Я side The Assassin

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少年隊入隊試験編

31.認め合いと目的と白髪

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試験終了

颯爽とする中、風が吹き止んでゆったりと落下してきたシイナをランマルはお姫様だっこで受け止めた

互いに疲れきった顔を見せ合う

「リュウマ…怪我…大丈夫?、」

「自分の…心配をしなよ」

ランマルが地面に膝を落とすとシイナは急いでランマルの腕から離れ背を抑える

「大丈夫!?」

「いや…疲れがドバっときただけ…心配は…」

バタン

ゆっくりと仰向けに倒れたランマルに心配の声をかけようとするがシイナはそれをやめて柔らかく笑った

「ほんっと身勝手なヤツっ」

ランマルは目を瞑ってぐっすりと眠ってしまった

「シイナさーん!」と走って近づいてくるコスズに人差し指を鼻に当てて大きな声を出さないように示した

一方、手錠をかけられたムラカミとリュウマは並んで座っていた

「ムラカミさん 気になったことがあるんですけど」

「どうした」

「ムラカミさんのハンデってなんやったんです」

ムラカミもシバキと同様、強すぎるがゆえに強さを制限するハンデがあるはずだ

「俺のハンデは木刀を持っている時にその場から動かないことだ」

「え!!」

驚いた後に顎に手を当てて戦闘を振り返る

「確かに…ムラカミさん、、攻撃する時微動だにしてませんでしたね」

「だろ?」

「やっぱ俺はまだアナタには届かんわ~」

静かに笑みを浮かべるムラカミの隣で立ち上がったリュウマは憧れに指さす

「でも絶対超えて魅せるで!」

「そりゃ楽しみだな」

わざと指された指を掴んで立ち上がった瞬間、2人の脳に違う光景が突如として駆け抜ける

「「……!」」

ムラカミには薄暗い倉庫の中で橙色で仄かな温かさを放つ刀身が、リュウマには瓦礫が降り注ぐ中で何者かに抱かれてそこから離れようとする自身の手に握った鞘に納められた刀が、それぞれに映る

