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第270話 北部諸侯連合の降伏
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僕はロイド子爵の言い分が信じられず、もう一度聞き直してしまった。
「北部諸侯連合が公国に従属するということか?」
「いいえ。傘下に収まるという意味です」
信じられないな。北部諸侯連合の独立権を放棄して、公国の一部になるというのだ。北部諸侯連合は、人口四十万人、兵力は四万人にもなる一つの国家と見れば大国と言える。公国と比しても、四倍近い大きいのだ。そんな国家が公国という小さな国に従うというのだ。通常では考えられない。その意図は一体。
「この期に及んでは隠すわけにはいきませんからお話しますが、残された食料が僅かだったのです。食料は常に侯爵領を通過して、各領に割り振られていました。それは、各領で収穫された作物についても同様です。そのため、侯爵が食料の管理をすることになっていたのですが……」
なるほど。侯爵は伯爵と結託し、食料を独占し、子飼いの兵達に食料を融通していたわけか。とうぜん、しわ寄せは在庫量にやってくる。帳簿上では、一年分の余力を残していたが、開いてみたら、いくらもなかったわけか。ロイド子爵は、まだ精査はしていないが数カ月持てば良い方だという見方をしている。ロイド子爵が淡々と語っているが、顔は怒りに満ち溢れていた。
「数カ月といえば、春の作物の収穫が出来るかどうかです。しかし、去年から不作を考えますと、十分な食料を得ることは難しいでしょう。そうなれば、自然と北部諸侯連合は瓦解してしまうでしょう。領民達は尽く難民となり、我らも住処を無くしてしまうでしょう。そうなる前に、イルス公にお縋りするしか、我らに生きる道はないのです」
ロイド子爵の話し方から切実な思いと切迫した雰囲気を感じることが出来た。猶予は数カ月。しかも必要な食料は四十万人分。今まで考えたこともない途方もない量だろう。果たして、それだけの量を公国で賄えるのか? うん、余裕で賄えるな。もちろん、条件はいろいろとあるが北部諸侯連合の住民たちの協力があれば可能だろう。しかし、領民は納得しているのだろうか?
「ロイド子爵。話はよく分かった。おそらく、貴殿は嘘をついていないのだろう。今一度聞くが、公国の傘下に入るというのは総意なのか? 貴殿の後ろにいるのも領主なのであろう? その者たちも同意していることなのか?」
「もちろんです。イルス公。皆は今の状況をよく理解しております。そして、イルス公以外、我らを救ってくれるものがいないことも」
買いかぶり過ぎだろう。僕は何もしていない。皆が助かりたいと思っているから頑張っているに過ぎないのだ。
「そうか。ならば、僕の方からいくつか条件を出させてもらう。この条件を満たさなければ、受け入れは認めることは出来ない。はっきり言わせてもらえば、北部諸侯連合の規模は公国からすれば巨大過ぎる。それを受け入れるということは少なからず公国にも影響をもたらす。最悪の場合は共倒れだ。それを承知して話を聞いてもらいたい」
僕は緊迫した雰囲気を出しながら、ロイド子爵やナックル子爵、そして後ろに立つ領主三人の目をじっと見ていると、皆一様に頷いた。
「まずは、僕が現在建設中の都市より以西の土地を放棄したもらいたい」
これはつまり北部諸侯連合の貴族達に領土を放棄しろと言っているようなものだ。もちろん、ロイド子爵は公国の傘下に入るのだから、領土は公国に参入されるので放棄も何もないのだが。それでも、放棄しろと言われればいい気はしないだろう。やはり、ロイド子爵やナックル子爵はすぐには表情には出さないが、後ろの三人は表情を大きく変えた。そこで口を開いたのはナックル子爵だ。
「イルス公。その提案に反対を述べるつもりはありませんが、先祖代々の土地を離れなくてはならないことに抵抗しない者はいないでしょう。その理由をお聞かせ願えませんでしょうか。その必要があると思えば、領民も納得することでしょう」
