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第105話 ジャガイモの収穫と街道監視計画 前半
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麦の収穫や大豆などの種まきが終わり、夏の訪れを感じ始めた頃、春ジャガイモの収穫の季節となった。去年より大幅に面積を拡大して栽培したこともあって、大量の収穫をすることができた。来年の種芋として残しておく物を差し引いても、各家庭で十分に食べることが出来る量を確保することが出来た。まだ、ジャガイモの備蓄が出来るほどではないが、来年からは備蓄出来るだろう。秋ジャガイモの定植もそろそろ始まるので、品種改良で秋ジャガイモの確保をしておかなければならない。
魔牛由来の肥料は春に使えなかったが、秋ジャガイモからは使うことが出来る。それに、春用は今回の収穫分から回ることになっているので、栽培時期にポイントを使う必要がなくなり、品質向上に全振りできるようになるのだ。肥料分のポイント加算も期待できるので、品種改良が楽しみである。
少しのんびりと過ごす時期が続いた。いつものように朝食を摂っていると、エリスがエルフが来訪したことを告げにやってきた。盗賊たちをエルフの里に送ってからまだいくらも時間が経っていない。もしかして、何か、忘れ物でもあったのかなと思っていたら、悪い知らせをもたらしてきた。盗賊たちの一人がエルフの里に入る前に脱走したのだと言う。その男には、リリの秘術がかかっていなかったみたいで、男の逃げた跡には壊れた腕輪のようなものが落ちており、それがリリの秘術を防いだのではないかという。エルフたちが追跡をしたが、発見が出来なかったそうだ。
そのような道具があるのかとふと思って、スタシャにでも相談してみようかな。なんて、僕は事の重大性から現実逃避をしてしまった。あいつらは一人でも逃がすと村にとって非常にまずい。僕が心配そうな顔をしていると、エルフがそれは大丈夫なのでは、と言ってきた。理由を聞いてみると、魔の森から抜け出すのは難しく、その上食料も持ってないので誰かと接触できるまで生き延びることは出来ないのではないかと言う。確かに、魔の森を抜け出すのは簡単なことではない。僕も何度も魔の森を経験しているので、人間が立ち入っていい場所ではないと痛感している。
エルフの言うことはもっともだし、おそらくそうなのだろうが……万が一ということもある。エルフの言うことには頷きつつ、フィルカウス教という異常な団体がこの村に手を伸ばしてくることを考えることにした。
「リリには、気にしないように伝えておいてくれ。嫌な報告だったが、伝えてもらって助かった」
エルフはそのまま屋敷を後にした。僕は、ライル、ゴードンとルドをすぐに呼び出すことにした。ミヤも加え、皆が集まり、誰にも聞かれないように執務室で話をすることにした。何の話をするのかを全く伝えていなかったので、皆、怪訝な顔をして執務室に入ってきた。
「ロッシュ村長。どうなさったのですか? このような雰囲気は初めてなもので、すこし不安を感じるのですが」
ライルとルドも一様に緊張した面持ちだ。ミヤだけは、トマトジュースを飲んで寛いでいた。相変わらずだな。僕は、エルフが訪ねてきて盗賊の一人が脱走したことを告げ、今後の対策について相談することを告げると、少し緊張感が和らいだ。皆、エルフの言っていたことを支持しているようだ。
「村長さん。そのエルフの言うとおりだぜ。あの魔の森を抜け出せるわけがねぇ。前のことを忘れたわけではないだろ? 自警団で行った時、死にそうになった経験を。あの森で生き残るなんて無理だぜ」
ルドもライルの意見に同意しているようだった。ミヤだけは、我関せずでいた。僕も、どちらかといえば皆の意見に賛成だ。しかし、話を聞いてる範囲では、教団の存在は脅威となりうる。今まで油断で皆を危険に晒させたことがあったことを考えると、万全の態勢だけは整えておくべきだと思う。
「皆の意見はもっともだ。だが、防備だけはしっかりとしておきたいと思っている。幸い、この村は魔の森と山に囲まれた土地にある。この村に軍を侵攻しようと思えば、必ずラエルの街から伸びる街道を通過しなければならない。その街道に壁を設けようと思うんだ。それだけではなく、兵器、武器や防具の研究を進めていくべきだと思う。そのためにも、必要なものについて意見を聞きたいのだ」
そういうと、皆は一様に真剣な顔に戻り、考えるような仕草を取り始めた。真っ先にゴードンが話し始めた。
「私から言えるのは、人材、食料と資材のことについてだけですが、問題は人材面の確保と資材の調達があると思われます。現在、鍛冶はカーゴと内弟子に任せてありますが、研究を加えると足りなくなると思われます。その確保をしたほうが良いでしょう。資材については、鉄以外の資材が不足気味です。特にレンガと木材が不足すると思います。木材に関しては、製材所のモスコさんが量産体制を構築しているので問題は解消されるでしょう。レンガだけは現状、ロッシュ村長の魔法に依存しているので、安定的に供給するためにも新たにレンガを製造する工房を立ち上げる必要性が出ると思います」
ふむ。さすがはゴードンだ。僕が考えが及ばないところに気付いてくれる。金属類は、鉄の採掘場で手に入れるとして、レンガか。当初からレンガ工房を立ち上げようとしていたが、なんとか手持ちのレンガだけで回していたところ、最近になって人口が急増したことでレンガが不足気味になってしまったのだ。早速、工房の手配をしよう。今ならば、工房の建設は然程難しいことではないだろう。次いで、ライルが話し始めた。
「オレから言えるのは、自警団の装備の一新が必要だな。今使っているのは、短剣と簡単な防具のみだ。村長さんが想定している戦争のようなことだったら、長剣や弓、鎧が必要となってくるな。馬もどこかで調達する必要があるな。できれば、魔の森から馬のような魔獣を従えるのが理想だが。後は、物見櫓の設置と等間隔に鐘を設置したほうがいいな。敵が現れても対応を少しでも早くすることが出来る。あとは、調査隊を結成するべきだろう。オレ達の持っている情報は少なすぎる。この数年でも随分と様子が変わっているだろう。そのなんとか教団の動向を探るためにも調査隊を派遣すべきだ」
さすがはライルだ。実務的な判断だ。調査隊は是非にも結成しておきたいと思っていたところだ。フィルカウス教団だけではなく、新規住民の勧誘や農作物の種、技術の取得など様々なことをすることが出来る。最近は、この村だけでは限界を感じ始めていたので、村を今以上に発展させるためには外から様々なものを取得していくしかない。ルドからも意見が出てきた。
「調査隊を結成するなら、私の部下だった者を使ってくれないだろうか。彼らは戦争も経験して、場数を多く踏んでいる。周辺の地理感もこの村では多いほうだろう。それに、なによりも彼らがそれを望むだろう。彼らはこの村に助けられたと思っている。その恩を少しでも返したいと感じているだろう。頼む」
そう言って、ルドが僕に頭を下げてくる。ライルの方を見ると頷いていたので、ルドの意見は受け入れてもいいだろう。
「ただ、条件を付けさせてもらうが……」
魔牛由来の肥料は春に使えなかったが、秋ジャガイモからは使うことが出来る。それに、春用は今回の収穫分から回ることになっているので、栽培時期にポイントを使う必要がなくなり、品質向上に全振りできるようになるのだ。肥料分のポイント加算も期待できるので、品種改良が楽しみである。
少しのんびりと過ごす時期が続いた。いつものように朝食を摂っていると、エリスがエルフが来訪したことを告げにやってきた。盗賊たちをエルフの里に送ってからまだいくらも時間が経っていない。もしかして、何か、忘れ物でもあったのかなと思っていたら、悪い知らせをもたらしてきた。盗賊たちの一人がエルフの里に入る前に脱走したのだと言う。その男には、リリの秘術がかかっていなかったみたいで、男の逃げた跡には壊れた腕輪のようなものが落ちており、それがリリの秘術を防いだのではないかという。エルフたちが追跡をしたが、発見が出来なかったそうだ。
そのような道具があるのかとふと思って、スタシャにでも相談してみようかな。なんて、僕は事の重大性から現実逃避をしてしまった。あいつらは一人でも逃がすと村にとって非常にまずい。僕が心配そうな顔をしていると、エルフがそれは大丈夫なのでは、と言ってきた。理由を聞いてみると、魔の森から抜け出すのは難しく、その上食料も持ってないので誰かと接触できるまで生き延びることは出来ないのではないかと言う。確かに、魔の森を抜け出すのは簡単なことではない。僕も何度も魔の森を経験しているので、人間が立ち入っていい場所ではないと痛感している。
エルフの言うことはもっともだし、おそらくそうなのだろうが……万が一ということもある。エルフの言うことには頷きつつ、フィルカウス教という異常な団体がこの村に手を伸ばしてくることを考えることにした。
「リリには、気にしないように伝えておいてくれ。嫌な報告だったが、伝えてもらって助かった」
エルフはそのまま屋敷を後にした。僕は、ライル、ゴードンとルドをすぐに呼び出すことにした。ミヤも加え、皆が集まり、誰にも聞かれないように執務室で話をすることにした。何の話をするのかを全く伝えていなかったので、皆、怪訝な顔をして執務室に入ってきた。
「ロッシュ村長。どうなさったのですか? このような雰囲気は初めてなもので、すこし不安を感じるのですが」
ライルとルドも一様に緊張した面持ちだ。ミヤだけは、トマトジュースを飲んで寛いでいた。相変わらずだな。僕は、エルフが訪ねてきて盗賊の一人が脱走したことを告げ、今後の対策について相談することを告げると、少し緊張感が和らいだ。皆、エルフの言っていたことを支持しているようだ。
「村長さん。そのエルフの言うとおりだぜ。あの魔の森を抜け出せるわけがねぇ。前のことを忘れたわけではないだろ? 自警団で行った時、死にそうになった経験を。あの森で生き残るなんて無理だぜ」
ルドもライルの意見に同意しているようだった。ミヤだけは、我関せずでいた。僕も、どちらかといえば皆の意見に賛成だ。しかし、話を聞いてる範囲では、教団の存在は脅威となりうる。今まで油断で皆を危険に晒させたことがあったことを考えると、万全の態勢だけは整えておくべきだと思う。
「皆の意見はもっともだ。だが、防備だけはしっかりとしておきたいと思っている。幸い、この村は魔の森と山に囲まれた土地にある。この村に軍を侵攻しようと思えば、必ずラエルの街から伸びる街道を通過しなければならない。その街道に壁を設けようと思うんだ。それだけではなく、兵器、武器や防具の研究を進めていくべきだと思う。そのためにも、必要なものについて意見を聞きたいのだ」
そういうと、皆は一様に真剣な顔に戻り、考えるような仕草を取り始めた。真っ先にゴードンが話し始めた。
「私から言えるのは、人材、食料と資材のことについてだけですが、問題は人材面の確保と資材の調達があると思われます。現在、鍛冶はカーゴと内弟子に任せてありますが、研究を加えると足りなくなると思われます。その確保をしたほうが良いでしょう。資材については、鉄以外の資材が不足気味です。特にレンガと木材が不足すると思います。木材に関しては、製材所のモスコさんが量産体制を構築しているので問題は解消されるでしょう。レンガだけは現状、ロッシュ村長の魔法に依存しているので、安定的に供給するためにも新たにレンガを製造する工房を立ち上げる必要性が出ると思います」
ふむ。さすがはゴードンだ。僕が考えが及ばないところに気付いてくれる。金属類は、鉄の採掘場で手に入れるとして、レンガか。当初からレンガ工房を立ち上げようとしていたが、なんとか手持ちのレンガだけで回していたところ、最近になって人口が急増したことでレンガが不足気味になってしまったのだ。早速、工房の手配をしよう。今ならば、工房の建設は然程難しいことではないだろう。次いで、ライルが話し始めた。
「オレから言えるのは、自警団の装備の一新が必要だな。今使っているのは、短剣と簡単な防具のみだ。村長さんが想定している戦争のようなことだったら、長剣や弓、鎧が必要となってくるな。馬もどこかで調達する必要があるな。できれば、魔の森から馬のような魔獣を従えるのが理想だが。後は、物見櫓の設置と等間隔に鐘を設置したほうがいいな。敵が現れても対応を少しでも早くすることが出来る。あとは、調査隊を結成するべきだろう。オレ達の持っている情報は少なすぎる。この数年でも随分と様子が変わっているだろう。そのなんとか教団の動向を探るためにも調査隊を派遣すべきだ」
さすがはライルだ。実務的な判断だ。調査隊は是非にも結成しておきたいと思っていたところだ。フィルカウス教団だけではなく、新規住民の勧誘や農作物の種、技術の取得など様々なことをすることが出来る。最近は、この村だけでは限界を感じ始めていたので、村を今以上に発展させるためには外から様々なものを取得していくしかない。ルドからも意見が出てきた。
「調査隊を結成するなら、私の部下だった者を使ってくれないだろうか。彼らは戦争も経験して、場数を多く踏んでいる。周辺の地理感もこの村では多いほうだろう。それに、なによりも彼らがそれを望むだろう。彼らはこの村に助けられたと思っている。その恩を少しでも返したいと感じているだろう。頼む」
そう言って、ルドが僕に頭を下げてくる。ライルの方を見ると頷いていたので、ルドの意見は受け入れてもいいだろう。
「ただ、条件を付けさせてもらうが……」
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