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「そうよねぇ……? お嫁に行ったのに実家ばかり優先も、ねぇ……?」
「実家ばかりか……」
「ーーきっちり半分に分けてもらう?」
「……リアーヌの仕事量をか?」

 あまりに現実的ではないリエンヌの提案に、サージュは困ったように顔を顰めた。

「……やっぱり無理よね?」

 リエンヌも現実的ではないことは分かっているのか、ため息と共に肩をすくめて見せた。
 そんなリエンヌを慰めるようにその背中や腕を撫でるサージュ。
 そして念の為にとギフトを発動させる。
 その瞬間ゾワリ……と背中の産毛が逆立つような不快感に襲われた。

(やっぱりダメか……逆にうちの割合を四割に下げると……)

 そう考えたと同時に、今度はゾクゾクという寒気が背中を這い回った。

(やっぱりダメか……)

「ーーこりゃ根本的にちげぇな……」

 長年の感覚から、選択すべきはリアーヌの仕事量ではないと判断したサージュは(なら……一体、なにを選ぶんだよ……?)と少しの苛立ちとともに眉間に皺を寄せながら、自身のギフトと向き合う。

「ーーあー……」

 側から見ると、不機嫌そうに黙りこくってしまった子爵の態度に、ゼクスは気まずそうに首の後ろあたりをかきながら、かけるべき言葉を探した。

「例えば、この仕事はどうしてもリアーヌ嬢でなければ……という仕事で予定を組んでいって、その全てを受け入れてもらえるのであれば、それ以外の時間でどんな仕事を手伝おうと俺に異論はありませんーーもちろん家族からの文句も言わせません」
「全て受け入れる……?」

 ゼクスの言葉に多少の引っ掛かりを覚えたサージュがそう呟くと、その言葉を聞いて、肩をすくめたゼクスが答えるために再び口を開く。

「俺の一番の目的はリアーヌ嬢のギフトです。 そのためにここまでしているんだから、妥協はあまりしたくありません。 もちろんそれ相応の報酬も支払いますし、リアーヌ嬢が嫌がることを無理矢理させるつもりもありません。 ーー義理の両親となられるお二人の頼みをわざと断るだなんてこともするつもりはありません。 ーーただし決定権を渡すつもりもないんです」
「ーーまぁ、そうだろうな?」

 婚約を打診されている娘の父親として“一番の目的はギフトだ”と言い切る目の前の男を不快に思わないわけでも無かったが、それとば別に、ゼクスの提案を最初に聞いた時から、サージュの心はポカポカと暖まり始めていた。
 ーーつまり、ゼクスのこの提案にはボスハウト家の、ひいてはリアーヌに幸運が訪れることを意味していた。

「ーーその条件ならば……問題はないように思う」

 少々歯切れ悪く、家族に向かって話すサージュ。
 ここに来てようやく理解したのだ。
 これがなんのための話し合いなのか? ということをーー
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