僕は頷いた。ナックル子爵の発言は尤もだ。今まで公国に移住してきたものは、住処を終われ流浪としてきた者たちだ。土地の移住ということに対して抵抗をするという感覚は薄かったであろう。しかし、北部諸侯連合の各領地に住む者たちは別だろう。中には、王国が建国してからその地に住み着いている者もいるかもしれない。急に出てきた新興の国に移住などそうそう出来るものではない。
「尤もだ。僕も移住が必要ないと思えば、強制するつもりはない。しかし、皆も知っての通り、北部諸侯連合の領内の土地は荒廃しているという事実があるだろう。この土地を開拓し、時間をかければ土地は回復していくだろう。それだけの技術も公国は持っている。しかし、今すぐ食料が欲しければ話は別だ」
公国の領内の土地は現状、豊かに広がっている。これからも肥え太らせるようにどんどん農地改革をしていくつもりだ。その農地とすることができる土地は公国の人口ではとても開拓できないほど潤沢になるのだ。その土地を耕し、食料生産をした方が理にかなっている。四十万人の食料も瞬く間に生産することが出来るだろう。僕の説明は、公国を知っているものからすれば当り前の話だから違和感はないが、ナックル子爵たちには違和感を感じていたようだ。
「とても信じられない。そのような豊かな土地が、ここから数十キロメートル離れたところに存在するのですか? その秘密があるのですか? その秘密があれば、我が領内も土地が蘇ったりしないのでしょうか」
なかなか痛いところを突いてくるな。しかし、これは遅かれ早かれ分かってしまうことだ。話してしまってもいいだろう。アウーディア石については触れることは出来ないが。
「ナックル子爵。この話はここだけのものにして欲しい。といっても、まだ、貴殿達が公国に加わることが決定していないので、そこまでは話せないが。土地を回復させる方法は知っている。現に、我が公国内も荒廃に見舞われた土地が多数あった。それを回復させてきたのだ。もちろん、この北部諸侯連合の土地についてもそれが可能だ」
「でしたら!!」
「だから、言ったであろう? この移住受け入れは我ら公国をも危険に晒されてしまうことを。北部諸侯連合の領土を回復させられるが、一方で公国の土地が荒廃の危険性を持つかも知れないのだ。はっきり言って、それほどまで北部諸侯連合を助けたいという気持ちは僕にはない」
荒廃を辛うじて止めているのはアウーディア石のおかげだ。しかし、アウーディア石は今もすり減っていることだろう。それが無くなるのがいつになるか分からない。しかし、面積が拡大すればそれだけ摩耗が早くなるのは確実だ。僕は、今までは石の効果の範囲を拡張してきたが、そろそろやめるべきだと思っている。人口に対して、面積が広すぎるからだ。
今は、じっくりと土地を開発していくことが重要なのだ。それ故、ナックル子爵の要請には応じるつもりは全く無い。助けたい気持ちが強くないのも正直な気持ちだ。
「はっきりと言うが、公国の民達は全て塗炭の苦しみを味わっている。それこそ、餓死をする一歩手前という者たちばかりだ。しかし、北部諸侯連合の者たちは違う。与えられることが当り前となり、それがなくなると次に与えてくれるものを探す。その姿勢に理解はするが、感心は出来ない。だから、僕は貴殿たちやその領民に施しを与えるつもりは一切ないのだ。その辺りを理解してもらいたい」
僕は北部諸侯連合の者たちを信頼できないのは、施しに対して感謝がないのだ。どのような思惑であっても王国がなけなしの食料を譲ってくれていた事実がある。しかし、その事実を忘れ、簡単に裏切ってしまう。それは僕が施しを与えても、彼らの根底にある考えは変わることはないだろう。そうなれば、次に裏切られるのは公国となろう。それを阻止するためには、北部諸侯連合を一回バラバラにしなければならない。
僕の考えがなんとなく伝わってきたのだろうか、領土の放棄について強く言う者はいなくなった。ナックル子爵も口をつぐんだ。
