【旧版】桃色恋華

美和優希

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第7章

桃色恋華(3)

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 ニューヨークでのライブは大いに盛り上がり、NEVERの初めての海外ライブは、大成功を遂げた。


「大成功やぁ! みんなお疲れ~」


 ニューヨークを後にして、帰りの飛行機でカイトは上機嫌だった。


「ほんとほんと! はじめは英語とか話せね~って感じだったけど、頑張った甲斐ありだな!」


 ヒロもカイトと同じように続ける。


「誰かさんは相変わらず片言だけどな」

 シンジは意地悪な声色で言い拓人を見つめる。


「うるせぇよ……俺だってこれでも頑張ったんだ……」

 拓人はどんどん小さくなるアメリカを見つめる。


「拓人、ステージの上で誰か探してた?」

 隣に座ってたハルキがそっと拓人に耳打ちする。


 ハルキにはこういうの、すぐバレるんだよな──。


「……アメリカだから……居るかなっとか思ってさ……居るわけねぇのにな」

 少しだけ涙で視界が滲む。


「そうか。拓人は本当一途だよね。この春でもうすぐ2年が経とうとしているのにずっと想い続けてさ」


「悪いか?」


「そうじゃなくてさ、辛くないかなって」


「辛いよ……すげぇ辛い……でも、それでも好きなんだ。忘れられねぇんだよ。例え一生何の連絡も来なかったとしても、なんかこの気持ち変わんねぇ気する……」


「拓人らしいね。余計な心配してごめんね」

 ハルキはそれ以上何も言わなかった。



 ハルキが心配してくれるのも無理はない。


 カイトやヒロにだって、この前言われたんだ。


 確かニューヨークに来る前くらいだったかな――


 ハルキが用事で先に帰って、残りの4人でカイトの家で飲んでた時のことだ。



「そういえばさ~拓人って新しい女作らねぇの?」


「俺も思っててんけど、あの子おらへんなってから2年くらい経つんちゃう?」

 ヒロとカイトが続けざまに口を開く。


「作らねぇよ。正確にはあと2ヶ月ちょいで2年だ!」


「もうそんな経つのか……」

 シンジが少し驚いたような口調でしみじみと言った。



「拓人もほんっと変なとこまじめだよな~。寂しさ紛らわすために他の女作って、本当に桃華ちゃんが戻ってきたら桃華ちゃんに戻ればいいのに~」


 ヒロは軽い口調でそう言って、グビッと酒を喉に流し込む。


「おまえなぁ……俺はそんなことしねぇよ。まったく、ヒロは女にだらしなさすぎだ。よくそれで恨まれたりしねぇよな」


「俺、上手いことやってるからな!」


 ヒロは得意げに笑うと、拓人に親指を立ててみせた。


(誰も褒めてねぇし……)

 拓人は心の中でそう呟きながら、手元の酒を飲み干した。



「そういえばまじめと言えばカイトもまじめだよなぁ!」


「ちょっ、ヒロ! 拓人の前では言うたらあかん言うとるやろ!」


 ヒロの発言に、カイトが慌ててヒロの口を塞ぐ。



「なんだよ、カイトにも好きな奴居るのか?」


「まあな……」


 拓人の言葉に、カイトは不機嫌そうに返事を返す。


「そんな怒らなくてもいいだろ? 俺、そんなに気に障る言い方したか?」


「拓人、違うって! カイトの好きな奴、拓人にゾッコンだから妬いてるだけだよ! もう片想い何年目だよって感じ!」


「ヒロ! 余計なこと言うなや!!」

 カイトの顔は真っ赤だ。


「何だよ、俺も関係あるのかよ。でも、カイトにそんな人が居たなんてな。どんな人なんだ?」


「おまえには絶対言わへん!!」


 拓人はカイトにそう言われ、口を閉ざすしかなかった。


 拓人は芋づる式にそんな会話を思い出し、思わず笑った。


「拓人? 大丈夫?」


「悪い。思い出し笑い」


「そうか」


 ハルキとそれだけ会話を交わすと、拓人はそのまま眠りに就いた。



 眩しい陽射しに目を明けると懐かしい日本に到着していた──。
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