2 / 9
賞金稼ぎ
しおりを挟む
恐ろしさで、心臓が口から飛び出るのではないかと思うほどドキドキしていた。
もう、帰らない。
帰れない。
そのままいたって、王さまを死なせた罪で、断罪されるかもしれないのだ。
どっちにしても、もう、ぼくは落ちたのだ。
悪魔のせいじゃない。
選んだのは、ぼくだ。
仕送りが途絶えて、親が文句を言うだろうが、構わない。
これまで十分に尽くしてきたつもりだ。
こんな時ぐらい、好きにさせてもらう。
悪魔は騎士たちを振り切り、なぜか、堂々と歩いていた。
凄腕の剣士は、返り血も浴びないというが、そうなのかもしれない。
普通は、見つかりたくなくて隠れるんじゃないかと思うのに、顔を晒して颯爽と歩いている。
だから見失わずにすんでいた。
素人のぼくでも尾行できている。
長い黒髪が、風に時折なびく。
背が高く、目立っていた。
ただ、足が速いので、ほとんど走るようにしないとついていけない。
完全に素人のぼくが、尾行なんて、無理だったんだろう。
悪魔が急に立ち止まったので、走っていたぼくは止まれずに、背中にぶつかっていってしまった。
「どういうつもりだ。死にたくなければ去れ」
静かな低い声がした。
殺気のような、恐ろしい気配ではなかった。
ぼくなんて、殺す価値もないからだろう。
「聞きたいのはこっちだ。なぜ殺したの? 殺し屋なの?」
勇気を振り絞って、ぼくも言った。
「お前には関係ない。とやかく言われる筋合いはない」
背中で言った。
顔を見て言ってほしい。
そう言う勇気はなくて、黙っていると、
「早く行け。巻き込まれるぞ」
鋭い声に、かえって棒立ちになってしまった。
振り向きざまに、横に吹っ飛ばされる。
何が起こったのか、一瞬わからず、無様に道に倒れ込んだ。
起き上がって振り返ってみると、悪魔が騎士たちに取り囲まれていた。
王さまの護衛騎士だ。
毎日のように、王さまを護衛する姿を見ているから間違いない。
騎士たちも必死だ。
王さまをむざむざと殺されては、沽券に関わる。
「賞金稼ぎのグレンだな。誰に頼まれた。言え!」
悪魔は、グレンという名前らしい。
黙って剣を抜く。
言い訳など一切しない。
「俺を斬って手柄にせよ」
「小癪な」
町の通りが戦場になった。
グレンの剣がキラッキラッと日の光を反射して光った。
騎士も剣を振るっているのに、なぜか、グレンの剣しか目に入ってこない。
最強を誇る騎士団も、悪魔には敵わないのだ。
ぼくが見ている間に、次々と斬っていく。
血飛沫が舞うのが見えて、棒立ちになる。
あっという間に騎士たちが足元に転がってしまった。
やっぱり悪魔だ。
相手が多かったために、返り血を浴びたグレンがぼくを見た。
目が鋭く、刺すようだった。
怖くて震えたが、かっこよくて震えたのか、どっちなのかわからなかった。
「これでわかっただろう。巻き込まれたくなかったら、家に帰るんだ」
「・・・」
ぼくは夢中で首を振った。
なんでだろう。
離れたくなかったんだ。
もう、帰らない。
帰れない。
そのままいたって、王さまを死なせた罪で、断罪されるかもしれないのだ。
どっちにしても、もう、ぼくは落ちたのだ。
悪魔のせいじゃない。
選んだのは、ぼくだ。
仕送りが途絶えて、親が文句を言うだろうが、構わない。
これまで十分に尽くしてきたつもりだ。
こんな時ぐらい、好きにさせてもらう。
悪魔は騎士たちを振り切り、なぜか、堂々と歩いていた。
凄腕の剣士は、返り血も浴びないというが、そうなのかもしれない。
普通は、見つかりたくなくて隠れるんじゃないかと思うのに、顔を晒して颯爽と歩いている。
だから見失わずにすんでいた。
素人のぼくでも尾行できている。
長い黒髪が、風に時折なびく。
背が高く、目立っていた。
ただ、足が速いので、ほとんど走るようにしないとついていけない。
完全に素人のぼくが、尾行なんて、無理だったんだろう。
悪魔が急に立ち止まったので、走っていたぼくは止まれずに、背中にぶつかっていってしまった。
「どういうつもりだ。死にたくなければ去れ」
静かな低い声がした。
殺気のような、恐ろしい気配ではなかった。
ぼくなんて、殺す価値もないからだろう。
「聞きたいのはこっちだ。なぜ殺したの? 殺し屋なの?」
勇気を振り絞って、ぼくも言った。
「お前には関係ない。とやかく言われる筋合いはない」
背中で言った。
顔を見て言ってほしい。
そう言う勇気はなくて、黙っていると、
「早く行け。巻き込まれるぞ」
鋭い声に、かえって棒立ちになってしまった。
振り向きざまに、横に吹っ飛ばされる。
何が起こったのか、一瞬わからず、無様に道に倒れ込んだ。
起き上がって振り返ってみると、悪魔が騎士たちに取り囲まれていた。
王さまの護衛騎士だ。
毎日のように、王さまを護衛する姿を見ているから間違いない。
騎士たちも必死だ。
王さまをむざむざと殺されては、沽券に関わる。
「賞金稼ぎのグレンだな。誰に頼まれた。言え!」
悪魔は、グレンという名前らしい。
黙って剣を抜く。
言い訳など一切しない。
「俺を斬って手柄にせよ」
「小癪な」
町の通りが戦場になった。
グレンの剣がキラッキラッと日の光を反射して光った。
騎士も剣を振るっているのに、なぜか、グレンの剣しか目に入ってこない。
最強を誇る騎士団も、悪魔には敵わないのだ。
ぼくが見ている間に、次々と斬っていく。
血飛沫が舞うのが見えて、棒立ちになる。
あっという間に騎士たちが足元に転がってしまった。
やっぱり悪魔だ。
相手が多かったために、返り血を浴びたグレンがぼくを見た。
目が鋭く、刺すようだった。
怖くて震えたが、かっこよくて震えたのか、どっちなのかわからなかった。
「これでわかっただろう。巻き込まれたくなかったら、家に帰るんだ」
「・・・」
ぼくは夢中で首を振った。
なんでだろう。
離れたくなかったんだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる