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第248話 ゴードンと振り返ろう 後半
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ゴードンとの報告会は今しばらく掛かりそうだな。しかし、相談することで今後やるべきことが見えてくるな。と言っても残すところは……。
「ロッシュ村長の食事はやはり美味しいですな。オコトさんとおっしゃいましたか。あの方の料理は絶品でした。また、ご相伴に預かりたいものですな」
ゴードンは昼食でオコトの料理を食べてから、ずっとこの調子だ。余程気に入ったようだな。しかし、そのときにオコトがほしいと言っていた調味料だが、どう考えても醤油のことのようだな。大豆も生産体制に入っているのだし、そろそろ醸造をしてもいいかもしれないな。そうなると、味噌も作りたくなるな。早くとも夏頃には形だけは出来上がるだろう。醤油と味噌か、ついにここまで作れるようになったのだな。
僕がにやけていると、ゴードンも興味を持ったようで話しかけてくる。もちろん、教えてやるとそんな調味料があるのですかと感心していた。偶々、コーヒーを持ってきていたオコトも僕の話を聞いて、すごく喜んでいた。どうやら、忍びの里でも昔は作っていたみたいだが、最近は食糧不足で手に入らなくなっていたみたいだ。オコトの喜んでいる表情を見ているとすぐに作りたくなってくるな。試作品だけでも作ってみるか。
そんなことを考えならがら、コーヒーを啜る。旨いな。さて、話の続きをするか。
そうだな。まずは、サノケッソの街からラエルの街まで新道を作ったことを説明しよう。僕は、地図を取り出し新道を作った場所をその地図に描いていく。サノケッソの街から東に向かい、途中の湖も描きつつ、山道……ではなく坑道を描いていく。そのまま、南下を続け、ある点から東に再び変え、ラエルの街を通る街道に合流する。
ゴードンも僕が描く道を見ながら、唸っている。
「これは素晴らしいですな。これでラエルの街から北のサノケッソの街、南の街まで直通の道が完成したわけですな。この道のおかげで、北への物流が大きく変わりそうですな。北の街道は道が悪くて、とても物流に適した道とはいい難いものですからな」
まぁ、元オーレック領より北側は北の街道のバイパスというべき道を作ったので、その間の物流はかなり良くなっていることだろう。しかし、街から元オーレック領は未だ馬車一台が通れるかどうかという道幅だ。物流という点では支障が大きいことだろう。過去に王国が道を拡張しようとして失敗したということがあるらしい。拡張するのが難しい場所となっている。
いずれは拡張工事をしたいところだが、今は難しいだろうな。さて、続きだ。僕は新道の一点を指差した。
「道路を延長している時にこの地点で面白いものを発見したのだ。本来であれば素通りしてもいいところなのだが……」
僕が言っているのは温泉街のことだ。我ながら、なぜ、あれほど夢中になって開発をしてしまったのか不思議でならない。温泉が湧いているその地を開発し、今や、数百人が訪れても宿を提供できるほどの規模の温泉街を形成している。しかも、僕の別荘付きだ。妻達を連れて行ってやりたいところだが、その前に物資を運んでやらなければ。きっと、残してきた者たちは不安に感じているところだろう。
「温泉街ですか。いや、思い切ったものを作ったものですな。我々は温泉というものを知りませんからどういうものか想像も出来ませんが、天然の公衆浴場と行った感じでしょうか。風呂というものは一度入ると、入らない日は気持ち悪くて仕方ありませんからな。私も是非行ってみたいものですな」
そうなのだ。村周辺では公衆浴場が出来たおかげで、風呂への欲求が高くなっているのだ。このあたりの者たちは夏は海、冬は温泉ときっとレジャーを楽しむに違いないな。各地にも公衆浴場の設置をしなければな。それだけのためならば、小規模な溜池があれば、事足りそうだが、水田に水を引っ張ることを考えると頭が痛い。
僕は更に南に指を動かしていき、一点を指差した。僕が指差した場所は忍びの里だ。ハトリやオコトが出身の里である。実は、地図で見るとラエルの街からかなり近いことが分かる。直線距離だと二十キロメートルほどだろうか。これほど近くなのに忍びの里の存在を知らなかったとは。もしかしたら、僕の知らない場所にこういう里がたくさんあるのかも知れないな。
