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第332話 海戦
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僕達が王国の艦影を確認すると同時に、強烈な風が吹き始めた。それまで周囲に立ち込めていた霧が次第に晴れ始めたのだ。すると王国軍の全容が見ることが出来た。軍艦は大小様々で形も不揃いだが、数は二十五隻。甲板には大量の人が乗っており、やはり兵士を船で輸送し海岸から上陸する目論見がはっきりと分かった。王国軍もこちらの船を確認したのか行動が慌ただしくなった。
そして王国の旗艦と見られる船からスルスルと旗が上がった。真っ赤な旗だ。僕はチカカに旗の意味を聞くと、交戦準備だそうだ。王国軍の船には帆船は少ない。そのほとんどが大量のオールがある、いわゆるガレー船と言うやつだな。船乗りたちが一斉に力強く漕ぎ始め、こちらに進路を向け始めた。
チカカはこちらもスルスルと旗を上げた。旗艦に続け、と言う意味のものだ。僕達が乗る船は一団から抜け、他二隻が後をついてくる形を取った。旗艦は大きく舵をとり、王国軍から逃げるような形となった。こうなれば帆船で構成している公国軍に王国軍が追いつけるはずがない。
公国軍は機動力を活かし、王国軍の艦隊の周りをぐるりと周り、風上の位置に立った。チカカが僕に確認を取る。
「ロッシュ公。よろしいですか?」
「勿論だ。タイミングはガムドに任せる」
そういうと、ガムドは通信士に伝令を送った。旗が一枚加わった。交戦始めの旗だ。チカカは一直線に王国軍の艦隊に舵を向けた。まるで突撃するかのように追い風を強烈に受けた帆船がものすごい速度で一気に王国艦隊との距離を詰める。相手もただ止まっているわけでない。向こうもこちらにぶつけるために真っ直ぐとこちらに向かってくる。
距離はおおよそ三千メートルというあたりか。チカカは左に舵を切った。艦隊はするすると左に進路を曲げていく。王国艦隊は依然として直進をやめず、こちらの船隊の腹にぶつけようとしているような形になった。その瞬間だった。三隻に搭載されている六門が火を吹いた。爆音が周囲に鳴り響き、王国艦隊の周りに大きな水柱が上がった。そして、その中の一発が王国軍の小さな艦に命中したのだ。
公国軍は第二弾の装填を急がせた。その一発の砲弾は王国軍を震撼させたようだ。ガレー船の船乗りたちは混乱し、まとまりのない動きをし始めたのだ。それを好機と捉え、再び六門が火を吹いた。先程はやや飛びすぎてしまったので仰角をやや抑えられていた。
水柱は四本。二発が王国艦隊の大型帆船に見事に命中したのだ。帆船の甲板に大きな穴が開き、浸水しているようだ。あの調子ではすぐに沈没してしまうだろう。チカカは更に舵を大きく切った。艦隊が王国艦隊から距離が離れすぎて、大砲の安定射程から外れてしまったのだ。艦隊は百八十度回頭し、再び王国軍の艦隊を射程に収めた。
ここまで来て、王国軍からなんら反応はない。降伏なら降伏をしてほしいものだ。しかし、王国軍は進路を反対に向けだし、退却の動きを見せだした。さすがにガレー船は進路を変えるのが早い。全速力で逃げていく。旗艦である帆船も進路を変え始めた。
ガムドが再び攻撃の合図を出そうとしていたのを僕は止めた。すでに勝敗は決しただろう。僕はじっと王国軍の様子を見ていた。どうやら、王国軍の艦隊は周囲に浮かんでいる兵士達の救助を始めていたのだ。
「ガムド。これは我々が勝ったと見てよいか?」
「ええ。ロッシュ公。我らの勝ちです。王国はさぞかし肝を冷やしたでしょう。軽んじていた公国に完膚なきまでやられたのですから。王国艦隊の救助が終われば、我々も戦線を離脱しましょう」
しかし、信じられない光景を見てしまった。船乗りたちを船から投げ捨てるように海に落としているではないか。一体何をしているんだ? 僕はガムドに聞くと信じられないものだった。
