上 下
136 / 1,038

136

しおりを挟む
「ーーそれはいけないね?」

 そう言ったフィリップにラルフが小さく頷く。
 それを受けラルフも小さく頷き返すと、急に畏まった仕草でゼクスに向き直った。
 そしてにこやかな笑顔で話しかける。

「ラッフィナート男爵との会話が楽しすぎて本題を聞きそびれてしまいました……遅くなって申し訳ありませんがーー本日はどう言ったご用件だったのでしょうか?」

 その言葉に、ゼクスは心の中で(なにが聞きそびれただ! こっちの足元見てここぞとばかりにいびり倒しやがってっ!)と毒づいていたが、ぐっと腹に力をこめて笑顔を貼り付けて見せた。
 
「今回、良縁に恵まれたということとーーケジメをつけるべきと判断致しましたので、このような席を願い出させていただきました」

(ーーあ、やっぱりケジメをつけるんだ……? んで、この場合、その相手は氷の人……⁇)

「ーーけじめ、ですか?」
「はい。 ーーラルフ・ベルグング様。 報告が遅れてしまいましたが、こちらに控えます我が婚約者リアーヌ・ボスハウトが、故意でないとはいえベルグング様のギフトをコピーしてしまいました」

(……ーーあっ⁉︎ ケジメつけなきゃいけないの私なんですね⁉︎ そっかそうだよね⁉︎ もうすでにコピーしちゃってるもんね⁉︎)

 ゼクスの言葉にようやく今回のお茶会の趣旨を理解するリアーヌ。

「ーーギフトを、コピーですか……」

 ラルフはそう言いながら、チラリとフィリップに視線を走らせる。
 その反応でゼクスは、ラルフがすでににギフトをコピーされている自覚があること、そしてフィリップがすでにリアーヌが他人のギフトをコピー出来るという事実を知っていることを確信した。

(ありえるとは思ってたけど……実際知ってるとなると厄介この上ないな……)

 そんな本心をひた隠して、ゼクスはさらには言葉を重ねる。

「聞いた話では、茶会でのお遊びの一つとしてギフトを披露し合いーーその中で戯れにギフトのコピーに挑戦したとか?」

 そこまで言って、確認するようにパトリックに視線を送るゼクス。
 見つめられたパトリックは軽く肩をすくめながら口を開く。

「ーーそうですね。 確かに先日のお茶会ではそのような余興を楽しんだ記憶があります」

 その言葉にパトリックの隣に座っていたイザークが言いにくそうに視線を落としながら口を開いた。

「……ですがあの時は確かーー出来ないと仰っていたような……?」

 その言葉にフィリップたちの視線がリアーヌに集中し、ビクリと大きくその肩が揺れる。

(ーーあれ? これは……私があの時コピー出来てたのに黙っていたーーと疑われているパターンのヤツですか……?)
 
その時、四人の視線からリアーヌを守るようにゼクスが身体を移動させながらリアーヌを振り返るように見つめる。
 そしてニコニコと笑いながら話しかけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と噂されているので、全力で逃げることにしました!〜できれば静かに暮らしたい〜

矢野りと
恋愛
『ほら、ご覧なさって。あそこにいるのが噂の公爵令嬢ですわよ』 『噂通りのかたで、悪役令嬢という感じですわね』 公爵令嬢であるハナミア・マーズのほうを見ながら、楽しそうに囀っている令嬢達。  悪役令嬢??どうして私が…… ハナミアは幼い頃から病弱で、静養のためにずっと領地で過ごしていた。つまり公爵家の駒として役に立たないから、両親から放置されていたのだ。 ――あっ、でもグレたりはしていませんよ。自分でも言うのもなんですが、田舎で真っ直ぐに育ちましたから。 病弱ゆえに社交界に出るのも今回が初めて。だから悪役令嬢になる機会もなかったはずなのに、なぜか悪役になっているハナミア。 立派な両親と優秀な弟妹達はハナミアを庇うことはない。 家族のこういう態度には慣れているので、全然平気である。 ただ平凡で、病弱で、時々吐血することがあるハナミアには、悪役令嬢は少しだけ荷が重い。 ――なんか天に召される気がするわ…… なのでこっそりと逃げようと思います! これは自称平凡な公爵令嬢が自分の身の丈(病弱?)に合わせて、生きようと奮闘するお話です。 もちろん周囲はそんな彼女を放ってはおきません。なぜなら平凡は自称ですから…。 ⚠ヒーローは優しいだけじゃありません、一癖も二癖もあります。 ⚠主人公は病弱を通り越し死にかけることもありますが、本人は明るく元気ですのでご安心?を。 ※設定はゆるいです。

