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第2章
秘密の地下道(12P)
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「ひっひひ――― ゲホゲホ キイキイ―――」
へんな声が、さらにへんになっていく。
この声は?
ひょいと、椅子の下を覗くとジュンが飛び出してきた。
「やっぱり、お坊ちゃま!」
学習院の制服と制帽をつけている。
「ジャーン!猿飛佐助、参上!」
二本指を立て忍者を真似た。
「まぁ!どうしてここへ?」
私が目を見張ると
「忍の術でござる」と自慢そうに笑う。
綺麗な口元……又背が伸びたみたい。愛おしくてうれしくて顔がほころびる。
「鈴っ!僕、鈴がだーい好き」
ジュンはそう言って私にぴったり身体を寄せた。奇麗な瞳がキラキラしてなんだか眩しい。私もジュンが大好き!
「純一郎様ぁ―――おかしいな。どこにいらっしゃるんだ―――」
「目を離したのが悪いのだ。お坊ちゃまに、もしもの事があったらどうする!」
階下から使用人の声が聞こえた。
「お坊ちゃまを探しておいでですよ」
「ああ。わかっている。こっそり来ちゃった。
だって、お義母様が、鈴に甘えちゃいけない、会っては、いけないって」
「まぁ……お厳しいこと」
「いつも鈴と一緒にいたいなぁ…」
「純一郎様は、さらわれたんじゃないか―――」
「警察に知らせましょう」
使用人の声が、騒がしくなってきた。
「警察は、大げさだろ」とジュンが顔をしかめた。
「お坊ちゃまを、心配しているんですよ」
「もう、帰るよ。その前に、鈴に教えてあげよう」
ジュンは壁にしつらえたクローゼットを開けた。そして、クローゼットの床をグィと持ちあげると四角い穴が現れた。
「まぁ!こんな所に抜け道ですか?」
「秘密。誰も知らない通路さ」
「伯爵様もこの通路をご存知ないのですか?」
「ああ。ここは僕の亡くなったお母さんが生まれた屋敷なの。お母さんは僕だけに教えてくれた」
ニッコリ笑うとジュンは頭に通路の蓋を載せて梯子を下り初めた。あっと言う間にその姿は消え、床は元どおりになった。しばらく、茫然と固まってしまった。秘密の通路?
この通路は、何処に通じているのだろう。ジュンが消えた所をトンと蹴ると床がずれた。指を入れてグイと持ちあげる。開いた穴を覗くと梯子が見えた。
あら、おもしろそう!行ってみよう!
下へ続く梯子に足をかけた。梯子は急で下へ下へと続く。上からの光が薄れて暗くなる。何段も降りて着地したのは地下道らしい。闇の中を手探りで調べると道がある。行く先には、微かな光が漏れている。それを目当てにゆっくり進む。
かなり、歩いただろうか……道は登り気味になって、行き止まった。頭上の板を押し上げると、目の前には池が広がった。庭に出たらしい。なんと寂しい所だろう……樹齢何百年とも思える樹木が生い茂っている。細い小道を少し歩くと朱塗りの鳥居が立ち小さなお稲荷様の社があった。
カーカーカー
突然カラスが飛び立った。
へんな声が、さらにへんになっていく。
この声は?
ひょいと、椅子の下を覗くとジュンが飛び出してきた。
「やっぱり、お坊ちゃま!」
学習院の制服と制帽をつけている。
「ジャーン!猿飛佐助、参上!」
二本指を立て忍者を真似た。
「まぁ!どうしてここへ?」
私が目を見張ると
「忍の術でござる」と自慢そうに笑う。
綺麗な口元……又背が伸びたみたい。愛おしくてうれしくて顔がほころびる。
「鈴っ!僕、鈴がだーい好き」
ジュンはそう言って私にぴったり身体を寄せた。奇麗な瞳がキラキラしてなんだか眩しい。私もジュンが大好き!
「純一郎様ぁ―――おかしいな。どこにいらっしゃるんだ―――」
「目を離したのが悪いのだ。お坊ちゃまに、もしもの事があったらどうする!」
階下から使用人の声が聞こえた。
「お坊ちゃまを探しておいでですよ」
「ああ。わかっている。こっそり来ちゃった。
だって、お義母様が、鈴に甘えちゃいけない、会っては、いけないって」
「まぁ……お厳しいこと」
「いつも鈴と一緒にいたいなぁ…」
「純一郎様は、さらわれたんじゃないか―――」
「警察に知らせましょう」
使用人の声が、騒がしくなってきた。
「警察は、大げさだろ」とジュンが顔をしかめた。
「お坊ちゃまを、心配しているんですよ」
「もう、帰るよ。その前に、鈴に教えてあげよう」
ジュンは壁にしつらえたクローゼットを開けた。そして、クローゼットの床をグィと持ちあげると四角い穴が現れた。
「まぁ!こんな所に抜け道ですか?」
「秘密。誰も知らない通路さ」
「伯爵様もこの通路をご存知ないのですか?」
「ああ。ここは僕の亡くなったお母さんが生まれた屋敷なの。お母さんは僕だけに教えてくれた」
ニッコリ笑うとジュンは頭に通路の蓋を載せて梯子を下り初めた。あっと言う間にその姿は消え、床は元どおりになった。しばらく、茫然と固まってしまった。秘密の通路?
この通路は、何処に通じているのだろう。ジュンが消えた所をトンと蹴ると床がずれた。指を入れてグイと持ちあげる。開いた穴を覗くと梯子が見えた。
あら、おもしろそう!行ってみよう!
下へ続く梯子に足をかけた。梯子は急で下へ下へと続く。上からの光が薄れて暗くなる。何段も降りて着地したのは地下道らしい。闇の中を手探りで調べると道がある。行く先には、微かな光が漏れている。それを目当てにゆっくり進む。
かなり、歩いただろうか……道は登り気味になって、行き止まった。頭上の板を押し上げると、目の前には池が広がった。庭に出たらしい。なんと寂しい所だろう……樹齢何百年とも思える樹木が生い茂っている。細い小道を少し歩くと朱塗りの鳥居が立ち小さなお稲荷様の社があった。
カーカーカー
突然カラスが飛び立った。
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