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第82話 三年目の新年会③
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屋敷に着くと、飾り付けや料理の何品かは出来上がっていた。僕達が遅れた理由を説明すると、エリスは安心してくれた。少し心配をかけていたようだ。すぐに温かい飲み物を用意してくれた。体がじんわりと暖かくなった。あとは、料理を仕上げるだけだからと言って、居間で待つことにした。
居間には、マグ姉とマリーヌがソファに座って、仲良さげに会話をしていた。僕とルドが居間に入ると、少し時間が止まったような感じがした。僕は、マリーヌを前にしてルドの様子が気になって仕方がなかった。笑顔だったマリーヌも何故か緊張した面持ちに変わっていった。マグ姉、なにかマリーヌに吹き込んだな。
僕は、マグ姉を部屋の隅に呼び出し、どういうことか説明をしてもらった。冗談のようなことを言うと思っていたが、結構真面目な表情をしていたので、僕も真剣に聞くことにした。
「マリーヌ、ずっと引き篭もっているでしょ。あれね、実は、男性恐怖症が原因なの。あの事件以降、ああなってしまってみたいで……私はなんとかマリーヌを外に連れ出そうとしたけど、ダメだったの。だけど、今回、外に出ようとしていたでしょ? もしかしたら、マリーヌに何か心境の変化があったのかしらと思って聞いたら、お風呂に入ってスッキリしたって……私の今までの苦労を返してって思ったわ」
あれ? 僕は男として見られてないってことかな?
「ロッシュは、会った時子供だったでしょ? 一応、それで大丈夫だったみたい。それでも、最近、あなた男らしくなってきたじゃない? それには少し戸惑いみたいのはあったみたいなの。ロッシュが普通に接してくれるから、恐怖は感じなかったみたいだけど」
まぁ、とりあえず男として見られ始めていたってことで納得しよう。でも、大事なことを聞かなけれならない。
「マリーヌにはね、ルドベックが気があるかもしれないってことは伝えたわ。ルドベックは、顔もいいし、女性にも優しい性格をしているわ。マリーヌの男性恐怖症を克服するために、ルドベックの気持ちを利用させてもらったの。もちろん、彼ならなんとかしてくれるかもしれないと思ってね」
そういうことだったのか。と言うことは、お互いにすでに意識しあっているということか。この状況はすごく重要な場面ではないか? ふと、ルドとマリーヌを見ると、対面しているものの、目もあわせずにコーヒーばかりすすっているじゃないか……頑張れ、ルド。
「ところで、マリーヌはルドに脈はありそうなのか?」
「そうね……半々かしら。悪くは思っていないと思うけど、恐怖心がどう影響するか、まだ分からないわ」
ルド……難しい恋愛になりそうだな。
僕とマグ姉は、ソファに戻り、楽しい話をしようと必死に頑張ったが、なかなかうまくいかなかった。会話に窮したルドが、手に持ったコーヒーのことを賞賛しだしたら、雰囲気がガラリと変わった。マリーヌが、コーヒーを褒められたものだから気分を良くして、コーヒー談義に花が咲いた。マリーヌの独壇場となったが、少しは、ルドとマリーヌの距離が近付いた気がする。そうこうしている内に、リードが料理の支度が整ったので、食堂に集まるように伝えに来た。話が中断となって、マリーヌが少し残念そうな顔をしていた。そんな彼女にルドは、コーヒーの話を聞き出そうと、色々と質問しては、マリーヌと会話を楽しんでいた。
全員が食堂に集まった。改めて、皆の前でリードを紹介し、リードが挨拶をした。そこから宴が始まった。ルドはしっかりとマリーヌの隣りに座り、先程からコーヒーの話ばかりをしていた。飽きないのかな? と思っていたが、マリーヌの表情はますます生き生きとしていたから杞憂だったみたいだ。完全に二人の世界に入っていたので、二人を除き、エリスの料理に舌鼓を打ちながら、初めての酒を口にした。
……これが、この村の酒か。酒が喉を通ると灼けるような感覚に襲われ、腹に収まってからもじんわりと暖かくなる。香りが強く、口に含んだ時、鼻から一気に抜けていく。これは、旨いな。とても短い熟成でこれほどの味が出るとは……改めて異世界に来たのだと実感した。
僕が飲み始めた頃に、ミヤが戻ってきた。大人一人分の重さはありそうな樽を軽々と抱えて、食堂に入ってきた。
「遅くなったわね。なかなか気にいる味が無かったものだから試飲に時間がかかったわ。この樽が、村で一番美味しい魔酒のはずよ」
そういうミヤは、すこし酔っている様子だったが、まだまだ足取りは確かだし、大丈夫そうだった。ミヤは、樽を割り、大きな盃になみなみと魔酒を注ぐと、勢い良く飲み始めた。ミヤの喉がこくこくと動く度に、頬が赤く染まってゆく。その様が妙に美しく、僕はミヤが飲み干すまで見惚れてしまった。
ミヤは、そんなことはお構いなしに、次々と盃を空にしていった。皆も、ミヤに引っ張られるように、飲むペースが早くなっていき、強かに酔い始めていた。酒に酔うと、態度もそれぞれ変わって面白い。
エリスは、酔い始めると僕に身を寄せるように甘えてくる。冷静なリードが、エリスを窘めるが、その度に頬を膨らませて拗ねている。マグ姉は、話に参加もせずに黙々と飲んでいた。顔色も変えずに、ミヤと同じペースで飲んでいたから、相当な酒豪なのだろう。マリーヌは、絡み酒のようになっており、普段のストレスをルドにぶつけていた。ルドは、マリーヌと話せてすごく幸せそうだった。
僕はというと、恥ずかしながら欲情してしまっていた。美しい女性に囲まれて、体がようやく精神に追いつき始め、酒で感情のタガが外れてしまったからだ。エリスの胸が僕に当たる度に、必死に冷静になるように耐えていた。しかし、我慢が出来なかったので、外で体を冷やしに行った。雪が降る外で、長い時間いたおかげで、酔いから大分覚め、興奮も幾分落ち着いてきた。これなら、戻っても大丈夫だろう。
居間には、マグ姉とマリーヌがソファに座って、仲良さげに会話をしていた。僕とルドが居間に入ると、少し時間が止まったような感じがした。僕は、マリーヌを前にしてルドの様子が気になって仕方がなかった。笑顔だったマリーヌも何故か緊張した面持ちに変わっていった。マグ姉、なにかマリーヌに吹き込んだな。
僕は、マグ姉を部屋の隅に呼び出し、どういうことか説明をしてもらった。冗談のようなことを言うと思っていたが、結構真面目な表情をしていたので、僕も真剣に聞くことにした。
「マリーヌ、ずっと引き篭もっているでしょ。あれね、実は、男性恐怖症が原因なの。あの事件以降、ああなってしまってみたいで……私はなんとかマリーヌを外に連れ出そうとしたけど、ダメだったの。だけど、今回、外に出ようとしていたでしょ? もしかしたら、マリーヌに何か心境の変化があったのかしらと思って聞いたら、お風呂に入ってスッキリしたって……私の今までの苦労を返してって思ったわ」
あれ? 僕は男として見られてないってことかな?
