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第151話 亜人達の処遇
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僕がクレイに指輪を渡した後、二人で居間に行くことになった。当然、クレイの左手の薬指には指輪が光り輝いているのだが、それに目敏く反応したのがエリスだった。それが皆に伝播したのか、それぞれ異なる反応をしていたが、皆、クレイに優しい言葉をかけていた。特にエリスは、これからよろしくお願いしますね、と丁寧にお辞儀までして接していたのは、見ていてほのぼのとしてくる。ひどいのは、シェラだな。自分の付けている指輪をクレイに見せつけるだけだった。クレイはどういう風に思ったのだろうか? 僕は、ただ見せつけているだけだったように思えるが。
クレイは、僕の妻であるエリス達に受け入れられることで、正式に僕の婚約者となった。結婚式などの日取りなどは全くの未定で、クレイもとりあえず、亜人一万五千人の処遇が決定するまでは考えられないということだった。僕もそれには賛成で、今日の話し合いでその方向性が確定することから、後日に相談ということにした。
クレイは遅めの朝食を取ってもらっている間に、再び街に向かうためにライルとミヤの眷族を呼び出してもらうことにした。街への同行は、クレイは当然として、ミヤとマグ姉にお願いすることにした。シェラは働いたから疲れたと言って部屋に閉じこもってしまったし、エリスとリードは身重のため、遠慮してもらうことにした。もっとも、二人は出産の準備でそれどころではないようだが。
しばらく、コーヒーを飲んだり、雑談をしたりしながら時間を潰していると、ライル達自警団とミヤの眷族が屋敷に集合した。クレイは、屋敷を出る前に武器を手にすると、今までの性格が嘘のように、自信に溢れた雰囲気が漂い、凛とした姿に変貌した。僕は驚くばかりであった。
僕達は、ラエルの街に出発することにした。ちなみに、眷族が馬に乗らないのは、単純に馬より早く移動することが出来るからである。それに本人たちも、護衛するなら馬に乗ってないほうが確実だということだ。昨夜と同様、街までの最短ルートである魔の森を抜けていくコースで行くことにした。眷族達がいるから出来る方法だ。
僕達が、街道から外れ、魔の森といっても草原なのだが、そこを通過中しているときに遠目に建物が見えた。あの辺りも魔の森の範囲内のはずだが、あんな建物があったかな? と思い、ミヤに聞くと、どうやら魔獣の飼育実験場が建設中だというのだ。もう、施設を作るまで話が進んでいたとは。帰りに寄ってみるか。
集合時間より早く到着したので、屋敷から持ってきた弁当を広げ、屋外で秋の空を眺めつつ食事を摂ることにした。ミヤもマグ姉も今回は特に仕事があるわけではないので、気楽な格好で弁当を楽しんでいた。一方でクレイの方は、今回の話し合いで全てが決まるという感じなので、食事が喉を通らないようだ。
「クレイ。緊張しているのか? 僕は、クレイの望みである亜人の人達を街の外に駐留させることに異論はない。
たしかに、クレイに対して皆の信頼はないに等しいかもしれないが、これから積み上げていけばいい話だろ? とりあえず、駐留するという話は、僕と婚約することできっとまとまるはずだ。最悪、僕が口を出してもいい」
「ロッシュ様、ありがとうございます。けれども、これについては私で解決したいのです。ロッシュ様に甘えていては、皆の信頼は得られないでしょうから。だけど、ロッシュ様が私の意見に賛成してくれたことはすごく心強いです」
「そうか。ならば、僕が口を挟むのはやめておこう。クレイなら、きっと皆の信頼を得ることは出来るさ。ゴードンが心配しているのは、結局は亜人達の統制が効かなくなることだ。それは、クレイがしっかりとやってくれるんだろ?」
「もちろんです!!」
「ならば、心配することはないだろ? エリスの作った弁当は旨いんだ。一緒に食べよう」
僕と話して、少しは緊張が解けてくれただろうか。クレイは、弁当を口にして、おいしいと呟いていた。僕がクレイと話している間に、横では、ミヤとマグ姉がうとうととお昼寝をしていた。昨晩は寝るのが遅かったからな。クレイは弁当を食べるのに夢中だ。僕も飲みかけのコーヒーを飲もうとした時に、自警団の団員が僕達を呼びにやってきた。どうやら、会議が始まるようだ。弁当を食べていたクレイの顔が一瞬で緊張した顔に戻っていた。僕は、ミヤとマグ姉を起こして、寝ぼけていたので、手を繋いで引っ張るように会場に向かった。
