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ダンジョン

第48話 特別な一日

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魔女の館、ベローネ邸。

イディア様が魔女に頭を下げていた。

「も、申し訳ありません!! 長く不在をした挙句、ベローネ様にお出迎えをさせてしまうとは」
「よい。客人もおるからの。さて、少し話をしようかの」

今から……ですか?

正直、断りたい……。

だって、ダンジョン帰りで疲れているっていうのもあるけど……。

僕やイディア様の両手を見て欲しい。

大量のお肉と食材が入った袋をぶら下げていた。

そう……これからパーティーなのだ。

ダンジョンでの戦闘による高揚感なんだろうか……。

僕は今、すごく興奮している。

パーティーではしゃがないと、溜まってしまいそうだ。

「えっと、ベローネ様」
「なんじゃ? ライルよ」

なんか、物凄く会話のしづらい人だな。

それにいちいち、足を突き出すのは止めて欲しい……目が持っていかれる。

「その……僕達、これからパーティーをしようかと。話はそれからでも……」
「ライル!! 失礼ですわよ。領主様に向かって! 本当に申し訳ありません」

「ふふっ。よいよい。せっかちになってしまうのが、私の悪い癖じゃ。ならば、そのパーティーとやらに私も参加しようかの」
「ベローネ様!? ほ、本当に?」

ん?

何かおかしな事を言ったのかな?

「あの、ウィネット様も同席しても?」
「もちろんじゃ。呼ぶが良い」

なんなんだ、イディア様のはしゃぎっぷりは。

「すぐに呼んで参ります!!」
「お主もせっかちじゃな」

えっと……。

「アリーシャ。厨房は分かる?」
「うん。えっと、お姉ちゃんも手伝ってくれる?」

「へ? わ、私ですか? あの……料理をやったことがないですけど、大丈夫でしょうか?」
「うん。料理は愛情だよ!」

答えになっていない……。

まぁ、フェリシラ様がやる気に……。

ちょっと待て。

フェリシラ様の手料理を食べられるのか?

なんだ、すごく楽しみじゃないか!!

「ライル」

そういえば、ベローネ様がまだいたな。

「はい」
「……」

なんだ、この間は。

「あとで、な」

それだけを言い残して、姿を消した。

なんだったんだ?

まぁいいか。

さてと……。

僕も料理に参加したかったが、一つだけ試しておきたいことがあったんだ。

これはフェリシラ様にも言われたことだ。

特性付与……これが自在に出来るかどうか……。

鍛冶師の僕にとっては、この能力は神業に近い。

通常はありえないからだ。

だが……。

『鑑定』


■■■■剣
品質: B
耐久度: 1/1500
特性: 耐久度減少半減

……よく、持ちこたえてくれたな。

ロンスリーさんは命の恩人だ。

特性がなければ、僕達もマリアと同じ……いや、酷い運命が待っていただろう。

それほど、特性は重要なものだ。

これを自在に……か。

さきほど、出向いた武具屋で一本の剣を買ってきてある。

アリーシャの包丁を貰いに行くついでだったんだけど……。

ロンスリー作の剣がまだ残っていてよかったよ。

銀貨5枚……本当に安いよ。

さて……。

念じるんだ……。

今回は……。

シュッ……シュッ……

(攻撃力強化……)

シュッ……シュッ……

(攻撃力が強化されますように……)

……出来たか?

『鑑定』


■■■■剣
品質: B
耐久度: 299/1500

……特性がつかない?

どうしてだ?

僕は確実にロックハニーの巣での再現をしたはず。

どうして……。

もう一本だ!!

もしかして、攻撃力強化が良くなかったのかも。

やはり、もう一度、耐久度減少を少なくする……。

……。

ダメだ。

特性がつかない。

一体、どういうことだ?

考えろ……あの時に考えていたことを……。

何か、足りないことがあるはずだ。

マリアへの憎しみ?

いや、違う……。

もしかして……フェリシラ様への想い?

そう、僕はあの時、感じたんだ。

そして、強く願った。

フェリシラ様を助けたい……守りたい。

だが、そんな事で?

それでも試さなければならない。

それが職人なんだ。

シュッ……シュッ……

(フェリシラ様……)

シュッ……シュッ……

(フェリシラ様ぁ)

僕は一体、何を考えていたんだ?

まぁいいか。

『鑑定』


■■■■剣
品質: B
耐久度; 299/1500
特性: 騎士(フェリシラ限定)

なんだ、これ?

いや、でも成功したぞ!!

やっぱり、そうか……。

相手を想う事が必要だったんだ。

しかし、この特性は何だ?

騎士?

これがどういう意味を持つんだろうか。

しかも、フェリシラ様限定って……。

よく分からないものが出来てしまったが……まぁ、いいか。

これで一つ……『研磨』の凄さが増したんだ。

「ライル?」
「どあっ!! フェ、フェリシラ様!?」

横にフェリシラ様の顔があったから、椅子から転げ落ちてしまった。

「何度も呼んだのに……集中されていたのですか?」
「え、ええ。あっ、特性付与は成功しましたよ」

「……そう」

なんで、そんなに悲しそうなんだ?

「じゃあ、行きましょう」
「はい……」

パーティーは夜遅くまで続いた。

鼻水を垂らしながら、イディア様に聞いたんだ。

ウィネットちゃんはベローネ様と食事をしたことがほとんどなかったらしい。

ベローネ様はほとんど館にはいないのが、その理由らしい。

それだけではない。

居ても、雑務に追われ、客人が絶えない……。

ずっとウィネットちゃんは寂しい思いをしていたらしい。

今日は皆にとって、特別な一日になったみたいだ……。

ただ、一人、浮かない顔をしたフェリシラ様以外は……。
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