「ここが忍びの里だ。諜報を生業とする者たちが住まう土地だ。僕は長老と掛け合い、彼らと協力関係になることを約束したのだ。忍びの里からは僕達が欲する情報を持ってきてもらう代わりに食料を提供することになっている。ただ、食料の運び込みについては、ある程度の場所まででいいみたいだ」
忍びの里はあまり人が入り込むことを良しとはしていないようだ。そもそも、里までの道はもはや存在していない。あるにはあるのだが、存在していないことにしている。それが里の意向なのだ。そのため、食料運搬は忍びの里独自の道を通って運び込みがされるみたいで、その道は僕でも聞かされることはない。
「ほお。それほどまでに徹底して隠す必要があるんですな。しかし、情報という物が手に入りやすくなるというのは本当に素晴らしいことですな。我々の弱点である情報収集がこんな形で補完されるとは考えだにしておりませんでしたな。しかし、話は変わりますが、その里はオコトさんのように美しい方が多いのでしょうか?」
ゴードンがそんなことに興味を示すとは珍しいこともあるものだな。僕は里にいる女性たちを思い出してみた。ん? あれ? 大勢の人を見た記憶があるはずなのに、女性の記憶が出てこないぞ。オコトとクイチしか出てこない。一体、どういうことなのだ? 他に集中していたから目に入らなかったというのか?
再び、オコトがコーヒーを持ってきたので聞いてみることにした。だって、物凄く気になるからな。
「気付きになられましたか。里の者たちは皆、隠密に長けた者たちなのです。ロッシュ殿と面識を持ちたい者以外は姿を見せても意識させないように訓練を受けているのです。そのため、記憶に残らないのです。今度、いらっしゃった時は、皆ロッシュ殿に警戒することはないでしょうから、それは美しい方をたくさん拝めますよ」
なんだ、聞いていたのか? しかし、末端の里の者でさえ、そのような特技を持っているとは、さすが忍びの里だ。僕もそうだが、ゴードンも驚いた様子でオコトの話しに聞き入っていた。
「いやはや、凄いところなんですな。私も是非一度行ってみたいものですな。しかし、この体ですから、ロッシュ村長と共に旅をするというのは難しいでしょうな。まぁ、私は温泉だけで我慢しますかな」
ゴードンはまだ若いのだがな。一度、無理矢理にでも連れ出してみるのも面白かも知れないな。と思ったがゴードンがいなくなれば公国の活動に影響が出かねないな。ゴードンの負担を軽くしてやれないものだろうか。
「ゴードン。済まないが、食料の手配をお願いできないだろうか。先程言った、忍びの里と温泉街向けのものだ。おそらく、どちらも我らの食料を運んでくるのを待ち望んでいるはずだ。なるべく早く運び込みをしてやってくれ」
ゴードンは快く頷いてくれた。僕はまだまだゴードンに頼らねばならないようだ。もう少し、人を増やし、それぞれに仕事を任せていかなければいけないだろう。今度、主要な者を集め、人事を刷新したいところだ。
「ゴードン。僕は公国内で部署を定め、それぞれに責任者を就けたいと考えている。人事の候補を決めておいてくれないだろうか。僕も何人か役職につけておきたいものがいる。その者たちとを併せて、一度協議をしたいと考えている。その調整をしておいてくれないだろうか」
「それは良い考えです。村だけのときと違い、今や広大な面積の領土となったのですから、役割分担を明確にし、それぞれに仕事を割り振ることは理にかなっております。なにやら、公国が新たなものに生まれ変わるような予感がしますぞ。こういう話が出ると、昔が懐かしく感じてきますな」
そうだな。なんとなくその場にいるものだけで話を進めて、やってきたということが今は難しくなってきているからな。人事が決まるまでは今しばらくかかることだろう。これでゴードンとの話は終わりだ。僕も再び北の地に向け出発の準備をしなければならないだろう。砦建設に堤防の設置が急務になる。アウーディア石の発掘は王国軍の動きを見ながら考えることにしよう。
僕とゴードンが執務室を離れ、居間で皆とくつろぐようにしようと思ったら、新たな客人が現れた。なんと、新村からやってきた船大工のテドではないか。まさか……・
