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第5章
闇夜の悲劇(4)
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「ここだね。着いたよ」
ハルキの声に長い沈黙は破られた。
「結構距離あったな」
シンジは少し落ち着かない様子で素早く車から降りた。
「ハルキぃ~。拓人、大丈夫かなぁ?」
ヒロが車から降りようとするハルキの腕を掴む。
「そんなの俺にも分からないよ! こんなところでぐずぐずしてないで、早く行こう!」
ハルキはメソメソするヒロを振り払って車を降り、ヒロもそれに続いた。
病院内に入ると、誰も居ない待合にカイトがひとり座っていた。
「おぅ! みんな待っとったで! あれ? 桃華ちゃんは?」
「夜遅くなりそうだし、桃華ちゃんには悪いけど先に帰ってもらったよ。それより拓人は……?」
ハルキが心配そうに尋ねると、カイトは力強い声で答えた。
「拓人は無事や! 今奥の部屋で処置中や! やけど……」
「どうした?」
突然肩を落としたカイトに、シンジが口を開く。
「……そうは言ってもな、やっぱり傷が大きくて深いから1週間くらいは入院やて……」
「そうか、今回ばかりは仕方ないね」
ハルキも残念そうに言った。
「俺達もついていながら、結局この結果か……」
シンジは病院の床を見ながら、悔しそうに呟く。
「誰も死なへんかったことが唯一の救いやな。ほなみんな、拓人のとこ行くか?」
カイトの誘導で、拓人が処置を受けている部屋の前に向かう。
ちょうど4人が処置室の前に着いた時、処置室のドアが開いて、奥からやや年配の外科医の男性が姿を現した。
「おや? 皆さん杉本さんのお知り合いですか?」
4人が頷くと、中へ通された。
処置室に入ると、拓人が奥のベッドで横たわっているのが確認できた。
外科医は傍にあった診察用の丸椅子に座り、口を開いた。
「私は外科医の白石です。杉本さんですが、傷さえ治れば今後特に支障はないかと思われます。ただそうは言っても、傷口が深くて大きいので最低でも1週間は安静にしてもらうためにも入院してもらいます」
「そうですか。夜遅くにありがとうございました」
カイトが代表して御礼を述べた。
外科医の白石は、この後、少しだけ面会の時間をくれた。
「みんなごめんな」
拓人が処置を受けたベッドで力無い声で謝った。
「ええって! 無事で何よりや!」
「松本さんには俺らから言っておくし、仕事もできるだけ穴があかないように調整するからさ」
「俺らがついてたのに結局何もできなくてすまない」
カイトとハルキとシンジが次々に口にする言葉に拓人は内心ホッとした。
「たくとぉぉ~良かったよぉぉ~」
ヒロは大泣きで拓人に抱き着いた。
「うわ……っ、ヒロ! 気持ちは嬉しいけど、まだ傷口が痛むから……」
「ほんまヒロはしゃーないな! これで拓人悪化したらおまえのせいやで!」
カイトはヒロを拓人から引き剥がしながら言う。
「桃華は……?」
拓人が心配そうに口を開く。
「俺らで無事に家に送り届けたよ」
ハルキが答える。
「そうか。また桃華を傷つけてしまったな……」
「また夜が明けてからでも桃華ちゃんに連絡してあげなよ。かなり心配してたからさ」
「さっきの医者、桃華のお父さんだったみたい……」
「「マジで!?」」
4人は一斉に声を上げ、目を見開く。
「歌手のTAKUかって聞かれたから、仕方なく頷いたら、いつも娘をありがとうって言われたんだ。はじめは何のことか分からなかったけど、いろいろ話してたら桃華のお父さんだって分かった」
「せやったんや! 全然分からへんかったわ! ってかあの医者えらい年配やったやん! おじいちゃんの間違いちゃうか?」
カイトが白石医師が居ないことを確認して言った。
カイトの発言にみんなは軽く笑い、拓人に各々
「早く治せよ!」
と声をかけた。
「今日は本当にごめん。何かあったら連絡してくれよ! ありがとう」
拓人は最後にそう言って、4人を見送った。
4人が拓人と面会を終えると、拓人は看護師により病室へ運ばれた。
