同じように人の悪い笑顔を浮かべて同調する姉。
 その笑い方は瓜二つで、二人の間に濃い血のつながりを感じさせた。
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