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第26話 初めての酒造り
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祭りの翌日、僕とエリスとミヤとココで朝食を食べていた。
「そういえば……エリス、僕も好きだぞ」
え⁉ 皆の時間が止まった。エリスは、わけがわからないと言った表情で、止まっている。言葉を飲み込めないでいるみたいだ。やっと、飲み込めたと思ったら、顔が真っ赤になって、俯いてしまった。ココは、気にせず、朝食を食べていた。ミヤは、羨ましそうな顔をしてた。
ミヤには、祭りの時に言ったんだけどなぁ……あれ、完全に聞いてなかったんだな。酒が完成した時にでも、もう一度伝えてやるか。
さて、エリスが復活しそうにないので、食事を続けた。
「な、なんで、急にそんなことをいうんですか……心の準備とか全然出来てないし……」
「いや、先に言ったのは、エリスだぞ。昨日。覚えてないのか? 」
次は、ポカーンとしちゃった。朝から、表情豊かだね。エリス。
「全然、記憶にないです。本当に言ったんですか? 」
「ええ。確かに言ってたわよ。わたし、聞いてたもの」
エリスが、ミヤを見て、なんで知ってるの? って顔になった。そして、聞かれていたのがショックだったのか絶望した顔になった。エリスの知っている顔のオンパレードだな。
「だったら、せめて、二人きりの時に言ってくださいよ。こんな、みんなのいる前で、しかも食事中に言うなんて……」
随分、ご立腹してしまった。女心って難しいな。婆さんには、これでイチコロだったんだけどな。
食事を終え、ミヤとゴードンを呼び、酒造りについて、考えていた。
「この村で、酒造りをしようと思う。来年から麦を大量生産する段取りがついたから、今年から、試しに仕込みをしてみようと思う。どうだろうか? 」
ミヤとゴードンは、一応賛成したものの、懐疑的だった。この村で、酒が作れるものか。
「今の課題は、樽だ。木材から樽を作りたいのだが、技術がない。そのことについて、皆で考えたいのだ」
「ロッシュ。樽が作れれば、酒造りは出来るということ? 」
僕は、その通りだと頷いた。
「だったら、私の眷属に頼むといいわ。樽を作れる者がいるのよ」
都合が良すぎる。しかし、是非お願いしよう。眷属を屋敷に呼ぶわけにはいかないので、その者のもとに、行ってみることにした。
ミヤの眷属は、30人もいて、皆揃いも揃って美形ばかりだ。見分けがつかないな。紹介されたのも、その一人だ。かろうじて、小さい子だなと思ったくらいだ。12.3歳に見える。
「この子が、樽を作れる子よ」
紹介された女の子は、丁寧にお辞儀をしてくれた。
「君が、樽を作れると聞いて、とても期待しているんだが……どうして、作れるか聞いてもいいかな? 」
女の子は、ちらっとミヤを見た。ミヤは、軽く頷いた。何か、あるのかな?
「私の家は、吸血鬼の中でも下級なんです。下級の吸血鬼の家は、なにかしら家業を持っていることが多くて、私の家は、樽工房を営んでたんです。私は、小さい頃から、手伝わされていましたし、実際に一人作ったことも何度もあります」
なるほど。少し、魔界事情を知ることが出来た。それを伝えていいかを、ミヤに聞いたのか。
「そうか、ならば、君にお願いしよう。酒用の樽を、いくつか作って欲しい。必要なものがあれば、ミヤに伝えてくれば、用意しよう。工房は、牧場近くになってしまうが、大丈夫だろうか? 」
女の子は、頷いた。
「ロッシュ。彼女に名前を与えてくれる? 」
え!? これって毎回するの? 女の子も期待した目で僕を見つめていた。名を与えることが、魔族にとって特別なことなのかな?