前世腐女子、今世でイケメン攻略対象者二人から溺愛されるなんて聞いてません!

湊未来
恋愛
『ここは、いったい何処の世界ですのぉぉぉ!!』 リンベル伯爵家の一人娘アイシャには、生まれた時から前世の記憶がある。社畜だった前世、腐女子として楽しい人生を謳歌していたアイシャは、朝目覚めたら、中世ヨーロッパ風の世界へと転生していた。 アラサー腐女子が赤ちゃんに転生!? お世話という名の羞恥地獄を耐え、七歳を迎えたアイシャだったが、未だにこの世界が、何処なのか分からない。ゲームの世界なのか、本の世界なのか、はたまた、アイシャの知らない異世界なのか…… 『だったら、好きに生きたっていいわよね!』 今世も腐女子として、趣味に生きようと決意したアイシャへ次々と襲いかかる恋の罠。そして、ある事件をきっかけに目覚める『白き魔女』としての力。しかし、そんなアイシャの前に立ちはだかる『もう一人の白き魔女』の存在。 果たしてアイシャは、今世でも腐女子として己の趣味を満喫できるのか? そして、アイシャの転生した世界と白き魔女の秘密とは? アラサー腐女子が転生し、知らない異世界で自分の趣味を満喫していたら、いつの間にか幼なじみに外堀り埋められて逃げられなくなっていた話。 腐女子として趣味に生きたい令嬢アイシャ×ダブルヒーローでお届けするラブコメディ。 はじまり、はじまり〜♪ ※恋愛コメディ時々シリアスになる予定です。 ※男同士の絡みは雰囲気程度です。 ※こちらの作品は二年前に投稿した『転生アラサー腐女子はモブですから!?』の大幅改稿版になります。7万字の追加修正をしておりますが、話の流れの変更はありません。 ※湊未来作成、AI画像使用

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

お兄様が攻略対象者で妹のモブ令嬢のはずですが、攻略対象者が近づいてきて溺愛がとまりません。

MAYY
恋愛
転生先が大好きだったゲームの世界だと喜んだが、ヒロインでも悪役令嬢でもなく…………モブだった。攻略対象のお兄様を近くで拝めるだけで幸せ!!と浸っていたのに攻略対象者が近づいてきます!! あなた達にはヒロインがいるでしょう!? 私は生でイベントが見たいんです!! 何故近寄ってくるんですか!! 平凡に過ごしたいモブ令嬢の話です。 ゆるふわ設定です。 途中出てくるラブラブな話は、文章力が乏しいですが『R18指定』で書いていきたいと思いますので温かく見守っていただけると嬉しいです。 第一章 ヒロイン編は80話で完結です。 第二章 ダルニア編は現在執筆中です。 上記のラブラブ話も織り混ぜながらゆっくりアップしていきます。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

絶世の美女がょぅι゛ょになりました。(旧題:月読の小姫)

舘野寧依
恋愛
愛すべき美姫が三歳になっちゃった!? それでも持ち前の才能(?)で周囲の人々を魅了します。 『月読の塔の姫君』第一章読了推奨です。

【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました

Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに! かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、 男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。 痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。 そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。 「見つけた! 僕の花嫁!」 「僕の運命の人はあなただ!」 ──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。 こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。 すっかりアイリーンの生活は一変する。 しかし、運命は複雑。 ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。 ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。 そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手…… 本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を─── ※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)

処理中です...