「ナックル子爵の意見も理解は出来るが、これが受け入れをする最低条件だ。もちろん、各領単位での移住をしてもらおうと思っている。僕も家族が別れ離れに暮らすのは良いとは思っていない。領主にはその土地の責任者として仕事を任せようと思っている。土地は変わるが、皆の仕事ややることは大して変わるものではない。もちろん、例外はあるが」
ロイド子爵は、その例外というのが気になったみたいで聞いてきた。基本的には公国の民には労働を義務付けている。未成年に関しては今後見直していくつもりだが。公国の産業は農業が主たるものであるから、それに従事してもらうものが多いだろう。しかし、それ以外にも鉱山の開発や漁業に多くの人が従事することになるだろう。例外とは、鉱山や漁業、または専門的な技術を有するものは必要な場所に移動を求めるということだ。ロイド子爵は頷いてきた。
「なるほど。私はこれほど好条件で受け入れをしてくれるという話は聞いたことがない。我らの立場はいわば敗戦国と同じ。そう考えると、奴隷に近い身分でも文句は言えません」
ロイド子爵は少し畏まり過ぎではないだろうか。しかし、この世界ではこれが常識なのかも知れないな。余計なことは言わないほうがいいだろう。さて、僕の出した条件について、北部諸侯連合の考えはどうであろう。僕は皆の顔をじっと見つめた。すると、ロイド子爵を皮切りに異議はございません、と口々に漏らした。
僕は意地悪に領民もか? などとは言わない。彼らの決意に満ちた顔を見れば、全力で説得をしてくれるだろう。実は条件というのは、これだけと言ってもいい。後は、公国内でのルールだけだ。彼らの決断によって、移住は決まったと言ってもいいだろう。
しかし、問題はそれだけではない。迫りくる王国軍への対応。これは、侯爵がいなくなったことで引き返してもらうことを願うだけだ。あとは、侯爵領と伯爵領の処遇だ。それ以外は、領主が健在のため、すぐに対応を迫られることはない。いますぐに、代官を派遣して落ち着きを取り戻す必要がある。あとは、兵たちの処遇だ。やることは山積しているな。
「北部諸侯連合が公国に従属するということか?」
「いいえ。傘下に収まるという意味です」
信じられないな。北部諸侯連合の独立権を放棄して、公国の一部になるというのだ。北部諸侯連合は、人口四十万人、兵力は四万人にもなる一つの国家と見れば大国と言える。公国と比しても、四倍近い大きいのだ。そんな国家が公国という小さな国に従うというのだ。通常では考えられない。その意図は一体。
「この期に及んでは隠すわけにはいきませんからお話しますが、残された食料が僅かだったのです。食料は常に侯爵領を通過して、各領に割り振られていました。それは、各領で収穫された作物についても同様です。そのため、侯爵が食料の管理をすることになっていたのですが……」
なるほど。侯爵は伯爵と結託し、食料を独占し、子飼いの兵達に食料を融通していたわけか。とうぜん、しわ寄せは在庫量にやってくる。帳簿上では、一年分の余力を残していたが、開いてみたら、いくらもなかったわけか。ロイド子爵は、まだ精査はしていないが数カ月持てば良い方だという見方をしている。ロイド子爵が淡々と語っているが、顔は怒りに満ち溢れていた。
「数カ月といえば、春の作物の収穫が出来るかどうかです。しかし、去年から不作を考えますと、十分な食料を得ることは難しいでしょう。そうなれば、自然と北部諸侯連合は瓦解してしまうでしょう。領民達は尽く難民となり、我らも住処を無くしてしまうでしょう。そうなる前に、イルス公にお縋りするしか、我らに生きる道はないのです」
ロイド子爵の話し方から切実な思いと切迫した雰囲気を感じることが出来た。猶予は数カ月。しかも必要な食料は四十万人分。今まで考えたこともない途方もない量だろう。果たして、それだけの量を公国で賄えるのか? うん、余裕で賄えるな。もちろん、条件はいろいろとあるが北部諸侯連合の住民たちの協力があれば可能だろう。しかし、領民は納得しているのだろうか?