「ロッシュは、会った時子供だったでしょ? 一応、それで大丈夫だったみたい。それでも、最近、あなた男らしくなってきたじゃない? それには少し戸惑いみたいのはあったみたいなの。ロッシュが普通に接してくれるから、恐怖は感じなかったみたいだけど」
まぁ、とりあえず男として見られ始めていたってことで納得しよう。でも、大事なことを聞かなけれならない。
「マリーヌにはね、ルドベックが気があるかもしれないってことは伝えたわ。ルドベックは、顔もいいし、女性にも優しい性格をしているわ。マリーヌの男性恐怖症を克服するために、ルドベックの気持ちを利用させてもらったの。もちろん、彼ならなんとかしてくれるかもしれないと思ってね」
そういうことだったのか。と言うことは、お互いにすでに意識しあっているということか。この状況はすごく重要な場面ではないか? ふと、ルドとマリーヌを見ると、対面しているものの、目もあわせずにコーヒーばかりすすっているじゃないか……頑張れ、ルド。
「ところで、マリーヌはルドに脈はありそうなのか?」
「そうね……半々かしら。悪くは思っていないと思うけど、恐怖心がどう影響するか、まだ分からないわ」
ルド……難しい恋愛になりそうだな。
僕とマグ姉は、ソファに戻り、楽しい話をしようと必死に頑張ったが、なかなかうまくいかなかった。会話に窮したルドが、手に持ったコーヒーのことを賞賛しだしたら、雰囲気がガラリと変わった。マリーヌが、コーヒーを褒められたものだから気分を良くして、コーヒー談義に花が咲いた。マリーヌの独壇場となったが、少しは、ルドとマリーヌの距離が近付いた気がする。そうこうしている内に、リードが料理の支度が整ったので、食堂に集まるように伝えに来た。話が中断となって、マリーヌが少し残念そうな顔をしていた。そんな彼女にルドは、コーヒーの話を聞き出そうと、色々と質問しては、マリーヌと会話を楽しんでいた。
全員が食堂に集まった。改めて、皆の前でリードを紹介し、リードが挨拶をした。そこから宴が始まった。ルドはしっかりとマリーヌの隣りに座り、先程からコーヒーの話ばかりをしていた。飽きないのかな? と思っていたが、マリーヌの表情はますます生き生きとしていたから杞憂だったみたいだ。完全に二人の世界に入っていたので、二人を除き、エリスの料理に舌鼓を打ちながら、初めての酒を口にした。
……これが、この村の酒か。酒が喉を通ると灼けるような感覚に襲われ、腹に収まってからもじんわりと暖かくなる。香りが強く、口に含んだ時、鼻から一気に抜けていく。これは、旨いな。とても短い熟成でこれほどの味が出るとは……改めて異世界に来たのだと実感した。
僕が飲み始めた頃に、ミヤが戻ってきた。大人一人分の重さはありそうな樽を軽々と抱えて、食堂に入ってきた。
「遅くなったわね。なかなか気にいる味が無かったものだから試飲に時間がかかったわ。この樽が、村で一番美味しい魔酒のはずよ」
そういうミヤは、すこし酔っている様子だったが、まだまだ足取りは確かだし、大丈夫そうだった。ミヤは、樽を割り、大きな盃になみなみと魔酒を注ぐと、勢い良く飲み始めた。ミヤの喉がこくこくと動く度に、頬が赤く染まってゆく。その様が妙に美しく、僕はミヤが飲み干すまで見惚れてしまった。
ミヤは、そんなことはお構いなしに、次々と盃を空にしていった。皆も、ミヤに引っ張られるように、飲むペースが早くなっていき、強かに酔い始めていた。酒に酔うと、態度もそれぞれ変わって面白い。
エリスは、酔い始めると僕に身を寄せるように甘えてくる。冷静なリードが、エリスを窘めるが、その度に頬を膨らませて拗ねている。マグ姉は、話に参加もせずに黙々と飲んでいた。顔色も変えずに、ミヤと同じペースで飲んでいたから、相当な酒豪なのだろう。マリーヌは、絡み酒のようになっており、普段のストレスをルドにぶつけていた。ルドは、マリーヌと話せてすごく幸せそうだった。
僕はというと、恥ずかしながら欲情してしまっていた。美しい女性に囲まれて、体がようやく精神に追いつき始め、酒で感情のタガが外れてしまったからだ。エリスの胸が僕に当たる度に、必死に冷静になるように耐えていた。しかし、我慢が出来なかったので、外で体を冷やしに行った。雪が降る外で、長い時間いたおかげで、酔いから大分覚め、興奮も幾分落ち着いてきた。これなら、戻っても大丈夫だろう。
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