「そのまさかですよ。ロッシュ様。ついに船が完成しました。それで是非ともロッシュ様にも処女航海に臨席してもらいたいと思いまして、急いでやってきた次第で」
ついに完成したか。公国のさらなる飛躍が期待できそうだな。
「ロッシュ村長の食事はやはり美味しいですな。オコトさんとおっしゃいましたか。あの方の料理は絶品でした。また、ご相伴に預かりたいものですな」
ゴードンは昼食でオコトの料理を食べてから、ずっとこの調子だ。余程気に入ったようだな。しかし、そのときにオコトがほしいと言っていた調味料だが、どう考えても醤油のことのようだな。大豆も生産体制に入っているのだし、そろそろ醸造をしてもいいかもしれないな。そうなると、味噌も作りたくなるな。早くとも夏頃には形だけは出来上がるだろう。醤油と味噌か、ついにここまで作れるようになったのだな。
僕がにやけていると、ゴードンも興味を持ったようで話しかけてくる。もちろん、教えてやるとそんな調味料があるのですかと感心していた。偶々、コーヒーを持ってきていたオコトも僕の話を聞いて、すごく喜んでいた。どうやら、忍びの里でも昔は作っていたみたいだが、最近は食糧不足で手に入らなくなっていたみたいだ。オコトの喜んでいる表情を見ているとすぐに作りたくなってくるな。試作品だけでも作ってみるか。
そんなことを考えならがら、コーヒーを啜る。旨いな。さて、話の続きをするか。
そうだな。まずは、サノケッソの街からラエルの街まで新道を作ったことを説明しよう。僕は、地図を取り出し新道を作った場所をその地図に描いていく。サノケッソの街から東に向かい、途中の湖も描きつつ、山道……ではなく坑道を描いていく。そのまま、南下を続け、ある点から東に再び変え、ラエルの街を通る街道に合流する。
ゴードンも僕が描く道を見ながら、唸っている。
「これは素晴らしいですな。これでラエルの街から北のサノケッソの街、南の街まで直通の道が完成したわけですな。この道のおかげで、北への物流が大きく変わりそうですな。北の街道は道が悪くて、とても物流に適した道とはいい難いものですからな」
まぁ、元オーレック領より北側は北の街道のバイパスというべき道を作ったので、その間の物流はかなり良くなっていることだろう。しかし、街から元オーレック領は未だ馬車一台が通れるかどうかという道幅だ。物流という点では支障が大きいことだろう。過去に王国が道を拡張しようとして失敗したということがあるらしい。拡張するのが難しい場所となっている。
いずれは拡張工事をしたいところだが、今は難しいだろうな。さて、続きだ。僕は新道の一点を指差した。
「道路を延長している時にこの地点で面白いものを発見したのだ。本来であれば素通りしてもいいところなのだが……」
僕が言っているのは温泉街のことだ。我ながら、なぜ、あれほど夢中になって開発をしてしまったのか不思議でならない。温泉が湧いているその地を開発し、今や、数百人が訪れても宿を提供できるほどの規模の温泉街を形成している。しかも、僕の別荘付きだ。妻達を連れて行ってやりたいところだが、その前に物資を運んでやらなければ。きっと、残してきた者たちは不安に感じているところだろう。
「温泉街ですか。いや、思い切ったものを作ったものですな。我々は温泉というものを知りませんからどういうものか想像も出来ませんが、天然の公衆浴場と行った感じでしょうか。風呂というものは一度入ると、入らない日は気持ち悪くて仕方ありませんからな。私も是非行ってみたいものですな」
そうなのだ。村周辺では公衆浴場が出来たおかげで、風呂への欲求が高くなっているのだ。このあたりの者たちは夏は海、冬は温泉ときっとレジャーを楽しむに違いないな。各地にも公衆浴場の設置をしなければな。それだけのためならば、小規模な溜池があれば、事足りそうだが、水田に水を引っ張ることを考えると頭が痛い。
僕は更に南に指を動かしていき、一点を指差した。僕が指差した場所は忍びの里だ。ハトリやオコトが出身の里である。実は、地図で見るとラエルの街からかなり近いことが分かる。直線距離だと二十キロメートルほどだろうか。これほど近くなのに忍びの里の存在を知らなかったとは。もしかしたら、僕の知らない場所にこういう里がたくさんあるのかも知れないな。
