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別れ
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「グレンは、何をしようとしてるの? 教えてよ」
「・・・」
グレンの速い足取りについて行きながら、訊いた。
「王さまを殺したことと、関わりがあるの?」
「・・・」
「いいかげん聞きたいよ」
「ここからが本番だ。聞きたいことはポールに聞け。王都に着いたら、別れる。いいな」
「別れるって・・・」
「命のやり取りになる。・・・弱い奴はすっこんでろ」
「・・・」
突き放すような言い方に、二の句が告げなくなった。
「王はただの傀儡にすぎん。黒幕は別だ」
あまりに可哀想だと思ったのか、少しだけ話してくれた。
「え? そんな・・・」
「何も変わらない。そいつをやらない限りはな」
「それは、誰なの?」
「とりあえず、戻る」
結局教えてくれない。
それだけでは、何にもわからない。
やっぱり信用されてないんだ。
悲しくなったけど、ぼくに話してもしょうがないってことだよね。
1年ぶりに王都に戻ってきた。
「おう、元気そうだな。安心した」
ポールの管理する隠れ家に落ち着くと、明るい声がした。
「ポール!」
1年ぶりの再会に、飛んで抱きつく。
「お疲れさん。たくましくなったな。辛くなかったか?」
ポールが心配そうに、ぼくの目を覗き込んだ。
「うん、全然。平気だったよ」
思いっきり強がりを言う。
「そうか」
笑って頭を撫でてくれた。
子犬扱いしているのはポールの方じゃないか。
「グレン。いよいよ仕掛けるんだな」
「そのつもりだが、今、どんな状況か知りたい」
ポールがぼくを見た。
「話してもいいんだな」
「ああ、こいつは心配ない。話して大丈夫だ」
グレンが言った。
「・・・」
ぼくは嬉しくて、涙を堪えるのに必死だった。
信用してくれてた。
感激していたけど、何でもないような顔で大人しくしていた。
二人の話に耳を傾ける。
「追っ手はなかったんだな。まあ、奴らもそれどころではないのだろう」
「新しい王はどうなった?」
「王太子が継いでいる。その王太子が、思ったよりも骨があって、懐柔するのに手こずっているようだな」
「ほう」
「センくんは、王太子に会ったことはある?」
急に振られて顔を上げた。
「あるよ。王さまとよく教会に来てた。王さまは優しいけど、ちょっと怖い感じだった。嫌いかもしれない」
「好き嫌いは聞いてない」
グレンが冷たく言う。
「嫌い」
ムッとしてグレンに向かって舌を出した。
「ちょっとした小競り合いというか、争いになっている。いつ武力で衝突するかわからない」
「なるほど。それはチャンスかもしれんな」
「グレンは、黒幕を討とうとしているの?」
ぼくはグレンではなく、ポールに聞いた。
「そういうことだな」
「その黒幕って、ぼくにもわかる?」
「会ったことはあるかもしれないな。王さまと共に教会には行っているはずだから」
「でもぼくは、王さま以外の人とはあんまり会ってないかも」
「宰相だよ。フェリップ公爵だ」
「あ、ひげ!」
ぼくは思い出した。
立派な口髭を生やしている人だ。
「ひげ公爵が敵なんだ」
「ひげね」
ポールが笑い出した。
グレンもつられて笑っている。
「じゃあな、セン」
グレンが立ち上がった。
「やだ!」
別れるのが嫌で、抱きついた。
「お前は貴族の子だろう。これからは貴族として生きろ」
「やだ! あんな家、帰りたくない! ついていく」
「足手纏いだと言ってる」
「強くなるから」
「ダメだ」
「センくん」
ポールがぼくを後ろから抱くようにして、グレンから引き離す。
「嫌だよ、連れてってよ」
「聞き分けるんだ」
「セン」
グレンが怖い顔で振り返った。
「そんな女々しいやつは嫌いだ。二度とおれの前に姿を見せるな」
「・・・」
ぼくは唇を噛み締めた。
