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 そんなゼクスの態度にギリッ奥歯を噛み締めたビアンカは再び身体ごとリアーヌに向き直った。

「ーーリアーヌ、私たち親友だったわね?」
「え? あの……そう、ですね⁇」

(たった数秒の間に謎のランクアップ⁉︎)

「私が幸せな結婚生活を送れるよう力を貸してくれる?」
「まかせて!」

 リアーヌはゼクスが静止の言葉をかける間も無く満面の笑みで即答していた。
 その答えを聞き勝ち誇ったような笑みをゼクスに向けるビアンカ。
 はぁ……と軽いため息をついたゼクスは軽く頭を振りながら肩をすくめていたが、きょとんとした顔をしたリアーヌと目が合うと、困ったように微笑んでからゆっくりと口を開いた。

「分りましたよ。 できうる限り配慮させていただきますぅー……あくまでビアンカ嬢ね?」
「ーーよろしいんではなくて? あちらだって、そこまで欲深いことはおっしゃらないでしょ」
「おっしゃられたって、どうもしないけどねー」

 そう言いながら両手を振り上げて大きく伸びをするゼクス。
 その振り上げられた手につられるように上を、空を見上げると雲ひとつない美しい青空が広がっていて、リアーヌは少しだけ得した気持ちになった。

「むしろありがたいくらいね」

 同じように空を見上げたビアンカが、ホッと息をきながら言った。
 その言葉を聞いて、リアーヌはようやくゼクスの返答があまり優しくないものだったこのに気がついた。

「……本当にいいの?」

 真上にある木の葉たちが陽の光を和らげてくれている。
 そのまま木漏れ日越しに青空を見上げたまま、少しだけ首を傾げてたずねるリアーヌ。
 ふふっとビアンカが笑う気配をすぐそばで感じた。
 ビアンカも自分のほうに首を傾げているのだと理解したリアーヌは、それが嬉しくも恥ずかしく、くすぐったいのを我慢する子供のように笑いながら首をすくめた。

「いいのよ。 ーーむしろありがたいわ。 わたしの価値が上がるってことだもの」
「ーー……へぇー?」

 ビアンカの言っている意味がよく理解できなかったリアーヌが再び曖昧な返事でその場をやり過ごそうとすると、目の前でそのやりとりを見ていたゼクスが、ブッハッと盛大に吹き出して「リアーヌ全然分かってないじゃん……」と、笑い混じりに暴露した。

 もっとも暴露されたと思っているのはリアーヌだけで、ビアンカもリアーヌがたいして理解していないことぐらい、ちゃんと分かっていたのだがーー

 ビアンカは姿勢を正すと、軽くため息を吐きながらリアーヌに向きなおる。
 ビアンカのため息にいち早く反応したリアーヌはそれにならうようにさっさと姿勢を元に戻した。
 ーーそんな2人のやりとりを見ていたゼクスは、クスクスと忍び笑いをもらしながらも、それを押さえつけようと自分で自分の口元を押さえつけるのだったーー
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