突然の出来事に2人の思考は驚愕に染まっていた

    なんや
今のは…    …
    なんだ


工業地帯

合流したセツナ、レナ、ゴウは傷の手当てをしながら健闘を讃え合う

「2人とも無事だったか」

「うん、タカマサがいなかったら結構危なかったけど、、」

「え!セツナちゃん仲直りしたの!!」

「試験始まる前は喧嘩腰だったのにな」

レナはセツナの頭を撫で、ゴウは腰に手を当ててそれを眺めている

「それでそのタカマサはどこに」

ゴウの質問でレナも撫でる手を止めて、セツナが応える

「今回の試験は諦めるんだって…本当だったらエイタが一次に受かってるから」

「えー意外と律儀だ」

「だが、せっかく手にしたチャンスを逃すことになるが、」

セツナは優しい微笑みで頷いた

「でも、タカマサがなりたいものになるために決めたことだから私は止めなかったよ」


タカマサは自身の傷を手当てしながら胸の前に手を出して強く握った
それはこれからの決意表明で無償に人を救うヒーローになるという宣言に近い決意を胸にした


荒地

「あかーーーーーん!!!」

ガオが頭を両手で抑えて雄叫びを上げた
隣に並んでいたガイが耳を強く抑えても聞こえてくる大声に耳を痛める

「急に叫ぶな!」

今度は一気に頭を落として地面にうずくまる

「だって絶対点数足りひんねんもん…」

「そりゃ…まぁ…無念だが…」

序盤に気を失って得点のタイミングを逃したガオの背中に手を置いて哀れむ

「ミドリに続いてワイまで落ちたら滋賀支部の名誉がぁぁあ」

「そんなこと気にしてんのかよ」

結構どうでもいいことを心配していて呆れた
ガオはガイの肩に泣きつく

「リュウは~!リュウは受かっとるやろうかぁぁ~!」

「知らねぇ離れろ!」

そろそろ対応が面倒になってきたガイはオロオロとコミカルな涙を流すガオを片手で押し離す


高層ビル地帯

ビル1階ロビー

柱にの垂れて気を失っていたリクトが目を覚ました

そこには心配するイチゴと欠伸をしているコウマがいた

「リクト!起きてよかった…!」

イチゴは視線を合わせてリクトの側頭部を撫でる

「何してんだ やめろ」

リクトはまだこもっている声でイチゴの手を払うとゆっくりと立ち上がった

「もぉ心配してるだけなのに…」

頬を膨らませて両拳を腰に当てて腰を曲げる

「リクトおはよぉ~」

長い長い欠伸を閉じながら気を失っていたリクトに気軽い挨拶をする

「お前なぁ…」

「なんだよ」

「いやなんでもない」

野生人に近いコウマに常識を説いたとて意味がないと言いかけた言葉を飲み込んだ

3人で並んでビルを出ると同時に会場全体に放送が始まる
その声の主はとても明るく振る舞って少々騒がしかった

『ハロー!エブリワァン!!試験おっつー!』

イチゴが声の正体に気づく

「ヒイマさんだ!」

その反応に声の主が分からなかったリクトは頷き、コウマは小さく口を開く

「仲介班副班長か…」

元気でノリノリな声が広い会場に響き渡る

『結果発表は控え室でするからすぐ向かってね~  あ、でも急がなくていいよ!まだ集計中だし!じゃ!また結果発表の時に!バーイ!』

ブツッという音で放送が止まった
間もなくして各地に散らばっていた訓練生たちは控え室に向かって歩み始めた


数分後、、

二次試験を受けた全員が控え室に戻り、各々で暇を潰していた

ベンチに座ったしかめっ面のリュウマとそれをパックのオレンジジュースを吸いながら見つめる

その間で口を割り出せず腕を組むガオ

「あ、あのやなおふた…」

「黙れ」「黙って」

2人から静止を食らってまた黙り込む

「ジュボボボッ」

オレンジジュースのパックが絞り縮む

「なにそんな見つめてんねんウザイなぁ」

「いや睨み始めたのアンタじゃん」

「あぁ!?」

勢いづいて立ち上がったリュウマをガオが抑えた

「あいあい!興奮すんなて」

リュウマもその指示に従って従順に立ち直る

ランマルがまた、悠長に話す

「で、なに」

リュウマも潔く口を開いて話し始める

「俺は試験中にアンタを潰したかったんや」

「おお、なんてひどい」

「黙って聞け」

飲みきったオレンジジュースを右手に握って黙る

「雑魚は嫌いや すぐ負けるし、よう去勢張りよるし、調子に乗る」

「それがオレって…?」

「最初はそう思っとった 初対面で格上に向こうて蹴りかましてくんねんからな」

「そん時はアンタとコインとかいうヤツが…」

ランマルの語りをぶった切って話し続ける

「でも、ムラカミさんと闘っとった時、アンタは身を削って竜巻の中に入って行きよった」

「………」

「やからなぁ…そのぉ…」

急に頭を掻き始めたリュウマに首を傾げる

「まだアンタのことは嫌いやけど、これだけは認めたる…アンタは雑魚ちゃうわ」

言って照れたのか頭を斜め下に下ろす
すると、ランマルは口に手を当てた

「んっw」

「は?」

「ブハハハッw!」

腹を抱えて爆笑

「な、何わろてんねん!!」

照れていた自分が情けなくなってまた、顔が赤くなる

「いやぁそんだけかよぉw」

呆れ笑いだったようで、ランマルもすぐ笑いを止めた
そして、握っていた紙パックをヒョイッとリュウマに投げた
リュウマはそれを落とさないように胸の前で手に納める

「オレも勘違いしてた 1位の座にあぐらかいてるだけだと思ってたから…けどアンタは確かに努力してんだと分かった」

「な、なんでや…」

「ムラカミさんとの闘いの中で技術吸い取ってじゃん」

最後の土壇場でムラカミの風を切る技術を模倣し、成功させたことを浮かべる

「こりゃ敵わんと思った…」

ランマルも自分はまだ、リュウマには届いていないことを自覚して、また先を見る

「だけど…!」

ヒュンッ!