あまりの衝撃に、もう声が出ない。
出ていくグレンの姿が涙でにじんだ。
「・・・」
グレンの速い足取りについて行きながら、訊いた。
「王さまを殺したことと、関わりがあるの?」
「・・・」
「いいかげん聞きたいよ」
「ここからが本番だ。聞きたいことはポールに聞け。王都に着いたら、別れる。いいな」
「別れるって・・・」
「命のやり取りになる。・・・弱い奴はすっこんでろ」
「・・・」
突き放すような言い方に、二の句が告げなくなった。
「王はただの傀儡にすぎん。黒幕は別だ」
あまりに可哀想だと思ったのか、少しだけ話してくれた。
「え? そんな・・・」
「何も変わらない。そいつをやらない限りはな」
「それは、誰なの?」
「とりあえず、戻る」
結局教えてくれない。
それだけでは、何にもわからない。
やっぱり信用されてないんだ。
悲しくなったけど、ぼくに話してもしょうがないってことだよね。
1年ぶりに王都に戻ってきた。
「おう、元気そうだな。安心した」
ポールの管理する隠れ家に落ち着くと、明るい声がした。
「ポール!」
1年ぶりの再会に、飛んで抱きつく。
「お疲れさん。たくましくなったな。辛くなかったか?」
ポールが心配そうに、ぼくの目を覗き込んだ。
「うん、全然。平気だったよ」
思いっきり強がりを言う。
「そうか」
笑って頭を撫でてくれた。
子犬扱いしているのはポールの方じゃないか。
「グレン。いよいよ仕掛けるんだな」
「そのつもりだが、今、どんな状況か知りたい」
ポールがぼくを見た。
「話してもいいんだな」
「ああ、こいつは心配ない。話して大丈夫だ」
グレンが言った。
「・・・」
ぼくは嬉しくて、涙を堪えるのに必死だった。
信用してくれてた。
感激していたけど、何でもないような顔で大人しくしていた。
二人の話に耳を傾ける。
「追っ手はなかったんだな。まあ、奴らもそれどころではないのだろう」
「新しい王はどうなった?」
「王太子が継いでいる。その王太子が、思ったよりも骨があって、懐柔するのに手こずっているようだな」
「ほう」
「センくんは、王太子に会ったことはある?」
急に振られて顔を上げた。
「あるよ。王さまとよく教会に来てた。王さまは優しいけど、ちょっと怖い感じだった。嫌いかもしれない」
「好き嫌いは聞いてない」
グレンが冷たく言う。
「嫌い」
ムッとしてグレンに向かって舌を出した。
「ちょっとした小競り合いというか、争いになっている。いつ武力で衝突するかわからない」
「なるほど。それはチャンスかもしれんな」
「グレンは、黒幕を討とうとしているの?」
ぼくはグレンではなく、ポールに聞いた。
「そういうことだな」
「その黒幕って、ぼくにもわかる?」
「会ったことはあるかもしれないな。王さまと共に教会には行っているはずだから」
「でもぼくは、王さま以外の人とはあんまり会ってないかも」
「宰相だよ。フェリップ公爵だ」
「あ、ひげ!」
ぼくは思い出した。
立派な口髭を生やしている人だ。
「ひげ公爵が敵なんだ」
「ひげね」
ポールが笑い出した。
グレンもつられて笑っている。
「じゃあな、セン」
グレンが立ち上がった。
「やだ!」
別れるのが嫌で、抱きついた。
「お前は貴族の子だろう。これからは貴族として生きろ」
「やだ! あんな家、帰りたくない! ついていく」
「足手纏いだと言ってる」
「強くなるから」
「ダメだ」
「センくん」
ポールがぼくを後ろから抱くようにして、グレンから引き離す。
「嫌だよ、連れてってよ」
「聞き分けるんだ」
「セン」
グレンが怖い顔で振り返った。
「そんな女々しいやつは嫌いだ。二度とおれの前に姿を見せるな」
「・・・」
ぼくは唇を噛み締めた。
あまりの衝撃に、もう声が出ない。
出ていくグレンの姿が涙でにじんだ。
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