「ロイド子爵。話はよく分かった。おそらく、貴殿は嘘をついていないのだろう。今一度聞くが、公国の傘下に入るというのは総意なのか? 貴殿の後ろにいるのも領主なのであろう? その者たちも同意していることなのか?」
「もちろんです。イルス公。皆は今の状況をよく理解しております。そして、イルス公以外、我らを救ってくれるものがいないことも」
買いかぶり過ぎだろう。僕は何もしていない。皆が助かりたいと思っているから頑張っているに過ぎないのだ。
「そうか。ならば、僕の方からいくつか条件を出させてもらう。この条件を満たさなければ、受け入れは認めることは出来ない。はっきり言わせてもらえば、北部諸侯連合の規模は公国からすれば巨大過ぎる。それを受け入れるということは少なからず公国にも影響をもたらす。最悪の場合は共倒れだ。それを承知して話を聞いてもらいたい」
僕は緊迫した雰囲気を出しながら、ロイド子爵やナックル子爵、そして後ろに立つ領主三人の目をじっと見ていると、皆一様に頷いた。
「まずは、僕が現在建設中の都市より以西の土地を放棄したもらいたい」
これはつまり北部諸侯連合の貴族達に領土を放棄しろと言っているようなものだ。もちろん、ロイド子爵は公国の傘下に入るのだから、領土は公国に参入されるので放棄も何もないのだが。それでも、放棄しろと言われればいい気はしないだろう。やはり、ロイド子爵やナックル子爵はすぐには表情には出さないが、後ろの三人は表情を大きく変えた。そこで口を開いたのはナックル子爵だ。
「イルス公。その提案に反対を述べるつもりはありませんが、先祖代々の土地を離れなくてはならないことに抵抗しない者はいないでしょう。その理由をお聞かせ願えませんでしょうか。その必要があると思えば、領民も納得することでしょう」
僕は頷いた。ナックル子爵の発言は尤もだ。今まで公国に移住してきたものは、住処を終われ流浪としてきた者たちだ。土地の移住ということに対して抵抗をするという感覚は薄かったであろう。しかし、北部諸侯連合の各領地に住む者たちは別だろう。中には、王国が建国してからその地に住み着いている者もいるかもしれない。急に出てきた新興の国に移住などそうそう出来るものではない。
「尤もだ。僕も移住が必要ないと思えば、強制するつもりはない。しかし、皆も知っての通り、北部諸侯連合の領内の土地は荒廃しているという事実があるだろう。この土地を開拓し、時間をかければ土地は回復していくだろう。それだけの技術も公国は持っている。しかし、今すぐ食料が欲しければ話は別だ」
公国の領内の土地は現状、豊かに広がっている。これからも肥え太らせるようにどんどん農地改革をしていくつもりだ。その農地とすることができる土地は公国の人口ではとても開拓できないほど潤沢になるのだ。その土地を耕し、食料生産をした方が理にかなっている。四十万人の食料も瞬く間に生産することが出来るだろう。僕の説明は、公国を知っているものからすれば当り前の話だから違和感はないが、ナックル子爵たちには違和感を感じていたようだ。
「とても信じられない。そのような豊かな土地が、ここから数十キロメートル離れたところに存在するのですか? その秘密があるのですか? その秘密があれば、我が領内も土地が蘇ったりしないのでしょうか」
なかなか痛いところを突いてくるな。しかし、これは遅かれ早かれ分かってしまうことだ。話してしまってもいいだろう。アウーディア石については触れることは出来ないが。
「ナックル子爵。この話はここだけのものにして欲しい。といっても、まだ、貴殿達が公国に加わることが決定していないので、そこまでは話せないが。土地を回復させる方法は知っている。現に、我が公国内も荒廃に見舞われた土地が多数あった。それを回復させてきたのだ。もちろん、この北部諸侯連合の土地についてもそれが可能だ」
「でしたら!!」