会場では、すでにゴードンとルドが席に座って待っていた。僕が入ってくるのを見て、二人が立とうとしていたので手で制止し、空いている席に座った。実は、今回の会議で亜人達の駐留場所について、僕は自分の意見を言うつもりだった。これは前々から考えていたことで、誰かに言うのは初めてのことだが。会議が始まり、進行役であるゴードン真っ先に口を開いた。
「ロッシュ公、亜人達の処遇についての会議を始めさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「よろしく頼む。その前に、僕から亜人達の駐留場所について意見がある。これは、クレイの婚約者として意見ではなく、イルス公国の主として意見だと考えて欲しい」
クレイは驚いた顔をしていた。それはそうだ。僕はこんなことを言い出すなんて一言も相談していなからな。この問題は、個人の感情で考えたら大きな禍根を残す恐れがある。それよりも公国の未来のために考えなければならない。クレイにとってこの問題は大きな関心事だ。そういう者に相談をすれば、あらぬ疑いを持つものが出てくるかもしれない。
クレイは、僕のことを信頼してくれているのか、何も言わずにただ僕の目をじっと見つめていた。ゴードンも僕が何か言うのをずっと待っているという様子だった。
「僕は亜人達の駐留地は、街の近くに置くべきではないと思っている。もちろん、廃村の跡地でもない。新たな土地を開拓してもらいたいと考えている。皆は知っているだろうか。ラエルの街より南に十キロメートル程の離れると海に出ることを。僕はそこに新たに村を興そうと考えている」
僕の意見にゴードンとクレイは大きな疑問を持っているようだ。今頃、新たに村を興す理由がわからないと。ゴードンは海近くは農業に適さない土地が多く、また、海には魔獣が出没するため、漁業も難しい。特に産業もないから、意味を感じないようだ。クレイは、街に少しでも近い場所に新天地を構えることには抵抗はないようだが、そのような僻地に自分たちを追いやることにすこし不安を感じているようだ。
「二人共、疑問があるようだ。まずは僕の話を聞いてからにしてもらおう。我が領内は、急激な人口増加によって、食糧不足が起こる可能性がある。もちろん、ゴードンは上手くやってくれている。しかし、備蓄はかなり失われることだろう。そのためにも、新たな食料を供給するすべを見つけなければならない。それが漁業だ」
ゴードンが僕に何かいいたそうな表情だったので、僕は手で制止した。
「ゴードンは知らないようだが、南の海に魔獣の存在はない。村近辺では確認されているが、ここまで来ると魔獣は現れない。つまり、漁業をやるのに支障はないのだ。さて、亜人達を漁業に使う理由だが、空いている労働力が彼らしかいないというものあるが、レントークの亜人達は農業が苦手のようだな。そうであれば、漁業をしてもらう方が生産的だと思ったのだ。ここまででゴードンは何か意見はあるか?」
「ロッシュ公。私も漁業を取り入れることを常に考えておりました。まさか、こんな近くに魔獣の出ない海があるとは思いもしませんでした。漁業が始まれば、食料問題はかなり楽になります」
僕はクレイにも聞くことにした。しかし、まだクレイの中で上手く処理できていないのか、言葉が出ない様子だ。
「もう少し説明が必要ということか。亜人達を使って新たな村を興すことの利点は、さっき言った通り漁業を始められることだ。当面は食料問題の解消が目的だ。それに、漁業を始めれば、亜人達の仕事を作ることが出来る。距離があることで町の住民に安心感を与えられる。そもそも、不安を与える根本は信頼関係がないことだ。しかし、漁業を通じて、公国に貢献すれば信頼関係は自然と形成される。そうすれば、亜人たちも公国内で住みやすくなるのではないか?」
クレイは、僕の言っていることに首を何度も振って頷いていた。
「私は恥ずかしいです。亜人達を街の近くに駐留することばかりを考えていて、周りのこと、亜人達の仕事、信頼の構築などを何も考えていませんでした。たとえ、街の外に駐留していたとしても、亜人達は皆からの信頼を獲得することは難しかったかもしれません。私はロッシュ様の意見に賛同します」
クレイの賛同も得ることが出来たようだ。僕はホッとしてゴードンの方を見ると、頷き返してくれた。その後は、新たな村を興す話になった。村を興すにしても、一万五千人もの仕事を作ることが出来るのかという質問がされた。
「いい質問だ。たしかに漁業で一万五千人でやるというのは少し多い気もするな。しかし、漁業をすると言っても魚を取るばかりではない。魚を取る網などの漁具も必要だ。船も必要となるだろう。取ってきた魚をそのまま町や村に運び込むのもいいが、保存食として加工することも必要となってくるだろう。それらをする人だけでもかなりの人数だ。もちろん、農業もやってもらう。塩田も作る。一つの村を作るというのは、それだけでも沢山の人が必要となるのだ。むしろ、一万五千人でも少ないくらいだ」
クレイは僕の考えを聞いて、ぽかんと口を開いて聞いていた。そんな顔をしていては美人が台無しだろうに。僕は、新たな村を漁村として作り上げていく。ゆくゆくは造船業を強化していき、遠くの海にも漁業が出来るようにしたいと考えているのだが、今は言わなくてもいいだろう。亜人達にはそのための礎を作ってもらいたいのだ。
「そうだ。クレイに頼みがある。亜人の中で、特殊な仕事が出来る者を教えてくれ。服飾や鉱山開発、林業、建築、土木などが出来る人材が欲しいのだ。公国ではすでにそれらの仕事をしているものがいるから、一度はその者達の下についてもらうことになるが、どんどん仕事を任せていくつもりだ。どうだろうか?」
僕がそういう事を頼むのは、亜人達が劣悪な境遇を経験しているからだ。自分の特技を見せたら、ずっと搾取されるような環境下だと、名乗り出ないのではないかと思ったからだ。
「もちろん。ロッシュ様の願いとあれば、なんなりと。我が国は林業が盛んでしたから期待をしていただいてもいいと思います。他にも鉱山や土木も。器用さを求められるものは難しいですね。とにかく、将来の待遇が良いのであれば誰も不満を持つことはないと思います。ロッシュ様の配慮には感謝しかありません」
これで話はだいたい終わっただろう。この漁村の開発はすぐにでも行われる必要がある。それは冬の到来が近いからだ。まぁ、皆が一丸となれば、なんとかなるだろう。すぐに、クレイの付き人のドゥアを呼び出し、事の顛末を説明し、ドゥアをクレイの代わりに亜人達のまとめ役を任せ、新村開発の責任者とした。クレイにも開発に参加してもらうが、常にいるわけではないので、責任者を置いたほうがいいだろうという判断だ。作業は次の日からということで、僕はルドとゴードンを残して、解散とした。
僕は、ルドとこの戦で捕まえた参謀についての処遇について相談するつもりだ。
クレイは、僕の妻であるエリス達に受け入れられることで、正式に僕の婚約者となった。結婚式などの日取りなどは全くの未定で、クレイもとりあえず、亜人一万五千人の処遇が決定するまでは考えられないということだった。僕もそれには賛成で、今日の話し合いでその方向性が確定することから、後日に相談ということにした。
クレイは遅めの朝食を取ってもらっている間に、再び街に向かうためにライルとミヤの眷族を呼び出してもらうことにした。街への同行は、クレイは当然として、ミヤとマグ姉にお願いすることにした。シェラは働いたから疲れたと言って部屋に閉じこもってしまったし、エリスとリードは身重のため、遠慮してもらうことにした。もっとも、二人は出産の準備でそれどころではないようだが。
しばらく、コーヒーを飲んだり、雑談をしたりしながら時間を潰していると、ライル達自警団とミヤの眷族が屋敷に集合した。クレイは、屋敷を出る前に武器を手にすると、今までの性格が嘘のように、自信に溢れた雰囲気が漂い、凛とした姿に変貌した。僕は驚くばかりであった。
僕達は、ラエルの街に出発することにした。ちなみに、眷族が馬に乗らないのは、単純に馬より早く移動することが出来るからである。それに本人たちも、護衛するなら馬に乗ってないほうが確実だということだ。昨夜と同様、街までの最短ルートである魔の森を抜けていくコースで行くことにした。眷族達がいるから出来る方法だ。
僕達が、街道から外れ、魔の森といっても草原なのだが、そこを通過中しているときに遠目に建物が見えた。あの辺りも魔の森の範囲内のはずだが、あんな建物があったかな? と思い、ミヤに聞くと、どうやら魔獣の飼育実験場が建設中だというのだ。もう、施設を作るまで話が進んでいたとは。帰りに寄ってみるか。
集合時間より早く到着したので、屋敷から持ってきた弁当を広げ、屋外で秋の空を眺めつつ食事を摂ることにした。ミヤもマグ姉も今回は特に仕事があるわけではないので、気楽な格好で弁当を楽しんでいた。一方でクレイの方は、今回の話し合いで全てが決まるという感じなので、食事が喉を通らないようだ。
「クレイ。緊張しているのか? 僕は、クレイの望みである亜人の人達を街の外に駐留させることに異論はない。
たしかに、クレイに対して皆の信頼はないに等しいかもしれないが、これから積み上げていけばいい話だろ? とりあえず、駐留するという話は、僕と婚約することできっとまとまるはずだ。最悪、僕が口を出してもいい」
「ロッシュ様、ありがとうございます。けれども、これについては私で解決したいのです。ロッシュ様に甘えていては、皆の信頼は得られないでしょうから。だけど、ロッシュ様が私の意見に賛成してくれたことはすごく心強いです」
「そうか。ならば、僕が口を挟むのはやめておこう。クレイなら、きっと皆の信頼を得ることは出来るさ。ゴードンが心配しているのは、結局は亜人達の統制が効かなくなることだ。それは、クレイがしっかりとやってくれるんだろ?」
「もちろんです!!」
「ならば、心配することはないだろ? エリスの作った弁当は旨いんだ。一緒に食べよう」
僕と話して、少しは緊張が解けてくれただろうか。クレイは、弁当を口にして、おいしいと呟いていた。僕がクレイと話している間に、横では、ミヤとマグ姉がうとうととお昼寝をしていた。昨晩は寝るのが遅かったからな。クレイは弁当を食べるのに夢中だ。僕も飲みかけのコーヒーを飲もうとした時に、自警団の団員が僕達を呼びにやってきた。どうやら、会議が始まるようだ。弁当を食べていたクレイの顔が一瞬で緊張した顔に戻っていた。僕は、ミヤとマグ姉を起こして、寝ぼけていたので、手を繋いで引っ張るように会場に向かった。
会場では、すでにゴードンとルドが席に座って待っていた。僕が入ってくるのを見て、二人が立とうとしていたので手で制止し、空いている席に座った。実は、今回の会議で亜人達の駐留場所について、僕は自分の意見を言うつもりだった。これは前々から考えていたことで、誰かに言うのは初めてのことだが。会議が始まり、進行役であるゴードン真っ先に口を開いた。
「ロッシュ公、亜人達の処遇についての会議を始めさせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「よろしく頼む。その前に、僕から亜人達の駐留場所について意見がある。これは、クレイの婚約者として意見ではなく、イルス公国の主として意見だと考えて欲しい」
クレイは驚いた顔をしていた。それはそうだ。僕はこんなことを言い出すなんて一言も相談していなからな。この問題は、個人の感情で考えたら大きな禍根を残す恐れがある。それよりも公国の未来のために考えなければならない。クレイにとってこの問題は大きな関心事だ。そういう者に相談をすれば、あらぬ疑いを持つものが出てくるかもしれない。
クレイは、僕のことを信頼してくれているのか、何も言わずにただ僕の目をじっと見つめていた。ゴードンも僕が何か言うのをずっと待っているという様子だった。
「僕は亜人達の駐留地は、街の近くに置くべきではないと思っている。もちろん、廃村の跡地でもない。新たな土地を開拓してもらいたいと考えている。皆は知っているだろうか。ラエルの街より南に十キロメートル程の離れると海に出ることを。僕はそこに新たに村を興そうと考えている」
僕の意見にゴードンとクレイは大きな疑問を持っているようだ。今頃、新たに村を興す理由がわからないと。ゴードンは海近くは農業に適さない土地が多く、また、海には魔獣が出没するため、漁業も難しい。特に産業もないから、意味を感じないようだ。クレイは、街に少しでも近い場所に新天地を構えることには抵抗はないようだが、そのような僻地に自分たちを追いやることにすこし不安を感じているようだ。
「二人共、疑問があるようだ。まずは僕の話を聞いてからにしてもらおう。我が領内は、急激な人口増加によって、食糧不足が起こる可能性がある。もちろん、ゴードンは上手くやってくれている。しかし、備蓄はかなり失われることだろう。そのためにも、新たな食料を供給するすべを見つけなければならない。それが漁業だ」
ゴードンが僕に何かいいたそうな表情だったので、僕は手で制止した。
「ゴードンは知らないようだが、南の海に魔獣の存在はない。村近辺では確認されているが、ここまで来ると魔獣は現れない。つまり、漁業をやるのに支障はないのだ。さて、亜人達を漁業に使う理由だが、空いている労働力が彼らしかいないというものあるが、レントークの亜人達は農業が苦手のようだな。そうであれば、漁業をしてもらう方が生産的だと思ったのだ。ここまででゴードンは何か意見はあるか?」
「ロッシュ公。私も漁業を取り入れることを常に考えておりました。まさか、こんな近くに魔獣の出ない海があるとは思いもしませんでした。漁業が始まれば、食料問題はかなり楽になります」
僕はクレイにも聞くことにした。しかし、まだクレイの中で上手く処理できていないのか、言葉が出ない様子だ。
「もう少し説明が必要ということか。亜人達を使って新たな村を興すことの利点は、さっき言った通り漁業を始められることだ。当面は食料問題の解消が目的だ。それに、漁業を始めれば、亜人達の仕事を作ることが出来る。距離があることで町の住民に安心感を与えられる。そもそも、不安を与える根本は信頼関係がないことだ。しかし、漁業を通じて、公国に貢献すれば信頼関係は自然と形成される。そうすれば、亜人たちも公国内で住みやすくなるのではないか?」
クレイは、僕の言っていることに首を何度も振って頷いていた。
「私は恥ずかしいです。亜人達を街の近くに駐留することばかりを考えていて、周りのこと、亜人達の仕事、信頼の構築などを何も考えていませんでした。たとえ、街の外に駐留していたとしても、亜人達は皆からの信頼を獲得することは難しかったかもしれません。私はロッシュ様の意見に賛同します」
クレイの賛同も得ることが出来たようだ。僕はホッとしてゴードンの方を見ると、頷き返してくれた。その後は、新たな村を興す話になった。村を興すにしても、一万五千人もの仕事を作ることが出来るのかという質問がされた。
「いい質問だ。たしかに漁業で一万五千人でやるというのは少し多い気もするな。しかし、漁業をすると言っても魚を取るばかりではない。魚を取る網などの漁具も必要だ。船も必要となるだろう。取ってきた魚をそのまま町や村に運び込むのもいいが、保存食として加工することも必要となってくるだろう。それらをする人だけでもかなりの人数だ。もちろん、農業もやってもらう。塩田も作る。一つの村を作るというのは、それだけでも沢山の人が必要となるのだ。むしろ、一万五千人でも少ないくらいだ」
クレイは僕の考えを聞いて、ぽかんと口を開いて聞いていた。そんな顔をしていては美人が台無しだろうに。僕は、新たな村を漁村として作り上げていく。ゆくゆくは造船業を強化していき、遠くの海にも漁業が出来るようにしたいと考えているのだが、今は言わなくてもいいだろう。亜人達にはそのための礎を作ってもらいたいのだ。
「そうだ。クレイに頼みがある。亜人の中で、特殊な仕事が出来る者を教えてくれ。服飾や鉱山開発、林業、建築、土木などが出来る人材が欲しいのだ。公国ではすでにそれらの仕事をしているものがいるから、一度はその者達の下についてもらうことになるが、どんどん仕事を任せていくつもりだ。どうだろうか?」
僕がそういう事を頼むのは、亜人達が劣悪な境遇を経験しているからだ。自分の特技を見せたら、ずっと搾取されるような環境下だと、名乗り出ないのではないかと思ったからだ。
「もちろん。ロッシュ様の願いとあれば、なんなりと。我が国は林業が盛んでしたから期待をしていただいてもいいと思います。他にも鉱山や土木も。器用さを求められるものは難しいですね。とにかく、将来の待遇が良いのであれば誰も不満を持つことはないと思います。ロッシュ様の配慮には感謝しかありません」
これで話はだいたい終わっただろう。この漁村の開発はすぐにでも行われる必要がある。それは冬の到来が近いからだ。まぁ、皆が一丸となれば、なんとかなるだろう。すぐに、クレイの付き人のドゥアを呼び出し、事の顛末を説明し、ドゥアをクレイの代わりに亜人達のまとめ役を任せ、新村開発の責任者とした。クレイにも開発に参加してもらうが、常にいるわけではないので、責任者を置いたほうがいいだろうという判断だ。作業は次の日からということで、僕はルドとゴードンを残して、解散とした。
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