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4章

パイレーツハット

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 ロビンは、学校のホームルーム活動で意見を言ったりするのは、苦手だった。だから、目立たないようにしていた。けれど今日は黙っているわけにはいかない。国の危機ききをすくう大切な話し合いなのだ。

 会議室のテーブルを前にして、防衛ぼうえい大臣のダンダン、総理そうり大臣のミカエル、そして、村人から選ばれた数十名の議員が座っていた。
 
 ダンダンは、勇敢ゆうかん海賊かいぞく映画が大好きだ。海のつわものを気取ってドクロのついたパイレーツハット(※)をかぶっているが、年老いているので目も耳もかなりおとろえていた。

 総理大臣のミカエルが、声をはり上げた。
「王女ルビーは、城を明け渡せとおどしている。なにしろ、わが国は魔法の武器が作れない。戦っても勝ち目はないのだ。ダンダン、何かよい対策はないだろうか?」

「ん?よく聞こえん。もっと大きな声でしゃべってくれ」

ミカエルは、さらに声を張り上げた。
「ルビーに勝つ、良い方法はないか?」

ダンダンは、老眼鏡をかけると、
「しっかりと国防対策を強化いたします」と、目の前の書類をぼう読みした。

具体的には、何をどうするのだろう?ロビンには、ダンダンの言葉の意味がよくわからない。けれど、誰も質問する人はいなかった。

 ミカエルは「他に意見は?」と、一同を見回した。

 若い議員のジョンが、立ち上がった。
「戦わないで、降伏こうふくしましょう」と言う。

 ダンダンが、まゆを吊り上げ「ひきょう者!降伏こうふくすれば、王に仕える者は死刑。村人むらびとは、くさりつながれ死ぬまで働かされるのだぞ。戦うしかない」と言った。その声は、わざと大胆だいたんでえらそうにしているとしか思えなかった。

だが、ジョンは、ダンダンの気合におされて、しかたなくうなずいた。
「じゃぁ、がんばるしかありませんね……」

 みんなは、考え込んで静まり返った。ミカエルが「ロビン様、何か良い作戦はありませんか?」

ロビンは言葉にまった。王子らしく何か言わなくては。

「ゴールデン国には、防衛大臣がいるのでしょうか?」
自分でも無意味な質問だと思った。でも、あんなルビーに仲間がいるのだろうか。

「ルビーは独裁者どくさいしゃです。反対する者は全員追放したので、周りにはだれもいなくなりました。しかし、ルビーの魔力には、誰も太刀打たちうちーーー」

「キャー 助けて!」

 突然とつぜん、耳をつんざくような悲鳴ひめいが、ミカエルの言葉をさえぎった。窓から巨大なカマキリが見える。ロビンは、その姿を見て血がこおりついた。
 動物園で見たキリンより、でかいカマキリだ。かまを振り上げ複眼でこちらをにらんでいる。後ろ足で立ち、真ん中の足でアンジェラをかかえていた。アンジェラは、必死でもがいてバルコニーに手を伸ばすが届かない。


※パイレーツハット

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