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王都トリスタニア

side 第二王子 レイモンド

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俺はレイモンド=ライゼファ。

ライゼファ王国の第二王子だ。

くそっ!!

忌々しい、スターコイド家。

どこまで、俺をコケにするつもりなんだ。

あの女では飽き足らず、傀儡まで用意しやがって。

……。

「レイモンド殿下。入ります!!」
「ブライアン。どうしたんだ? そんなに息を切らせて」

衝撃的な話だった。

今でも耳を疑う。

「なんだって!? 俺が女を襲った罪で捕まったぁ!?」

何を言っているんだ?

いや、だが……ブライアンは信頼できる男だ。

嘘を付くわけがない。

「もっと詳しく教えろ」

……ありえない。

俺にそっくりな奴が城に入ってきたらしい。

しかも、囚人服を着て……。

「ブライアン。すぐに行くぞ!!」
「はっ!!」

これは面倒なことだ。

くそっ!!

すでにスターコイドは父上と会っていると言う。

遅すぎだ。

俺はブライアンを睨みつける。

だが、そんな事よりも……。

俺を見る、周りの目が気になる……。

どいつもこいつも訳の分からない話を鵜呑みにしやがって。

「父上!! レイモンドです。入ります!!」
「困ります。今はスターコイド卿とお会いになられていますから」

だからこそ、来たのだ。

ええい、邪魔だ。

「開けます!!」
「レイモンド殿下ぁ!!」

なんだ、これは?

俺がいる?

「スターコイド!! これはどういうつもりだぁ!」
「……はて? これはどういうことでしょう?」

惚けた顔をしやがって……。

「ふざけるな!! そいつは俺の偽物だ!!」
「ふむ……どうやら、そのようですな」

「スターコイド卿。先程から、何度も言っているではないか」
「陛下。とんだ勘違いをしてしまいました。私もまさか、と思っていたのですが……」

この野郎……抜け抜けと。

だが、このまま黙って帰らせてたまるか。

「この落とし前をどう、つけるつもりだ? スターコイド卿」

さあ、なんて答える?

あのブスのように毒を飲ませてやろうか?

「はて? どう、と言われましても。私は領主としての職務を忠実に行っただけ。そうは思われませんか? 陛下」

はぁ?

そんな戯言が通用すると思っているのか?

「父上!! ここまで俺がコケにされているんですよ!!? この者に罰を与えて下さい!!」

「ふむ……しかし、よく似ている……私でも見分けがつかない」

何を悠長な。

こんなデブが俺の訳がない。

俺はもっとスマートだ!

「父上!!」

「少し、黙れ! お前には分からぬのか? スターコイド卿がこの者をここに連れてきた訳を」

はぁ?

俺を侮辱するためだろ?

そうに決まっている。

「こいつは俺が嫌いなんだ!! 妹を振った俺が!!」

「馬鹿者が!! スターコイド卿は秘密にして、ここにやってきた。それはお前の名を汚さぬためだ。なぜ、分からぬ」

はぁ?

冗談はよせよ。

「スターコイド卿。此度は苦労をかけた。すまぬが、その者は連れ帰ってくれぬか? ただし……」
「分かっております。どうせ、処刑が決まっている身。レイモンド殿下とは似ても似つかぬような顔にしましょう」

「……助かる。この礼はきっと」

……。

「ならば、一つお願いが」
「なんかな?」

「我が手の者がこの度のコンテストに出場します。その者が入賞した際には……恩賞を賜りたいかと」

コンテスト……だって?

「それは構わぬが……何を望む?」
「地位を……騎士爵でも構いません。どうか、お願いできないでしょうか?」

こいつは、これをするために?

一体、どんな奴なんだ?

スターコイドのお気に入りのやつって言うのは。

「お主には子爵までの任命権を与えていたはず。それでやればよかろう」
「いいえ。是非、陛下に……」

「まぁ、よかろう……入賞すれば、我が国の宝だ。卿の頼み……聞き届けよう」
「はっ!! ありがたき幸せ」

「して、その者の名は?」
「ライル。かつて、ウォーカーを名乗っていた者です」

……ライル=ウォーカー。

その名は絶対に忘れないぜ。

今回のコンテストは俺が主催……。

……楽しみだぜ。

「では、私は」
「うむ。私もコンテストに顔を出そう」

……。

なんだよ。

スターコイドがものすごい形相でこちらを睨みつけていた。

そして、ぼそっと耳元で言ってきた。

「妹を傷つけた報いは必ず受けてもらうぞ」

……へっ!! 笑わせてくれる。

公爵だかなんだか知らねぇが、俺は第二王子だ。

このコンテストでたっぷりと泥を塗ってやるから、覚悟しておけよ。
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