4人は車に乗り込むと、今夜の事件について事務所に連絡を入れた。
ハルキの声に長い沈黙は破られた。
「結構距離あったな」
シンジは少し落ち着かない様子で素早く車から降りた。
「ハルキぃ~。拓人、大丈夫かなぁ?」
ヒロが車から降りようとするハルキの腕を掴む。
「そんなの俺にも分からないよ! こんなところでぐずぐずしてないで、早く行こう!」
ハルキはメソメソするヒロを振り払って車を降り、ヒロもそれに続いた。
病院内に入ると、誰も居ない待合にカイトがひとり座っていた。
「おぅ! みんな待っとったで! あれ? 桃華ちゃんは?」
「夜遅くなりそうだし、桃華ちゃんには悪いけど先に帰ってもらったよ。それより拓人は……?」
ハルキが心配そうに尋ねると、カイトは力強い声で答えた。
「拓人は無事や! 今奥の部屋で処置中や! やけど……」
「どうした?」
突然肩を落としたカイトに、シンジが口を開く。
「……そうは言ってもな、やっぱり傷が大きくて深いから1週間くらいは入院やて……」
「そうか、今回ばかりは仕方ないね」
ハルキも残念そうに言った。
「俺達もついていながら、結局この結果か……」
シンジは病院の床を見ながら、悔しそうに呟く。
「誰も死なへんかったことが唯一の救いやな。ほなみんな、拓人のとこ行くか?」
カイトの誘導で、拓人が処置を受けている部屋の前に向かう。
ちょうど4人が処置室の前に着いた時、処置室のドアが開いて、奥からやや年配の外科医の男性が姿を現した。
「おや? 皆さん杉本さんのお知り合いですか?」
4人が頷くと、中へ通された。
処置室に入ると、拓人が奥のベッドで横たわっているのが確認できた。
外科医は傍にあった診察用の丸椅子に座り、口を開いた。
「私は外科医の白石です。杉本さんですが、傷さえ治れば今後特に支障はないかと思われます。ただそうは言っても、傷口が深くて大きいので最低でも1週間は安静にしてもらうためにも入院してもらいます」
「そうですか。夜遅くにありがとうございました」
カイトが代表して御礼を述べた。
外科医の白石は、この後、少しだけ面会の時間をくれた。
「みんなごめんな」
拓人が処置を受けたベッドで力無い声で謝った。
「ええって! 無事で何よりや!」
「松本さんには俺らから言っておくし、仕事もできるだけ穴があかないように調整するからさ」
「俺らがついてたのに結局何もできなくてすまない」
カイトとハルキとシンジが次々に口にする言葉に拓人は内心ホッとした。
「たくとぉぉ~良かったよぉぉ~」
ヒロは大泣きで拓人に抱き着いた。
「うわ……っ、ヒロ! 気持ちは嬉しいけど、まだ傷口が痛むから……」
「ほんまヒロはしゃーないな! これで拓人悪化したらおまえのせいやで!」
カイトはヒロを拓人から引き剥がしながら言う。
「桃華は……?」
拓人が心配そうに口を開く。
「俺らで無事に家に送り届けたよ」
ハルキが答える。
「そうか。また桃華を傷つけてしまったな……」
「また夜が明けてからでも桃華ちゃんに連絡してあげなよ。かなり心配してたからさ」
「さっきの医者、桃華のお父さんだったみたい……」
「「マジで!?」」
4人は一斉に声を上げ、目を見開く。
「歌手のTAKUかって聞かれたから、仕方なく頷いたら、いつも娘をありがとうって言われたんだ。はじめは何のことか分からなかったけど、いろいろ話してたら桃華のお父さんだって分かった」
「せやったんや! 全然分からへんかったわ! ってかあの医者えらい年配やったやん! おじいちゃんの間違いちゃうか?」
カイトが白石医師が居ないことを確認して言った。
カイトの発言にみんなは軽く笑い、拓人に各々
「早く治せよ!」
と声をかけた。
「今日は本当にごめん。何かあったら連絡してくれよ! ありがとう」
拓人は最後にそう言って、4人を見送った。
4人が拓人と面会を終えると、拓人は看護師により病室へ運ばれた。
4人は車に乗り込むと、今夜の事件について事務所に連絡を入れた。
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