僕は、彼女に、ハナという名を与えた。ハナには、樽工房責任者に任命した。場所は、おいおい用意するとして、とりあえずは、牛舎横の使ってない納屋を使ってもらうことにした。レイヤに、酒造倉と併設する形で、お願いしておこう。壁近くに用地を作っておくか。
あとで聞いた話だが、ハナは33歳らしい。子供にしか見えなかった。ちなみに、ミヤは116歳、サヤは230歳らしい。魔族は、長命で、なおかつ若い時が長いので、100歳位にならないと子供ぽさが抜けないらしい。
ミヤは16歳くらい、サヤは20代後半くらいにしか見えないんだよね。魔族の長命の秘訣が知りたい。
樽は一週間もあれば作れるとのことなので、僕は、麦の発芽作業と天然酵母とホップの調達を始めた。村人を何人か集め、作業に当たらせた。天然酵母は、あらゆるところに存在しているが、いくつか候補を決めて、作ってみることにした。ホップは偶然と言うか、前に、鉄の採掘場に行く手前の森で、見つけていたのだ。
一週間経ち、樽の第一号が完成した。ついに、酒造りを始められた。説明は割愛するが、樽に入れて、完成した。あとは、発酵を待てば、完成だ。樽づくりをどんどん進め、10個ほど樽を作り、それぞれ、違う天然酵母で作ってみた。味の変化が楽しみだ。ちなみに、樽は、2メートルくらいのサイズだ。一樽で5000リットル位作れる計算だ。
僕が作っているのは、エールだ。エールを作っているのは、その先にある、あの酒を作るため。それが、今の目標だ。
エールビールは、一ヵ月もあればできるだろう。
冬の訪れを感じる寒さを感じる朝、ミヤから、エールが出来たことの報告がもたらされた。ついに、この村産の酒が完成した。これは、村にとって、重大な出来事だ。ゴードンにお願いして、成人を集められるだけ集めてもらった。
ライルには、酒樽を旧都の祭りをやった広場に持ってきてもらった。もちろん、ハナも連れてきてもらった。
「皆のもの、よく集まってくれた。この村で、ついに酒を作ることに成功した。今日は、その試飲をしてもらいたく集まってもらった。思う存分飲んでくれ」
村人が樽の前に並び、各々が木のコップにエールを注ぎ、その場を離れると、ぐいっと酒を飲み、満足そうな顔をしていた。樽が空になった頃、村人は気持ちよく酔っ払っていた。僕は頃合いだろと思い……
「皆のもの、エールはどうだったかな?僕は、残念ならが口に出来なかったが、皆の顔は、よく見ることが出来た。満足そうだな。では、紹介しよう。このエールづくりに欠かせない樽を作ってくれた者を」
僕は、ハナを手招きし、皆に紹介した。皆、魔族が、樽を作ったことに驚きを隠せずにいた。しかし、皆、気持ちよく酔っている。誰かが、ハナを褒め称えると、皆が一斉に拍手をした。ハナは恥ずかしそうな顔をしていたが、堂々と立っていた。
それを見ていた村人は、きっと、魔族への考え方……すくなくとも、ミヤの眷属に対して、不安を少しは減らすことが出来たかもしれない。
ハナにはもっと、樽づくりを頑張ってもらわないとな。あの酒のために……
「そういえば……エリス、僕も好きだぞ」
え⁉ 皆の時間が止まった。エリスは、わけがわからないと言った表情で、止まっている。言葉を飲み込めないでいるみたいだ。やっと、飲み込めたと思ったら、顔が真っ赤になって、俯いてしまった。ココは、気にせず、朝食を食べていた。ミヤは、羨ましそうな顔をしてた。
ミヤには、祭りの時に言ったんだけどなぁ……あれ、完全に聞いてなかったんだな。酒が完成した時にでも、もう一度伝えてやるか。
さて、エリスが復活しそうにないので、食事を続けた。
「な、なんで、急にそんなことをいうんですか……心の準備とか全然出来てないし……」
「いや、先に言ったのは、エリスだぞ。昨日。覚えてないのか? 」
次は、ポカーンとしちゃった。朝から、表情豊かだね。エリス。
「全然、記憶にないです。本当に言ったんですか? 」
「ええ。確かに言ってたわよ。わたし、聞いてたもの」
エリスが、ミヤを見て、なんで知ってるの? って顔になった。そして、聞かれていたのがショックだったのか絶望した顔になった。エリスの知っている顔のオンパレードだな。
「だったら、せめて、二人きりの時に言ってくださいよ。こんな、みんなのいる前で、しかも食事中に言うなんて……」
随分、ご立腹してしまった。女心って難しいな。婆さんには、これでイチコロだったんだけどな。
食事を終え、ミヤとゴードンを呼び、酒造りについて、考えていた。
「この村で、酒造りをしようと思う。来年から麦を大量生産する段取りがついたから、今年から、試しに仕込みをしてみようと思う。どうだろうか? 」
ミヤとゴードンは、一応賛成したものの、懐疑的だった。この村で、酒が作れるものか。
「今の課題は、樽だ。木材から樽を作りたいのだが、技術がない。そのことについて、皆で考えたいのだ」
「ロッシュ。樽が作れれば、酒造りは出来るということ? 」
僕は、その通りだと頷いた。
「だったら、私の眷属に頼むといいわ。樽を作れる者がいるのよ」
都合が良すぎる。しかし、是非お願いしよう。眷属を屋敷に呼ぶわけにはいかないので、その者のもとに、行ってみることにした。
ミヤの眷属は、30人もいて、皆揃いも揃って美形ばかりだ。見分けがつかないな。紹介されたのも、その一人だ。かろうじて、小さい子だなと思ったくらいだ。12.3歳に見える。
「この子が、樽を作れる子よ」
紹介された女の子は、丁寧にお辞儀をしてくれた。
「君が、樽を作れると聞いて、とても期待しているんだが……どうして、作れるか聞いてもいいかな? 」
女の子は、ちらっとミヤを見た。ミヤは、軽く頷いた。何か、あるのかな?
