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「……どうすればいい? 言わないのはやっぱりダメなのかな?」

 リアーヌの不安そうな声に、ビアンカは神妙な顔つきになると、ゴクリと唾を飲み込んでから口を開いた。

「ラフィナート殿がどんな考えなのか、はっきりするまで黙っているのがいいと考えているわーーただ、貴女すでにラッフィナート商会と契約書を交わしてしまっているでしょう……?」

 ビアンカは部屋の外の気配に最大限、気を使いながら話し始める。
 ーーこれから口にすることは、おそらくラッフィナート家に取っての不利益となると、自覚しているためだった。

「うん……」
「ーーだったら故意に黙っているのは……まぁ、あまりよろしく無いわね」

 ラッフィナート商会にとって、自分たちにスジを通さない子爵家の一つ程度、圧をかけるのも、潰すのは容易いことだろう。

 しかし、ゼクスがリアーヌとの契約を急いだ事実をビアンカは知っていた。
 つまりゼクスがリアーヌの能力についてを知っていて、それを欲しがった可能性も十分に考えられた。
 ーー危険な賭けになってはしまうが、ゼクスがリアーヌの能力に執着すればするほど、これからのリアーヌの対応に多少の不愉快を覚えたとしても、実家に圧をかけるような行為をーーましてや潰すようなことまではしないだろう……ビアンカはそう予測を立てていた。

「まだ数回しか話したことはないけれど、あの方がそこまで目先の利益に囚われるとは思えないーーまぁ、全くの見当違いかもしれないけれど……ーーこれだけの問題だもの、ご家族と相談してから報告となってしまっても仕方がないと思うわ」

 最後にビアンカはリアーヌに向かって、それらしい言い訳の言葉を教えたのだが「そだよね!」とコクコク頷いているリアーヌがその事実に気がついた様子は無かった。

「ーーいいこと? 今日家に帰ったら、絶対にご家族と執事に相談するんですのよ⁇」
「はい!」
「……その時、ラッフィナート家にどう言い訳するのかも、きちんと話し合っておきなさいね」
「……言い訳かぁ……黙っててごめんなさい! じゃダメかな?」

 基本的に、貴族的な堅苦しい挨拶や手順などを苦手としているリアーヌは、グッと眉間に皺を寄せながらたずねる。

「……あの方の機嫌を著しく損なうと、貴女の能力が学園中にリークされて、殆どのギフト持ちを敵に回すーーなんて事態になる可能性もあるけれど?」
「いやーーえ……ーーそっか……そうかも⁉︎」

 リアーヌは咄嗟に「流石にそれは……だってあの人攻略対象だしーー」と言いかけて、なんとか声に出すことを堪えたが、バッドエンドや他ルートの時のゼクスの評価が決して“善良な商人”とは言い難かったことを思い出し、サァ……と顔を青ざめさせた。

(そうだよ! あの人根っからの商人だから、自分や家の利益になるなら知り合いだって騙すし、武器商人みたいなことだってやってのけるんだった……‼︎ ヤバイ……全力で誤魔化さないと……)

「……どうしよう。 バレる予感しかしない」
「そうね。 私もバレるんだろうな、とは思っているわ」

 顔色を悪くしているリアーヌに肩をすくめながら答えるビアンカ。
 心の中では(だから頃の賭けなのよ)と付け加えながら。
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