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第4章
触れ合う心(2)
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桃華が目を固くつむり、ナイフで手首を切り出した時──。
──コンコン。
「桃華?」
桃華の部屋の扉が叩かれる音とともに聞こえた母親の声に、
桃華はとっさに手首からナイフを離し、ナイフをベッドの下に隠した。
「あのね、悪いと思ったんだけど、拓人くんと会ってみない? ほら、前拓人くんと会ってた時、桃華すごく元気になったじゃない! やっぱり、嫌かな? 本当に嫌なら、拓人くんももう来ないようにするって言ってくれてるんだけど……」
母親の言葉を聞き、桃華は戸惑った。
(──今会わなかったら、もう二度と拓人さんと会えないかもしれないってこと……?)
その方がいいのかもしれない。
その方が──。
でも──。
もう一度……。
もう一度だけ最後に会いたい──。
「ううん嫌じゃない。会いたい……でも、ちょっと待って……」
桃華は急いでティッシュで手首から垂れる血を拭い、血のついたティッシュをごみ箱に隠した。
「……どうぞ」
結局桃華は自分の気持ちに嘘をつき通せず、拓人は桃華の部屋の中に通される。
「桃華ちゃん……」
「……久しぶり」
桃華は最近拓人を避けていたことに気まずさを感じて、素っ気なく返事を返してしまう。
「隣座ってもいい?」
拓人の問いに桃華は静かに頷き、拓人は桃華の隣に腰を下ろす。
「桃華ちゃんのお母さんから聞いたよ。やっぱり、辛いよな……」
拓人は相変わらず優しい。
桃華は何て答えていいか分からずに黙ったままうつむいている。
「俺で良ければさ、話聞くよ。どんなに時間かかっても……それで桃華ちゃんが少しでも楽になれるのなら……」
「……ないで……」
桃華が小さな声で何かを訴えたが、はっきり聞こえない。
「ごめん、何て言ったの?」
拓人が桃華を覗き込む。
「これ以上優しくしないで……辛いの……」
桃華の目から涙がこぼれた。
「桃華ちゃん、ごめんな。やっぱり、迷惑だったよな……」
悲しそうな表情を浮かべる拓人に、桃華は慌てて首を横に振った。
「優しくされると……拓人さんから離れられなくなるから……」
「……どういうこと?」
「私といると……拓人さんは……傷ついてしまう……だから……離れなきゃって……今日で……会うの最後にしなきゃって」
桃華の声は泣いてるせいもあり途切れ途切れだった。
「何だよそれ。ミカに言われたのか?」
桃華は涙を流したまま応答がない。
「俺、桃華ちゃんに会うのいつもすごく楽しみにしてるんだよ? だからそんな俺が傷つくとか……そんなのないから」
拓人が桃華に近づくと、桃華はとっさに拓人から身を離した。
その時僅かに見えた桃華の左手首の服の袖が血の色に染まっているのを、拓人は見逃さなかった。
「大丈夫か!? 怪我してる……」
──パシッ。
拓人が桃華の左手首の怪我を見ようと手を伸ばすが、その手は桃華によってはたかれてしまった。
「……え? 桃華ちゃん……?」
「見ないでっ!」
桃華は左手首を隠すように身体を丸めた。
──コンコン。
「桃華?」
桃華の部屋の扉が叩かれる音とともに聞こえた母親の声に、
桃華はとっさに手首からナイフを離し、ナイフをベッドの下に隠した。
「あのね、悪いと思ったんだけど、拓人くんと会ってみない? ほら、前拓人くんと会ってた時、桃華すごく元気になったじゃない! やっぱり、嫌かな? 本当に嫌なら、拓人くんももう来ないようにするって言ってくれてるんだけど……」
母親の言葉を聞き、桃華は戸惑った。
(──今会わなかったら、もう二度と拓人さんと会えないかもしれないってこと……?)
その方がいいのかもしれない。
その方が──。
でも──。
もう一度……。
もう一度だけ最後に会いたい──。
「ううん嫌じゃない。会いたい……でも、ちょっと待って……」
桃華は急いでティッシュで手首から垂れる血を拭い、血のついたティッシュをごみ箱に隠した。
「……どうぞ」
結局桃華は自分の気持ちに嘘をつき通せず、拓人は桃華の部屋の中に通される。
「桃華ちゃん……」
「……久しぶり」
桃華は最近拓人を避けていたことに気まずさを感じて、素っ気なく返事を返してしまう。
「隣座ってもいい?」
拓人の問いに桃華は静かに頷き、拓人は桃華の隣に腰を下ろす。
「桃華ちゃんのお母さんから聞いたよ。やっぱり、辛いよな……」
拓人は相変わらず優しい。
桃華は何て答えていいか分からずに黙ったままうつむいている。
「俺で良ければさ、話聞くよ。どんなに時間かかっても……それで桃華ちゃんが少しでも楽になれるのなら……」
「……ないで……」
桃華が小さな声で何かを訴えたが、はっきり聞こえない。
「ごめん、何て言ったの?」
拓人が桃華を覗き込む。
「これ以上優しくしないで……辛いの……」
桃華の目から涙がこぼれた。
「桃華ちゃん、ごめんな。やっぱり、迷惑だったよな……」
悲しそうな表情を浮かべる拓人に、桃華は慌てて首を横に振った。
「優しくされると……拓人さんから離れられなくなるから……」
「……どういうこと?」
「私といると……拓人さんは……傷ついてしまう……だから……離れなきゃって……今日で……会うの最後にしなきゃって」
桃華の声は泣いてるせいもあり途切れ途切れだった。
「何だよそれ。ミカに言われたのか?」
桃華は涙を流したまま応答がない。
「俺、桃華ちゃんに会うのいつもすごく楽しみにしてるんだよ? だからそんな俺が傷つくとか……そんなのないから」
拓人が桃華に近づくと、桃華はとっさに拓人から身を離した。
その時僅かに見えた桃華の左手首の服の袖が血の色に染まっているのを、拓人は見逃さなかった。
「大丈夫か!? 怪我してる……」
──パシッ。
拓人が桃華の左手首の怪我を見ようと手を伸ばすが、その手は桃華によってはたかれてしまった。
「……え? 桃華ちゃん……?」
「見ないでっ!」
桃華は左手首を隠すように身体を丸めた。
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