73 / 204
ぐりふぉむⅠ
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
景山は、見届け人の一人として、その場にいた。
左手で傘を差し、右手に抜き身の太刀を下げた後藤が現れ、引き出された罪人の横に立つと、何かつぶやきながら、空を見上げた。
つられて手伝人足の二人も空を見上げ、押さえつけられていた罪人も、首を回しながら、空を見ようとした。
景山は、一連の動きを横から見ていた。
首が回る角度は限度がある。
可動域は、左右に60~70度と言われ、真横までは回らない。
しかし、罪人の首は真横を向いた。
さらに、そのまま回り続け、180度向きを変えたのだ。
座して、頭を下げさせられた状態から、首が180度回ったため、罪人は、頭だけが空を見上げる形になった。
後藤が、罪人の頚椎の可動域が限界を迎える寸前、首を断ったのだ。
そのため、自由になった首が、回し始めた勢いを保ったまま回転し、空を見上げたのである。
が、それも一瞬であった。
空を向いた首は、勢いを失い、そのまま血溜まりの穴へと落ちた。
落ちた首を追うように、首の断面から大量の鮮血が噴き出した。
他の見届け人たちは、何が起こったのか分からず、瞬きをして目を凝らし、骸となった罪人と後藤を見比べていた。
後藤は、その日、四人の罪人の首を落とした。
しかし、一滴の返り血も浴びなかったどころか、雨にさえ濡れていなかったと言う。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「景山。
佐竹様は?」
後藤の言葉に、景山は視線を一瞬、風雷神門の方向に走らせた。
門までの参道に、佐竹の姿は無い。
「無事に、外に出られたようだ」
景山が答えた。
ぐりふぉむの指を斬り飛ばした後藤は、後方へと移動し、回り込みながら、ぐりふぉむの真正面に立った。
参道の直線で、ぐりふぉむと対峙する形になったのだ。
距離を取ってはいるが、さすがに怪物から目を離し、背後の風雷神門を確認することは出来そうにない。
景山は、ぐりふぉむとの距離は後藤より近いが、参道から外れ、斜めからぐりふぉむを見る位置に立っている。
傷を負ったぐりふぉむが、逃げる動きを見せれば退路を断つために走り、逆に、後藤に襲い掛かれば、牽制ができる位置である。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。
時代小説の愉しみ
相良武有
歴史・時代
女渡世人、やさぐれ同心、錺簪師、お庭番に酌女・・・
武士も町人も、不器用にしか生きられない男と女。男が呻吟し女が慟哭する・・・
剣が舞い落花が散り・・・時代小説の愉しみ
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―
三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】
明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。
維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。
密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。
武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。
※エブリスタでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる