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第101話 成人式③

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 成人式当日となった。少し暑さが増してきたが、まだまだ過ごしやすい時期だ。今年の成人となる者は、僕を入れて五人だ。皆、素敵な衣装を身にまとい、誇らしげな表情をしていた。実際、色綿糸の品質は高く、快適な着心地……そうだ。僕は、その色綿糸の服を着ていない。同じ衣装で統一してほしいと頼んだが、時間がなかったため用意できなかったのだ。仕方なかったのだが、魔力糸で作られたカリスマ+ 特性付きの衣装を着るしかなかった。七色に輝き、目立つことこの上ない。特性のせいで、半端ない注目を集め、これ以上のないモテ期が到来したかのようだった。その上、上級の特性のため、魔力消費が半端ないのだ。服を着ているだけでみるみる魔力が吸われていく。精々二時間が限度だろう。式典が終わったら、すぐに脱がなければ気絶してしまうだろう。

 成人式会場は、中央広場に設けられており、すでに料理や酒が大量に持ち込まれていた。僕達成人組は、村を練り歩き、村人から喝采を浴びながら、広場に向かっていく。この日は、農作業のほとんどが休みとなっているので、村人はほぼ全員が成人式に参加することになっている。僕以外の成人組は、人前にいることに慣れていないせいか、緊張して下を向いていることが多かったが、徐々に歓声に興奮してきたのか、手を振ったり、ちょっとしたステップを踏んだりして、場を盛り上げていた。

 会場に着くと、巨石前に舞台が設置されていた。僕達は、まず巨石の前に並び、祈りを捧げた。これは、村の行事では欠かさず行われるようになった儀式だ。祈りが終わった後、僕は、ちらりと父上の墓の方に目をやり心の中で成人となったことを報告した。

 僕達は、舞台に上がり用意されていた椅子に腰掛けると、ゴードンの息子のゴーダが司会進行を始めた。まずは僕の挨拶からのようだ。

 「本日、成人した諸君、おめでとう。そして、僕もおめでとう。……」

 僕は、成人組と僕自身を祝い、なんだか変な感じの挨拶になってしまった。こういうのは、ゴードンあたりが話せば良いんじゃないかな? あ、ゴードンも挨拶するのね。ちょっと、ゴードンが感極まって泣いてしまったが、良い挨拶だった。成人組はもらい泣きをしていた。僕は、今日のために新調したと思われるゴードンの服が気になって、話が頭に入ってこなかった。

 そこからは、村人会議の構成員が舞台に上がり、贈呈品である金の鎌を成人組各々に贈呈していった。みんな、驚いていたが、喜んでもらえてそうで良かった。村人たちもざわざわして金の鎌が気になっているようだ。これは成功だったようだな。次に魔牛が広場に行進して入ってきた。たくさんの吸血鬼と魔牛に少し村人が恐れを感じるような場面もあったが、魔牛たちの行進は圧巻で、みんな、食い入るように見ていた。最後に、 『祝・成人式』 の文字を描くと、大喝采が上がった。さすがに魔牛には近づかないが、遠巻きながら、吸血鬼達を褒め称えていた。吸血鬼達も嬉しそうにしていた。

 最後の催しとして、『成人の誓い』が出されることになった。成人組各々の前に赤く煮えたスープが置かれた。各々は、自分の作った道具、または栽培した作物が使われているのを見て、喜んだり、泣いたりと各々様々な反応をしていたが、総じて喜んでいるようだった。ゴーダが、この儀式の説明をし、各々が村人の前で誓いを大声でいい、スープを飲み干すというのが行われた。

 僕は、村の繁栄と食料増産を誓い、スープを飲んだ。辛さがかなり和らぎ、ちょうどよい感じになっている。米や細かく刻んだ葉物がスルスルと喉に入り、旨味を引き立ててくれる。さすがは、ラーナだ。この短い時間でよく仕上げてくれたものだ。体が熱くなり、服も輝きが増しているようだ。その瞬間、歓声があがった。カリスマ+ はすごい効果だな。

 他の成人組も大声で誓いを立てて、スープを飲み干そうとしていた。しかし、村では辛いものを食べる習慣がなく、辛さへの免疫がない。そのため、この程度の辛さでも、火を吹くような辛さに感じるようで、飲み干すのに必死になっていた。なんとか、汗を大量にかきながらも、皆飲み干すことに成功していた。村人からは大きな拍手が送られ、皆は誇らしげな表情となっていた。

 これで儀式は終わり、食事と酒の時間となった。村人は待ってましたとばかりに、山盛りになった料理に群がり食べ始めていた。酒組も樽の前に並び、コップに満ち満ちと注いでもらい、飲み始めた。こうやって祭りをする度に料理に変化が加えられ、酒もますます旨くなっている。村人たちは満足げな表情で楽しんでいた。料理には当然、 『成人の誓い』 もあり、挑戦者が後を絶たなかった。最終的には、ご飯を大量に投入して、辛さを和らげるという方法が編み出され、新たな米料理と認定された。

 村人に食事と酒が一通り回った頃、マグ姉、エリス、ミヤとリードの四人が僕のところにやってきた。僕は、彼女らがどうしてきたかを薄々察した。このように村人が一同に集まる機会など滅多にないことだ。この場で彼女らと婚約したことを報告するのがいいだろう。僕は、彼女らを連れて舞台に上がった。

 舞台に上がった僕達を村人が発見して、注目を一気に集めた。これもカリスマ+ の力かな。僕は、舞台の前の方に向かい、彼女らは僕の後ろに横一列で並んだ。並び順は、エリス、ミヤ、マグ姉、リードだ。この順番は特に意味はないが、彼女らの中では、僕に出会った順になっているらしい。

 「皆のもの、楽しんでいるだろうか。この場を借りて、皆に伝えたいことがある。僕の言葉に少し耳を傾けて欲しい」

 そういうと、村人は手を止め、舞台の方に集まってきてくれた。僕は、皆が集まってくるのを待ち、静かになるのを待った。ようやく静かになったので、僕が話の続きを話そうとした時、自警団の一人が人をかき分け、舞台に上がり、僕に耳打ちをしてきた。僕は、その言葉に驚いてしまい、団員に確認を取ったほどだ。

 かなりの数の盗賊が現れたと……
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