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「ーーいいこと? 来年の教養学科の入学試験に個人面談が組み込まれたのは貴女のせいですからね?」
「いきなりなんの話⁉︎」

(さっきの会話のどこに、そんな話に繋がる要素があったの⁉︎)

 リアーヌの疑問ももっともだったが、ビアンカにとっては、今の会話の意味すら理解できない者と机を並べているという事実が苛立ちの対象でしかなく、その原因に一言言ってやりたいと言う欲を抑えきれなくなったのだ。

「貴女は察しが悪い、と言う話よ。
まさか試験官の皆様だって、カーテンに隠れて試験をやり過ごすーーなんて奇行に走る子爵令嬢が存在するとは想像すらしなかったんでしょ」
「ーーリアーヌそんなことしたの⁉︎」

 ビアンカの突然の暴露に慌てるリアーヌと、目を見開いて驚いているゼクス。

「さ、流石に中には隠れませんでしたよ⁉︎ ただほら、学園のカーテンって分厚くってとっても長いから、纏めてあるだけで随分なボリュームになるわけで……ーーその影にコッソリ……?」

 自分を見つめているゼクスの視線から逃れるように視線をうろつかせながら、リアーヌは言い訳するように答えた。

「いや、それにしたってじゃない……?」

 髪をかき上げるような動作で頭を抑えたゼクスが、乾いた笑いを浮かべながら言った。

 ゼクスとしてはなぜそんな奇行に走ったのか? というよりも、どうしてそれで合格してしまったのか⁇ ということのほうが気になっていた。

「それに加えて、採点方法を減点式から加点式に戻すべきでは? なんて意見まで出てるのよ?」
「ーーあー……そりゃ見つけられなかったら減点のしようがないのか……」

 ビアンカの言葉で、リアーヌ合格のカラクリが解けた気分だった。

「ーー見つけた試験官だってどうやって減点すべきかまよったとおもいますわ。 試験項目は多岐にわたっておりますけれど『カーテンに隠れてやり過ごさないこと』だなんて項目は無いでしょうし……」
「ーー積極性に欠ける……とかでしょうかね?」
「……そうなりますと、まるで少々引っ込み思案な性格のご令嬢のようですわね……?」
「……だからこその合格だったのでは……⁇」
「ーー合点が行きますわ」

 ビアンカとゼクスのやりとりに、居た堪れなくなったリアーヌはしょんぼりと肩を落としながらボソボソと言った。

「わざとじゃ無いんです……どうしても合格したくって……」
「気持ちは分からなくは無いけどさぁ……」

 そんなリアーヌに呆れたように肩をすくめるゼクス。

 微妙なラインの貴族階級にある者たちにとって、教養学科になるか一般学科になるかーーその差は天と地ほどの違いがある。
 貴族は教養学科に通うものーー貴族階級にあるにも関わらず、一般学科に通っている者たちはその出生か資質に問題を抱えた“落ちこぼれ”
 そんな暗黙の了解があるのは、紛れもない事実だった。
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