「………!」

リュウマの手元にあったオレンジジュースの紙パックが失くなり、ランマルの右手に帰った

「すぐにアンタの位置をやる」

ライバル心を燃やす目を互いに宿す

「はっ…!臨むとこやで!」

互いに拳どうしをぶつけた


女子シャワー室

シャワーの音が空間を支配する中、それに引きを取らないようコスズとシイナが隣接する個室で壁を挟んで話している

「泥、全く落ちないですね」

「うん、ほんとにね」

ある程度乾いて固まった泥を落とすのに苦戦しているようだ

沈黙が流れる
その沈黙を破ったのはどちらでもなかった

「シイナ!!」

ジャー!

「ひえっ!」

個室のカーテンを勢いよく開けて入ってきたのは全身が火傷と灰にまみれたレナだった
シイナは反射で胸を隠してレナに言う

「レナ!別のとこ使いなさいよ!」

「どこも埋まってるんだもーん」

「だからって私のとこに入ってこなくてもいいじゃない!」

シイナがレナの肩を掴んで部屋から追い出すように押す

「別にいいじゃん!」

レナも負けじと押し返す

「「ぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」」

その押し合いに決着は見えなかったが足場の悪さが引き分けを呼び起こした

ツルンッ

「「あ…」」

バタンッ!

シイナが後ろに倒れるとつられてレナも前に倒れる

ムニュッ

シイナが頭を抑えながら起き上がろうとすると胸に強い感触があった

「えっ」

自分の胸に目を下ろすとレナの頭が胸に埋まっている

「このバカ離れなさい!」

「うぅッ!滑ったのはシイナなのに!」

レナを引き剥がして立ち上がるとレナも愚痴を言いながら立ち上がる

「このBIGおっぱい」

「次言ったら殺すわよ 無神経女」

手厳しいお言葉である
そんな仲の悪い会話をしていると心配したコスズが様子を見に来た

「だ、大丈夫ですか…」

レナとコスズが初めて対面する

「うぉー!可愛い子だ!」

レナが相手の全身を見渡すために視界を上下させると真ん中に目が吸い込まれた

「うん、シイナの見た後だと小さく感じるね」

「へぇっ!」

コスズは頼りないものを隠した

「デレカシーの欠片もない発言をやめなさい」

レナがシャワーを浴びなおすシイナに不満げに振り向く

「シイナだって私に冷たいクセにぃ~」

「それはアンタが全くケロッとして闘いに勝つから女の子らしくないし、うざいから」

まさかの理由にレナがあからさまに落ち込む

「ひ、、ひどーい!!今日なんてこんなボロボロなのに!」

レナも二次試験で兄サトシと闘って辛勝を期した
しかし、火傷や打撲など傷も多く、よく見るとシイナよりも外見上の怪我が目立つ

シイナもそのことに気づいてため息をつく

「ま、確かにね…少しは嫌いじゃなくなったわ」

「え、なにツンデレ?」

「殺す」

煽りと辛辣な言葉が続く会話をコスズは外から眺めて自分はシャワー室から上がり、バスマットを踏んだ

すると、すぐ横のロッカーで着替える小柄な少女が見えた

「あ、ベニさん…」

コスズがその瞳が星型の少女に話しかけると長い髪を揺らして振り向く

「あらぁ アナタはあの時の、、うーん…」

頭を捻って思い出そうとする

「確か、名前を聞いてなかったわね」

「あ、そうですね  三股 小鈴 です…」

「よろしく~」

イチゴは着替えを終了してドライヤーをもって洗面台に向かう

「それで、どうしたの」

話しかけてきた理由を聞く
コスズは言葉選びに悩みながら応える

「その、ベニさんってなにか目的があって…試験に臨んだのかなと…」

タオルで口元を隠しながら言うコスズをイチゴは鏡の向こうで見て応える

「あーら、そんなことだったの 簡単な話、生きる意味をくれた人や場所に見返るため」

夢が潰れて死のうとしていた自分を拾ったЯ リサイドに恩返しをしたいという意味だろう

「それはすごくいいことだね…」

コスズの声がドライヤーの音で少し乱れる

「そういうアナタはどうなの」

タオルを口元から離して俯きよりで口を開く

「私は…」


一方、同じことを話している男がいた

男子シャワー室の脱衣所

ガイは肉体から水滴を滴らせながら隣のゴウに話す

「悔しい想いをしたことが何回もある」

「お、おう、、」

軽いノリで聞いてみたんだが、ちょっと地雷だったか…

ゴウは自分の質問を愚行と感じながら服を被る

「一番、心にドッシリのしかかってんのは2年前の出来事だ」

「……! それって…ッ」

「あぁ…ご存知の通り、北海道支部が雪王スノーズキングに打倒された時の話だ」


女子脱衣室

コスズは服に着替え終わり、洗面台のイチゴの隣を位置取る

「その時、私とガイっていう男の子の命の恩人が死んじゃったの…」

ドライヤーでイチゴの髪が吹かれる

「その人は私たちに優しくて、闘い方も教えてくれて、ほんとに恩人だったんだ」


男子脱衣室

「だから死んだ時、俺とコスズはそりゃ落ち込んだ」

ズボンのベルトを絞めているとゴウは着替え終わり、話に集中していた

「それは災難だったな」

「まぁな 確かに落ち込んだが、そん時から俺とコスズのすることが決まった」


女子脱衣室

「私とガイくんはその恩人にしたいことがあるの」


2人の言葉が重なる

「「強くなってあの人と同じように人を助ける」」

それを聞いたゴウとイチゴは青年と少女の姿を目に焼き付けて微笑みを浮かべていた


待機室

セツナが1人ベンチに座って寂しそうにしていた

レナとゴウ…シャワーまだかかるのかな…

足をふらつかせながら下を見ていると視界が影に染まった

「ん?」

セツナが頭をあげるとそこには、白い髪を肩までストーレートに伸ばした赤紫色の瞳をした少女がいた
試験用の服を着用していることから今回の受験生だとわかる

「え、なに、だれ、」

正体が全く掴めず、疑心暗鬼になって相手を見ると相手は何も言葉を発さず口を耳元に寄せてきた

「----------------…」

目を細めるほどの驚愕を魅せる

囁かれた言葉はセツナにとって衝撃的で相手への警戒心を強めるものだったのだろう
その怪しげな少女の肩を押して突き放す

「アンタ、、何者…!」

臨戦態勢に入るセツナに対し、また何も口にせずただ小さな笑顔を魅せる少女

相手が何にも動じない霊的に見え、さらに緊張と警戒を高める

今にも爆発しそうな空気が場に張りつめていたその時、スピーカーからピンポンパンポンッという音が鳴り、セツナの気がそちらに向いた

警戒を緩めたことに気づき、すぐ視線を元に戻したが、そこに怪しげな少女はもういなかった

爆発しそうな空気から一転、冷めるような空気が流れる

「今のは…一体……」

不穏な状態でも放送はそれを思考させる余裕を与えなかった

『はーい!ヒイマでーす!』

セツナの意識が再び、放送に向き、内容を捉えようとする
そして、待機室にいる他の受験生もその放送に釘付けとなる

『手っ取り早くいこう!合格発表だ!!』

セツナは期待と緊張が混ざりあった空間に霊的な空気が漂っていることを感じていた
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