「だから、言ったであろう? この移住受け入れは我ら公国をも危険に晒されてしまうことを。北部諸侯連合の領土を回復させられるが、一方で公国の土地が荒廃の危険性を持つかも知れないのだ。はっきり言って、それほどまで北部諸侯連合を助けたいという気持ちは僕にはない」
荒廃を辛うじて止めているのはアウーディア石のおかげだ。しかし、アウーディア石は今もすり減っていることだろう。それが無くなるのがいつになるか分からない。しかし、面積が拡大すればそれだけ摩耗が早くなるのは確実だ。僕は、今までは石の効果の範囲を拡張してきたが、そろそろやめるべきだと思っている。人口に対して、面積が広すぎるからだ。
今は、じっくりと土地を開発していくことが重要なのだ。それ故、ナックル子爵の要請には応じるつもりは全く無い。助けたい気持ちが強くないのも正直な気持ちだ。
「はっきりと言うが、公国の民達は全て塗炭の苦しみを味わっている。それこそ、餓死をする一歩手前という者たちばかりだ。しかし、北部諸侯連合の者たちは違う。与えられることが当り前となり、それがなくなると次に与えてくれるものを探す。その姿勢に理解はするが、感心は出来ない。だから、僕は貴殿たちやその領民に施しを与えるつもりは一切ないのだ。その辺りを理解してもらいたい」
僕は北部諸侯連合の者たちを信頼できないのは、施しに対して感謝がないのだ。どのような思惑であっても王国がなけなしの食料を譲ってくれていた事実がある。しかし、その事実を忘れ、簡単に裏切ってしまう。それは僕が施しを与えても、彼らの根底にある考えは変わることはないだろう。そうなれば、次に裏切られるのは公国となろう。それを阻止するためには、北部諸侯連合を一回バラバラにしなければならない。
僕の考えがなんとなく伝わってきたのだろうか、領土の放棄について強く言う者はいなくなった。ナックル子爵も口をつぐんだ。
「ナックル子爵の意見も理解は出来るが、これが受け入れをする最低条件だ。もちろん、各領単位での移住をしてもらおうと思っている。僕も家族が別れ離れに暮らすのは良いとは思っていない。領主にはその土地の責任者として仕事を任せようと思っている。土地は変わるが、皆の仕事ややることは大して変わるものではない。もちろん、例外はあるが」
ロイド子爵は、その例外というのが気になったみたいで聞いてきた。基本的には公国の民には労働を義務付けている。未成年に関しては今後見直していくつもりだが。公国の産業は農業が主たるものであるから、それに従事してもらうものが多いだろう。しかし、それ以外にも鉱山の開発や漁業に多くの人が従事することになるだろう。例外とは、鉱山や漁業、または専門的な技術を有するものは必要な場所に移動を求めるということだ。ロイド子爵は頷いてきた。
「なるほど。私はこれほど好条件で受け入れをしてくれるという話は聞いたことがない。我らの立場はいわば敗戦国と同じ。そう考えると、奴隷に近い身分でも文句は言えません」
ロイド子爵は少し畏まり過ぎではないだろうか。しかし、この世界ではこれが常識なのかも知れないな。余計なことは言わないほうがいいだろう。さて、僕の出した条件について、北部諸侯連合の考えはどうであろう。僕は皆の顔をじっと見つめた。すると、ロイド子爵を皮切りに異議はございません、と口々に漏らした。
僕は意地悪に領民もか? などとは言わない。彼らの決意に満ちた顔を見れば、全力で説得をしてくれるだろう。実は条件というのは、これだけと言ってもいい。後は、公国内でのルールだけだ。彼らの決断によって、移住は決まったと言ってもいいだろう。
しかし、問題はそれだけではない。迫りくる王国軍への対応。これは、侯爵がいなくなったことで引き返してもらうことを願うだけだ。あとは、侯爵領と伯爵領の処遇だ。それ以外は、領主が健在のため、すぐに対応を迫られることはない。いますぐに、代官を派遣して落ち着きを取り戻す必要がある。あとは、兵たちの処遇だ。やることは山積しているな。
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