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5章
村祭りⅰ
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ロビンとノアが魔法の国に来て数週間が経った頃、村のお祭りが始まった。
グリーン国の村祭りは古くからの伝統があり、五日間にわたって行われる。ダンス、劇、勇士ゲーム、などが楽しめて、仮装する人も多い。
最後の日には、村人が集まって大合唱をするのが習わしだ。
国王はロビンとノアを連れてお忍びで村祭りに出かける事にした。
黒い布を深めにかぶり、農民の仮装をして木の荷車をゴロゴロ押して歩く姿は、とてもこの国の王様だと思えない。
荷車が重いので、ロビンとノアが後ろから押していた。
荷車には、大きな樽が積んである。お城のハーブを数種類付け込んたスパイスワインで、美容や健康にも効果がある。
毎年、樽は広場のあずまやに置かれ、大人達はスパイスワインを自由に楽しむ事が出来た。
石畳の道の両脇には、食べ物の屋台が並んでいる。
おばさんが、大きなパン生地を広げ、あっという間に丸め、天板に並べて、釜の中へ。
その見事な手つきに目を奪われて、ロビンはおもわず立ち止まる。
大きなフライパンでジャガイモを炒める音、そして、肉が焼ける美味しいそうな匂いーーー
「美味そう!」ノアも立ち止まった。
火の上で、串刺しの肉がグルグル回っている。その隣では、おじいさんが、大きな肉の塊に塩とハーブをかけ、次々と鉄の串に刺していた。
王も立ち止まり「肉汁をパンに吸わせて食うとうまいぞ」と教えてくれる。
太ったおばさんが、がいこつの操り人形を乗せた荷車を押して通り過ぎた。王が彼女を笑顔で見送った。
「骨使いの、ロゼツタおばさんだ。わしは、子供の頃、これを見ると恐ろしくてなぁーー」
ロゼツタが微笑み返し、おじぎをして手をふった。変装していても、王様だと分かったらしい。
広場に着くと、ビッガーが、剣を下げて立っていた。ロビンは、その堂々とした巨体にかけよった。
「よかった。象から人間に戻れたんですね」
「ルビーが死んで、魔法は解けました。村の子供も、ルビーの誘惑がなくなって元気をとりもどしております」
「村も平和になったのですね」
ビッガーは、自信たっぷりにうなづいて
「ドラゴンの劇で、いつもの役をもらいましたよ」
「ドラゴンの劇?」
「もうすぐ始まります。おもしろいですよ」
ビガーは、仲間に呼ばれて「では、のちほど」と言いながら走り去った。
グリーン国の村祭りは古くからの伝統があり、五日間にわたって行われる。ダンス、劇、勇士ゲーム、などが楽しめて、仮装する人も多い。
最後の日には、村人が集まって大合唱をするのが習わしだ。
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黒い布を深めにかぶり、農民の仮装をして木の荷車をゴロゴロ押して歩く姿は、とてもこの国の王様だと思えない。
荷車が重いので、ロビンとノアが後ろから押していた。
荷車には、大きな樽が積んである。お城のハーブを数種類付け込んたスパイスワインで、美容や健康にも効果がある。
毎年、樽は広場のあずまやに置かれ、大人達はスパイスワインを自由に楽しむ事が出来た。
石畳の道の両脇には、食べ物の屋台が並んでいる。
おばさんが、大きなパン生地を広げ、あっという間に丸め、天板に並べて、釜の中へ。
その見事な手つきに目を奪われて、ロビンはおもわず立ち止まる。
大きなフライパンでジャガイモを炒める音、そして、肉が焼ける美味しいそうな匂いーーー
「美味そう!」ノアも立ち止まった。
火の上で、串刺しの肉がグルグル回っている。その隣では、おじいさんが、大きな肉の塊に塩とハーブをかけ、次々と鉄の串に刺していた。
王も立ち止まり「肉汁をパンに吸わせて食うとうまいぞ」と教えてくれる。
太ったおばさんが、がいこつの操り人形を乗せた荷車を押して通り過ぎた。王が彼女を笑顔で見送った。
「骨使いの、ロゼツタおばさんだ。わしは、子供の頃、これを見ると恐ろしくてなぁーー」
ロゼツタが微笑み返し、おじぎをして手をふった。変装していても、王様だと分かったらしい。
広場に着くと、ビッガーが、剣を下げて立っていた。ロビンは、その堂々とした巨体にかけよった。
「よかった。象から人間に戻れたんですね」
「ルビーが死んで、魔法は解けました。村の子供も、ルビーの誘惑がなくなって元気をとりもどしております」
「村も平和になったのですね」
ビッガーは、自信たっぷりにうなづいて
「ドラゴンの劇で、いつもの役をもらいましたよ」
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「もうすぐ始まります。おもしろいですよ」
ビガーは、仲間に呼ばれて「では、のちほど」と言いながら走り去った。
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