「ここが忍びの里だ。諜報を生業とする者たちが住まう土地だ。僕は長老と掛け合い、彼らと協力関係になることを約束したのだ。忍びの里からは僕達が欲する情報を持ってきてもらう代わりに食料を提供することになっている。ただ、食料の運び込みについては、ある程度の場所まででいいみたいだ」
忍びの里はあまり人が入り込むことを良しとはしていないようだ。そもそも、里までの道はもはや存在していない。あるにはあるのだが、存在していないことにしている。それが里の意向なのだ。そのため、食料運搬は忍びの里独自の道を通って運び込みがされるみたいで、その道は僕でも聞かされることはない。
「ほお。それほどまでに徹底して隠す必要があるんですな。しかし、情報という物が手に入りやすくなるというのは本当に素晴らしいことですな。我々の弱点である情報収集がこんな形で補完されるとは考えだにしておりませんでしたな。しかし、話は変わりますが、その里はオコトさんのように美しい方が多いのでしょうか?」
ゴードンがそんなことに興味を示すとは珍しいこともあるものだな。僕は里にいる女性たちを思い出してみた。ん? あれ? 大勢の人を見た記憶があるはずなのに、女性の記憶が出てこないぞ。オコトとクイチしか出てこない。一体、どういうことなのだ? 他に集中していたから目に入らなかったというのか?
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「気付きになられましたか。里の者たちは皆、隠密に長けた者たちなのです。ロッシュ殿と面識を持ちたい者以外は姿を見せても意識させないように訓練を受けているのです。そのため、記憶に残らないのです。今度、いらっしゃった時は、皆ロッシュ殿に警戒することはないでしょうから、それは美しい方をたくさん拝めますよ」
なんだ、聞いていたのか? しかし、末端の里の者でさえ、そのような特技を持っているとは、さすが忍びの里だ。僕もそうだが、ゴードンも驚いた様子でオコトの話しに聞き入っていた。
「いやはや、凄いところなんですな。私も是非一度行ってみたいものですな。しかし、この体ですから、ロッシュ村長と共に旅をするというのは難しいでしょうな。まぁ、私は温泉だけで我慢しますかな」
ゴードンはまだ若いのだがな。一度、無理矢理にでも連れ出してみるのも面白かも知れないな。と思ったがゴードンがいなくなれば公国の活動に影響が出かねないな。ゴードンの負担を軽くしてやれないものだろうか。
「ゴードン。済まないが、食料の手配をお願いできないだろうか。先程言った、忍びの里と温泉街向けのものだ。おそらく、どちらも我らの食料を運んでくるのを待ち望んでいるはずだ。なるべく早く運び込みをしてやってくれ」
ゴードンは快く頷いてくれた。僕はまだまだゴードンに頼らねばならないようだ。もう少し、人を増やし、それぞれに仕事を任せていかなければいけないだろう。今度、主要な者を集め、人事を刷新したいところだ。
「ゴードン。僕は公国内で部署を定め、それぞれに責任者を就けたいと考えている。人事の候補を決めておいてくれないだろうか。僕も何人か役職につけておきたいものがいる。その者たちとを併せて、一度協議をしたいと考えている。その調整をしておいてくれないだろうか」
「それは良い考えです。村だけのときと違い、今や広大な面積の領土となったのですから、役割分担を明確にし、それぞれに仕事を割り振ることは理にかなっております。なにやら、公国が新たなものに生まれ変わるような予感がしますぞ。こういう話が出ると、昔が懐かしく感じてきますな」
そうだな。なんとなくその場にいるものだけで話を進めて、やってきたということが今は難しくなってきているからな。人事が決まるまでは今しばらくかかることだろう。これでゴードンとの話は終わりだ。僕も再び北の地に向け出発の準備をしなければならないだろう。砦建設に堤防の設置が急務になる。アウーディア石の発掘は王国軍の動きを見ながら考えることにしよう。
僕とゴードンが執務室を離れ、居間で皆とくつろぐようにしようと思ったら、新たな客人が現れた。なんと、新村からやってきた船大工のテドではないか。まさか……・
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