「おそらく、投げられているのは亜人かと」
「何!? なぜ、そんなことをするんだ」
「おそらく海に投げ出されている兵士を救うためでしょう。見ての通り、艦隊には兵士が満載されています。沈没した三隻の船の兵士を救い出すためには誰かを海に投げなければなりません。それが亜人なのでしょう」
「兵士は人間か?」
「おそらくはそうでしょう。そうでなければ亜人を投げたりはしないでしょうから」
僕は王国艦隊の方に目をやると、まだ次々と投げ出している。投げ出された亜人達は、破壊された船の木っ端に捕まり、何かを叫んでいるように感じた。その作業は小一時間は続いただろうか。僕達が近づかないのは、王国艦隊に捕まれば、こちらに勝ち目がないからだ。相手も僕達が攻撃の意思がないことを察しているのだろう。
ついに王国艦隊は脱兎のごとく、王国領に向け走り去っていった。その後ろ姿は酷いもので、艦隊とは名ばかりのバラバラの行動だった。王国艦隊が離れたことを確認してから、僕達の艦隊は投げ出された亜人を救助するために動き出した。
僕達が近づくと、大量の亜人が海の上に浮いていた。その誰もが僕達に救助を求めている。すぐに救助用の小舟を出すように命じた。しかし、何という人数だ。広い海原に人だかりが出来ているようだ。三隻の船に収容出来るだろうか。船員たちは慣れた手つきで、小舟を軍艦の横に降ろしていく。
一隻、また一隻と準備が出来次第、救助へと向かっていく。僕はその光景をずっと甲板から眺めていた。亜人達が万が一抵抗をする場合に備えて、バリスタをいつでも動かせるように兵を配備してある。その発射の判断は僕がするつもりだ。しかし、亜人達は小舟に乗る兵士の言うことに対し素直に応じている様子だ。
小舟には詰め込むように五十人程度が乗せられている。それでも抵抗するような兆しはなく、軍艦からハシゴを降ろし、小舟に乗る王国軍の者たちを戦艦に移乗させていく。僕は最初に救助された者たちに近づこうとすると、僕を取り囲むように公国の兵士が近づいてきた。
「ロッシュ公、お下がりを。やつらはまだ武器を持っているかもしれません」
公国兵の誰かがそのように口にした。僕はもっともだと思い、救助された者たちに武器を持っているか聞くと、皆が一様に首を振った。そして、代表者らしい者が這いつくばるような姿勢となった。
「我らを助けてもらい感謝の言いようがありません。貴方様はこの船では最も偉いのでしょうか?」
ん? そうなるかな。僕が何も反応しないのを見て、どうやら一番偉いと思ったようだ。
「我らは王国では奴隷のような存在で、船を操縦するためだけに狩り出されたのです。決して、戦闘員ではありません。今回投げ出された殆どの者も同じような身分なのです。どうか、命をお助けくださらないでしょうか」
どういう意味だ? 命を助ける気があるからこそ、救助したのだが。するとようやくガムドが救助隊の指揮からこちらにやってきて。ガムドは救助されたものを一瞥してから僕の側に立った。
「ロッシュ公。なんとか全員の救助は可能になりそうです。救助対象者は約四千人にも及びそうですが、分散する形で乗せても構いませんか?」
僕は頷いてから、救助された者が言っていた意味を聞いた。
「それは……」
ガムドの話は戦争のルールの話だった。王国軍は公国に対して攻撃を加えてきた。この際、戦闘員については捕虜として取り扱われ、公国の裁判によって裁かれることになる。一応は重い刑罰が課せられることが一般的だ。強制労働や死刑もありうる。しかし、それは攻撃の意思があるものに対してだけに課せられるものだ。無理やり戦場に連れ出されたりする場合、非戦闘員と見做され、基本的には本国に強制送還されるのが常のようだ。
つまり、彼が必死に非戦闘員であることを主張しているのは裁判にかけられないためのものか。ここで命を助けられても、裁判で死刑判決が出される事もあるということか。
「ガムド、彼の言い分は真実なのか?」
「おそらくは。そうでなければ王国は彼らにこのような酷いことはしないでしょう」
