91 / 95
第7章
桃色恋華(3)
しおりを挟む
ニューヨークでのライブは大いに盛り上がり、NEVERの初めての海外ライブは、大成功を遂げた。
「大成功やぁ! みんなお疲れ~」
ニューヨークを後にして、帰りの飛行機でカイトは上機嫌だった。
「ほんとほんと! はじめは英語とか話せね~って感じだったけど、頑張った甲斐ありだな!」
ヒロもカイトと同じように続ける。
「誰かさんは相変わらず片言だけどな」
シンジは意地悪な声色で言い拓人を見つめる。
「うるせぇよ……俺だってこれでも頑張ったんだ……」
拓人はどんどん小さくなるアメリカを見つめる。
「拓人、ステージの上で誰か探してた?」
隣に座ってたハルキがそっと拓人に耳打ちする。
ハルキにはこういうの、すぐバレるんだよな──。
「……アメリカだから……居るかなっとか思ってさ……居るわけねぇのにな」
少しだけ涙で視界が滲む。
「そうか。拓人は本当一途だよね。この春でもうすぐ2年が経とうとしているのにずっと想い続けてさ」
「悪いか?」
「そうじゃなくてさ、辛くないかなって」
「辛いよ……すげぇ辛い……でも、それでも好きなんだ。忘れられねぇんだよ。例え一生何の連絡も来なかったとしても、なんかこの気持ち変わんねぇ気する……」
「拓人らしいね。余計な心配してごめんね」
ハルキはそれ以上何も言わなかった。
ハルキが心配してくれるのも無理はない。
カイトやヒロにだって、この前言われたんだ。
確かニューヨークに来る前くらいだったかな――
ハルキが用事で先に帰って、残りの4人でカイトの家で飲んでた時のことだ。
「そういえばさ~拓人って新しい女作らねぇの?」
「俺も思っててんけど、あの子おらへんなってから2年くらい経つんちゃう?」
ヒロとカイトが続けざまに口を開く。
「作らねぇよ。正確にはあと2ヶ月ちょいで2年だ!」
「もうそんな経つのか……」
シンジが少し驚いたような口調でしみじみと言った。
「拓人もほんっと変なとこまじめだよな~。寂しさ紛らわすために他の女作って、本当に桃華ちゃんが戻ってきたら桃華ちゃんに戻ればいいのに~」
ヒロは軽い口調でそう言って、グビッと酒を喉に流し込む。
「おまえなぁ……俺はそんなことしねぇよ。まったく、ヒロは女にだらしなさすぎだ。よくそれで恨まれたりしねぇよな」
「俺、上手いことやってるからな!」
ヒロは得意げに笑うと、拓人に親指を立ててみせた。
(誰も褒めてねぇし……)
拓人は心の中でそう呟きながら、手元の酒を飲み干した。
「そういえばまじめと言えばカイトもまじめだよなぁ!」
「ちょっ、ヒロ! 拓人の前では言うたらあかん言うとるやろ!」
ヒロの発言に、カイトが慌ててヒロの口を塞ぐ。
「なんだよ、カイトにも好きな奴居るのか?」
「まあな……」
拓人の言葉に、カイトは不機嫌そうに返事を返す。
「そんな怒らなくてもいいだろ? 俺、そんなに気に障る言い方したか?」
「拓人、違うって! カイトの好きな奴、拓人にゾッコンだから妬いてるだけだよ! もう片想い何年目だよって感じ!」
「ヒロ! 余計なこと言うなや!!」
カイトの顔は真っ赤だ。
「何だよ、俺も関係あるのかよ。でも、カイトにそんな人が居たなんてな。どんな人なんだ?」
「おまえには絶対言わへん!!」
拓人はカイトにそう言われ、口を閉ざすしかなかった。
拓人は芋づる式にそんな会話を思い出し、思わず笑った。
「拓人? 大丈夫?」
「悪い。思い出し笑い」
「そうか」
ハルキとそれだけ会話を交わすと、拓人はそのまま眠りに就いた。
眩しい陽射しに目を明けると懐かしい日本に到着していた──。