「私の家は、吸血鬼の中でも下級なんです。下級の吸血鬼の家は、なにかしら家業を持っていることが多くて、私の家は、樽工房を営んでたんです。私は、小さい頃から、手伝わされていましたし、実際に一人作ったことも何度もあります」
なるほど。少し、魔界事情を知ることが出来た。それを伝えていいかを、ミヤに聞いたのか。
「そうか、ならば、君にお願いしよう。酒用の樽を、いくつか作って欲しい。必要なものがあれば、ミヤに伝えてくれば、用意しよう。工房は、牧場近くになってしまうが、大丈夫だろうか? 」
女の子は、頷いた。
「ロッシュ。彼女に名前を与えてくれる? 」
え!? これって毎回するの? 女の子も期待した目で僕を見つめていた。名を与えることが、魔族にとって特別なことなのかな?
僕は、彼女に、ハナという名を与えた。ハナには、樽工房責任者に任命した。場所は、おいおい用意するとして、とりあえずは、牛舎横の使ってない納屋を使ってもらうことにした。レイヤに、酒造倉と併設する形で、お願いしておこう。壁近くに用地を作っておくか。
あとで聞いた話だが、ハナは33歳らしい。子供にしか見えなかった。ちなみに、ミヤは116歳、サヤは230歳らしい。魔族は、長命で、なおかつ若い時が長いので、100歳位にならないと子供ぽさが抜けないらしい。
ミヤは16歳くらい、サヤは20代後半くらいにしか見えないんだよね。魔族の長命の秘訣が知りたい。
樽は一週間もあれば作れるとのことなので、僕は、麦の発芽作業と天然酵母とホップの調達を始めた。村人を何人か集め、作業に当たらせた。天然酵母は、あらゆるところに存在しているが、いくつか候補を決めて、作ってみることにした。ホップは偶然と言うか、前に、鉄の採掘場に行く手前の森で、見つけていたのだ。
一週間経ち、樽の第一号が完成した。ついに、酒造りを始められた。説明は割愛するが、樽に入れて、完成した。あとは、発酵を待てば、完成だ。樽づくりをどんどん進め、10個ほど樽を作り、それぞれ、違う天然酵母で作ってみた。味の変化が楽しみだ。ちなみに、樽は、2メートルくらいのサイズだ。一樽で5000リットル位作れる計算だ。
僕が作っているのは、エールだ。エールを作っているのは、その先にある、あの酒を作るため。それが、今の目標だ。
エールビールは、一ヵ月もあればできるだろう。
冬の訪れを感じる寒さを感じる朝、ミヤから、エールが出来たことの報告がもたらされた。ついに、この村産の酒が完成した。これは、村にとって、重大な出来事だ。ゴードンにお願いして、成人を集められるだけ集めてもらった。
ライルには、酒樽を旧都の祭りをやった広場に持ってきてもらった。もちろん、ハナも連れてきてもらった。
「皆のもの、よく集まってくれた。この村で、ついに酒を作ることに成功した。今日は、その試飲をしてもらいたく集まってもらった。思う存分飲んでくれ」
村人が樽の前に並び、各々が木のコップにエールを注ぎ、その場を離れると、ぐいっと酒を飲み、満足そうな顔をしていた。樽が空になった頃、村人は気持ちよく酔っ払っていた。僕は頃合いだろと思い……
「皆のもの、エールはどうだったかな?僕は、残念ならが口に出来なかったが、皆の顔は、よく見ることが出来た。満足そうだな。では、紹介しよう。このエールづくりに欠かせない樽を作ってくれた者を」
僕は、ハナを手招きし、皆に紹介した。皆、魔族が、樽を作ったことに驚きを隠せずにいた。しかし、皆、気持ちよく酔っている。誰かが、ハナを褒め称えると、皆が一斉に拍手をした。ハナは恥ずかしそうな顔をしていたが、堂々と立っていた。
それを見ていた村人は、きっと、魔族への考え方……すくなくとも、ミヤの眷属に対して、不安を少しは減らすことが出来たかもしれない。
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