僕は頷き、亜人に目を向けた。
「お前の言い分はよく分かった。港に到着次第、お前たちを王国に送り返す手配をしよう。それがお前たちの望みであろうからな」
僕がそういうと救助された者たちに狼狽の色が見えた。
「ちょ、ちょっと待ってください。その……私は公国に亡命したいのです。王国に戻ったら、また地獄のような日々を送らなければならない。あんな場所には戻りたくない。なんでもしますから、どうか、どうか」
一人がそういうと、周りにいた亜人たちも頭を低く下げてお願いするような格好を取った。どうしたものかな。ガムドに聞くと、ロッシュ公の思いのままに、と言ってきた。
「話は分かった。ただ、ここでは何も決められない。港に着いたら、ゆっくりと話を聞こう。今はゆっくりと体を休めるがいい。皆の救助が済み次第、船は出発するだろう。それでよいな?」
誰も反対するものはいない。それからも救助者は次々と移乗され、全員の救助が終わるまでにはかなりの時間を要した。最後の方に救助された者はかなり衰弱している者もいた。体を温め、僕の回復魔法をかけることでなんとか命を繋ぐことが出来た。
僕はチカカに三村に向けるように指示を出した。王国に送り返すならば三村の方がいいだろう。それにあまり外部の者に内情を見られたくはないからな。港に到着する直前に亜人たちには目隠しを強要した。若干の抵抗はあったが、受け入れなければ亡命は認めないと言うと素直に応じてくれた。
三村ではルドが待っており、僕が事の次第を説明するといくつかの倉庫を開けることになった。僕が再び船に引き返そうとすると、テドに呼び止められた。
「ロッシュ公。王国に勝てたな。この戦で公国の海は正真正銘、公国のものとなったのだ。私が何度も戦った王国に勝ってしまう、お前は本当に凄いやつだよ」
「そうだな。これで安心して航路を利用できるのは大きいな」
「その程度の評価とは……ロッシュは相変わらずだな」
それから四千人の亜人達は光が閉ざされた倉庫に収容され、一人一人公国への帰属の意思が確認されていった。驚いたことに、その全員が公国への帰属を求め、王国に帰らないと言う意思表示をした。本当に王国では亜人をどのように扱っているというのだ。王国への不信感がより一層募る出来事だった。
そして王国の旗艦と見られる船からスルスルと旗が上がった。真っ赤な旗だ。僕はチカカに旗の意味を聞くと、交戦準備だそうだ。王国軍の船には帆船は少ない。そのほとんどが大量のオールがある、いわゆるガレー船と言うやつだな。船乗りたちが一斉に力強く漕ぎ始め、こちらに進路を向け始めた。
チカカはこちらもスルスルと旗を上げた。旗艦に続け、と言う意味のものだ。僕達が乗る船は一団から抜け、他二隻が後をついてくる形を取った。旗艦は大きく舵をとり、王国軍から逃げるような形となった。こうなれば帆船で構成している公国軍に王国軍が追いつけるはずがない。
公国軍は機動力を活かし、王国軍の艦隊の周りをぐるりと周り、風上の位置に立った。チカカが僕に確認を取る。
「ロッシュ公。よろしいですか?」
「勿論だ。タイミングはガムドに任せる」
そういうと、ガムドは通信士に伝令を送った。旗が一枚加わった。交戦始めの旗だ。チカカは一直線に王国軍の艦隊に舵を向けた。まるで突撃するかのように追い風を強烈に受けた帆船がものすごい速度で一気に王国艦隊との距離を詰める。相手もただ止まっているわけでない。向こうもこちらにぶつけるために真っ直ぐとこちらに向かってくる。
距離はおおよそ三千メートルというあたりか。チカカは左に舵を切った。艦隊はするすると左に進路を曲げていく。王国艦隊は依然として直進をやめず、こちらの船隊の腹にぶつけようとしているような形になった。その瞬間だった。三隻に搭載されている六門が火を吹いた。爆音が周囲に鳴り響き、王国艦隊の周りに大きな水柱が上がった。そして、その中の一発が王国軍の小さな艦に命中したのだ。
公国軍は第二弾の装填を急がせた。その一発の砲弾は王国軍を震撼させたようだ。ガレー船の船乗りたちは混乱し、まとまりのない動きをし始めたのだ。それを好機と捉え、再び六門が火を吹いた。先程はやや飛びすぎてしまったので仰角をやや抑えられていた。
水柱は四本。二発が王国艦隊の大型帆船に見事に命中したのだ。帆船の甲板に大きな穴が開き、浸水しているようだ。あの調子ではすぐに沈没してしまうだろう。チカカは更に舵を大きく切った。艦隊が王国艦隊から距離が離れすぎて、大砲の安定射程から外れてしまったのだ。艦隊は百八十度回頭し、再び王国軍の艦隊を射程に収めた。
ここまで来て、王国軍からなんら反応はない。降伏なら降伏をしてほしいものだ。しかし、王国軍は進路を反対に向けだし、退却の動きを見せだした。さすがにガレー船は進路を変えるのが早い。全速力で逃げていく。旗艦である帆船も進路を変え始めた。
ガムドが再び攻撃の合図を出そうとしていたのを僕は止めた。すでに勝敗は決しただろう。僕はじっと王国軍の様子を見ていた。どうやら、王国軍の艦隊は周囲に浮かんでいる兵士達の救助を始めていたのだ。
「ガムド。これは我々が勝ったと見てよいか?」
「ええ。ロッシュ公。我らの勝ちです。王国はさぞかし肝を冷やしたでしょう。軽んじていた公国に完膚なきまでやられたのですから。王国艦隊の救助が終われば、我々も戦線を離脱しましょう」
しかし、信じられない光景を見てしまった。船乗りたちを船から投げ捨てるように海に落としているではないか。一体何をしているんだ? 僕はガムドに聞くと信じられないものだった。
「おそらく、投げられているのは亜人かと」
「何!? なぜ、そんなことをするんだ」
「おそらく海に投げ出されている兵士を救うためでしょう。見ての通り、艦隊には兵士が満載されています。沈没した三隻の船の兵士を救い出すためには誰かを海に投げなければなりません。それが亜人なのでしょう」
「兵士は人間か?」
「おそらくはそうでしょう。そうでなければ亜人を投げたりはしないでしょうから」
僕は王国艦隊の方に目をやると、まだ次々と投げ出している。投げ出された亜人達は、破壊された船の木っ端に捕まり、何かを叫んでいるように感じた。その作業は小一時間は続いただろうか。僕達が近づかないのは、王国艦隊に捕まれば、こちらに勝ち目がないからだ。相手も僕達が攻撃の意思がないことを察しているのだろう。
ついに王国艦隊は脱兎のごとく、王国領に向け走り去っていった。その後ろ姿は酷いもので、艦隊とは名ばかりのバラバラの行動だった。王国艦隊が離れたことを確認してから、僕達の艦隊は投げ出された亜人を救助するために動き出した。
僕達が近づくと、大量の亜人が海の上に浮いていた。その誰もが僕達に救助を求めている。すぐに救助用の小舟を出すように命じた。しかし、何という人数だ。広い海原に人だかりが出来ているようだ。三隻の船に収容出来るだろうか。船員たちは慣れた手つきで、小舟を軍艦の横に降ろしていく。
一隻、また一隻と準備が出来次第、救助へと向かっていく。僕はその光景をずっと甲板から眺めていた。亜人達が万が一抵抗をする場合に備えて、バリスタをいつでも動かせるように兵を配備してある。その発射の判断は僕がするつもりだ。しかし、亜人達は小舟に乗る兵士の言うことに対し素直に応じている様子だ。
小舟には詰め込むように五十人程度が乗せられている。それでも抵抗するような兆しはなく、軍艦からハシゴを降ろし、小舟に乗る王国軍の者たちを戦艦に移乗させていく。僕は最初に救助された者たちに近づこうとすると、僕を取り囲むように公国の兵士が近づいてきた。
「ロッシュ公、お下がりを。やつらはまだ武器を持っているかもしれません」
公国兵の誰かがそのように口にした。僕はもっともだと思い、救助された者たちに武器を持っているか聞くと、皆が一様に首を振った。そして、代表者らしい者が這いつくばるような姿勢となった。
「我らを助けてもらい感謝の言いようがありません。貴方様はこの船では最も偉いのでしょうか?」
ん? そうなるかな。僕が何も反応しないのを見て、どうやら一番偉いと思ったようだ。
「我らは王国では奴隷のような存在で、船を操縦するためだけに狩り出されたのです。決して、戦闘員ではありません。今回投げ出された殆どの者も同じような身分なのです。どうか、命をお助けくださらないでしょうか」
どういう意味だ? 命を助ける気があるからこそ、救助したのだが。するとようやくガムドが救助隊の指揮からこちらにやってきて。ガムドは救助されたものを一瞥してから僕の側に立った。
「ロッシュ公。なんとか全員の救助は可能になりそうです。救助対象者は約四千人にも及びそうですが、分散する形で乗せても構いませんか?」
僕は頷いてから、救助された者が言っていた意味を聞いた。
「それは……」
ガムドの話は戦争のルールの話だった。王国軍は公国に対して攻撃を加えてきた。この際、戦闘員については捕虜として取り扱われ、公国の裁判によって裁かれることになる。一応は重い刑罰が課せられることが一般的だ。強制労働や死刑もありうる。しかし、それは攻撃の意思があるものに対してだけに課せられるものだ。無理やり戦場に連れ出されたりする場合、非戦闘員と見做され、基本的には本国に強制送還されるのが常のようだ。
つまり、彼が必死に非戦闘員であることを主張しているのは裁判にかけられないためのものか。ここで命を助けられても、裁判で死刑判決が出される事もあるということか。
「ガムド、彼の言い分は真実なのか?」
「おそらくは。そうでなければ王国は彼らにこのような酷いことはしないでしょう」
僕は頷き、亜人に目を向けた。
「お前の言い分はよく分かった。港に到着次第、お前たちを王国に送り返す手配をしよう。それがお前たちの望みであろうからな」
僕がそういうと救助された者たちに狼狽の色が見えた。
「ちょ、ちょっと待ってください。その……私は公国に亡命したいのです。王国に戻ったら、また地獄のような日々を送らなければならない。あんな場所には戻りたくない。なんでもしますから、どうか、どうか」
一人がそういうと、周りにいた亜人たちも頭を低く下げてお願いするような格好を取った。どうしたものかな。ガムドに聞くと、ロッシュ公の思いのままに、と言ってきた。
「話は分かった。ただ、ここでは何も決められない。港に着いたら、ゆっくりと話を聞こう。今はゆっくりと体を休めるがいい。皆の救助が済み次第、船は出発するだろう。それでよいな?」
誰も反対するものはいない。それからも救助者は次々と移乗され、全員の救助が終わるまでにはかなりの時間を要した。最後の方に救助された者はかなり衰弱している者もいた。体を温め、僕の回復魔法をかけることでなんとか命を繋ぐことが出来た。
僕はチカカに三村に向けるように指示を出した。王国に送り返すならば三村の方がいいだろう。それにあまり外部の者に内情を見られたくはないからな。港に到着する直前に亜人たちには目隠しを強要した。若干の抵抗はあったが、受け入れなければ亡命は認めないと言うと素直に応じてくれた。
三村ではルドが待っており、僕が事の次第を説明するといくつかの倉庫を開けることになった。僕が再び船に引き返そうとすると、テドに呼び止められた。
「ロッシュ公。王国に勝てたな。この戦で公国の海は正真正銘、公国のものとなったのだ。私が何度も戦った王国に勝ってしまう、お前は本当に凄いやつだよ」
「そうだな。これで安心して航路を利用できるのは大きいな」
「その程度の評価とは……ロッシュは相変わらずだな」
それから四千人の亜人達は光が閉ざされた倉庫に収容され、一人一人公国への帰属の意思が確認されていった。驚いたことに、その全員が公国への帰属を求め、王国に帰らないと言う意思表示をした。本当に王国では亜人をどのように扱っているというのだ。王国への不信感がより一層募る出来事だった。
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