「大成功やぁ! みんなお疲れ~」
ニューヨークを後にして、帰りの飛行機でカイトは上機嫌だった。
「ほんとほんと! はじめは英語とか話せね~って感じだったけど、頑張った甲斐ありだな!」
ヒロもカイトと同じように続ける。
「誰かさんは相変わらず片言だけどな」
シンジは意地悪な声色で言い拓人を見つめる。
「うるせぇよ……俺だってこれでも頑張ったんだ……」
拓人はどんどん小さくなるアメリカを見つめる。
「拓人、ステージの上で誰か探してた?」
隣に座ってたハルキがそっと拓人に耳打ちする。
ハルキにはこういうの、すぐバレるんだよな──。
「……アメリカだから……居るかなっとか思ってさ……居るわけねぇのにな」
少しだけ涙で視界が滲む。
「そうか。拓人は本当一途だよね。この春でもうすぐ2年が経とうとしているのにずっと想い続けてさ」
「悪いか?」
「そうじゃなくてさ、辛くないかなって」
「辛いよ……すげぇ辛い……でも、それでも好きなんだ。忘れられねぇんだよ。例え一生何の連絡も来なかったとしても、なんかこの気持ち変わんねぇ気する……」
「拓人らしいね。余計な心配してごめんね」
ハルキはそれ以上何も言わなかった。
ハルキが心配してくれるのも無理はない。
カイトやヒロにだって、この前言われたんだ。
確かニューヨークに来る前くらいだったかな――
ハルキが用事で先に帰って、残りの4人でカイトの家で飲んでた時のことだ。
「そういえばさ~拓人って新しい女作らねぇの?」
「俺も思っててんけど、あの子おらへんなってから2年くらい経つんちゃう?」
ヒロとカイトが続けざまに口を開く。
「作らねぇよ。正確にはあと2ヶ月ちょいで2年だ!」
「もうそんな経つのか……」
シンジが少し驚いたような口調でしみじみと言った。
「拓人もほんっと変なとこまじめだよな~。寂しさ紛らわすために他の女作って、本当に桃華ちゃんが戻ってきたら桃華ちゃんに戻ればいいのに~」
ヒロは軽い口調でそう言って、グビッと酒を喉に流し込む。
「おまえなぁ……俺はそんなことしねぇよ。まったく、ヒロは女にだらしなさすぎだ。よくそれで恨まれたりしねぇよな」
「俺、上手いことやってるからな!」
ヒロは得意げに笑うと、拓人に親指を立ててみせた。
(誰も褒めてねぇし……)
拓人は心の中でそう呟きながら、手元の酒を飲み干した。
「そういえばまじめと言えばカイトもまじめだよなぁ!」
「ちょっ、ヒロ! 拓人の前では言うたらあかん言うとるやろ!」
ヒロの発言に、カイトが慌ててヒロの口を塞ぐ。
「なんだよ、カイトにも好きな奴居るのか?」
「まあな……」
拓人の言葉に、カイトは不機嫌そうに返事を返す。
「そんな怒らなくてもいいだろ? 俺、そんなに気に障る言い方したか?」
「拓人、違うって! カイトの好きな奴、拓人にゾッコンだから妬いてるだけだよ! もう片想い何年目だよって感じ!」
「ヒロ! 余計なこと言うなや!!」
カイトの顔は真っ赤だ。
「何だよ、俺も関係あるのかよ。でも、カイトにそんな人が居たなんてな。どんな人なんだ?」
「おまえには絶対言わへん!!」
拓人はカイトにそう言われ、口を閉ざすしかなかった。
拓人は芋づる式にそんな会話を思い出し、思わず笑った。
「拓人? 大丈夫?」
「悪い。思い出し笑い」
「そうか」
ハルキとそれだけ会話を交わすと、拓人はそのまま眠りに就いた。
眩しい陽射しに目を明けると懐かしい日本に到着していた──。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる