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9*本物の幼なじみ
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「なんかごめんな~! うちみたいなんが突然お邪魔して」
喫茶店で案内された席につき、各々注文を頼んだあと、申し訳なさげに口を開く葉純さん。
「今更それ言うか? そういうとこ、ほんま昔から変わらへんよな」
すかさず隣で突っ込むようにこうちゃんは言う。
昔から、って……。
葉純さんの口から幼なじみとは聞いてたけど、二人を見てて本当にそうなのかな、と感じさせられる。
「まぁそう言わんとこれも何かの縁やし、自己紹介しよか! うちは、瀬戸 葉純。光樹が関西に住んでた間、ずっとマンションの部屋がお隣同士やったんやで」
「へ? 隣?」
驚いたように口を開くのは、相原くん。
「せやねん。やから、小学校入学前からの幼なじみってことになるかな。とにかく光樹とは、長い付き合いやねん。みんなとも同い年やから、気軽に話してな!」
小学校入学前……。
それは、ちょうど幼いあたしがこうちゃんとお別れしたあの時期と重なった。
そのあと、葉純さんの自己紹介に続き、あたしたちも簡単に自己紹介をする。
だけど、あたしが自分の名前を告げたとき、葉純さんの動きがピタリと止まった。
「千紗、ってもしかして……」
そう言って、まじまじとあたしを見つめる葉純さん。
黒目がちの大きな瞳で見つめられて、思わず硬直する。
「なんや葉純。そんな凝視したら、ちぃに穴開いてまうで?」
あたしの様子に気づいたのであろう、こうちゃんがそれとなく葉純さんに注意を促す。
一方で、葉純さんは頭の中で何かが結び付いたかのように目を見開いた。
「なぁ光樹、ちぃってまさかこの子やったん?」
信じられないと言わんばかりに口を開く葉純さん。
「せやで? 可愛い奴やろ?」
だけど、こうちゃんはそんな葉純さんにものともせず、そう言って笑ってみせた。
か、可愛い、って……!
こんなところでそんな冗談言わなくてもいいのに……!
っていうか、葉純さんがあたしの名前に反応したってことは、まさかこうちゃんは、葉純さんにあたしのことを話してたの!?
なんで!?
何がどうなってるのかよくわからなくて、頭がパンクしそう……。
だけどこうちゃんはそれ以上何も言わないし、葉純さんは相変わらずあたしを凝視していて、どうしていいかわからなかった。
っていうか葉純さん、何か怖いんですけど……っ!
あたしがその視線に耐えられなくて、隣に座る実里に助けを求めようとしたところ
「お待たせいたしました!」
と、あたしの心と不釣り合いに明るい声が響いて、一人一人の前にパフェが置かれた。
自己紹介はあたしが最後だったのもあって、パフェが運ばれて来たらさっきまでの異様な空気は消え去った。
あたしの目の前にはチョコレートソースのたっぷりかかったチョコバナナパフェが置かれている。
「相原、見かけによらずイチゴパフェやなんて、なんかお茶目やな」
相原くんの目の前に置かれた、可愛らしいピンク色のパフェに意地悪くそう言うのはこうちゃんだ。
「そういうお前こそ、人のこと言えねぇだろ? なんだよ、プリンパフェって」
「まぁええやん、好きなんやから!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししてやるよ」
そんなこうちゃんと相原くんの会話に思わず笑いそうになる。
こうちゃんの頼んだプリンパフェは、豪華に一番上に大きなプリンが乗っている、言わば名前の通りのパフェだ。
そのプリンの上には生クリームとさくらんぼのトッピングまでされていて、一見、プリンアラモードにも見えなくもない。
意外とこのメンバーの男子は、二人とも甘党みたいだ……。
「光樹と相原くんって、何ていうかめっちゃ仲良いんやな!」
実里と同じ抹茶パフェを食べている葉純さんが、こうちゃんと相原くんと見て口を開く。
「言うほど仲良いわけちゃうで?」
「仲良いわけねぇだろ」
そこで二人して声をそろえてそう言うもんだから、葉純さんはもちろん、あたしも実里もプッと吹き出すように笑った。
喫茶店で案内された席につき、各々注文を頼んだあと、申し訳なさげに口を開く葉純さん。
「今更それ言うか? そういうとこ、ほんま昔から変わらへんよな」
すかさず隣で突っ込むようにこうちゃんは言う。
昔から、って……。
葉純さんの口から幼なじみとは聞いてたけど、二人を見てて本当にそうなのかな、と感じさせられる。
「まぁそう言わんとこれも何かの縁やし、自己紹介しよか! うちは、瀬戸 葉純。光樹が関西に住んでた間、ずっとマンションの部屋がお隣同士やったんやで」
「へ? 隣?」
驚いたように口を開くのは、相原くん。
「せやねん。やから、小学校入学前からの幼なじみってことになるかな。とにかく光樹とは、長い付き合いやねん。みんなとも同い年やから、気軽に話してな!」
小学校入学前……。
それは、ちょうど幼いあたしがこうちゃんとお別れしたあの時期と重なった。
そのあと、葉純さんの自己紹介に続き、あたしたちも簡単に自己紹介をする。
だけど、あたしが自分の名前を告げたとき、葉純さんの動きがピタリと止まった。
「千紗、ってもしかして……」
そう言って、まじまじとあたしを見つめる葉純さん。
黒目がちの大きな瞳で見つめられて、思わず硬直する。
「なんや葉純。そんな凝視したら、ちぃに穴開いてまうで?」
あたしの様子に気づいたのであろう、こうちゃんがそれとなく葉純さんに注意を促す。
一方で、葉純さんは頭の中で何かが結び付いたかのように目を見開いた。
「なぁ光樹、ちぃってまさかこの子やったん?」
信じられないと言わんばかりに口を開く葉純さん。
「せやで? 可愛い奴やろ?」
だけど、こうちゃんはそんな葉純さんにものともせず、そう言って笑ってみせた。
か、可愛い、って……!
こんなところでそんな冗談言わなくてもいいのに……!
っていうか、葉純さんがあたしの名前に反応したってことは、まさかこうちゃんは、葉純さんにあたしのことを話してたの!?
なんで!?
何がどうなってるのかよくわからなくて、頭がパンクしそう……。
だけどこうちゃんはそれ以上何も言わないし、葉純さんは相変わらずあたしを凝視していて、どうしていいかわからなかった。
っていうか葉純さん、何か怖いんですけど……っ!
あたしがその視線に耐えられなくて、隣に座る実里に助けを求めようとしたところ
「お待たせいたしました!」
と、あたしの心と不釣り合いに明るい声が響いて、一人一人の前にパフェが置かれた。
自己紹介はあたしが最後だったのもあって、パフェが運ばれて来たらさっきまでの異様な空気は消え去った。
あたしの目の前にはチョコレートソースのたっぷりかかったチョコバナナパフェが置かれている。
「相原、見かけによらずイチゴパフェやなんて、なんかお茶目やな」
相原くんの目の前に置かれた、可愛らしいピンク色のパフェに意地悪くそう言うのはこうちゃんだ。
「そういうお前こそ、人のこと言えねぇだろ? なんだよ、プリンパフェって」
「まぁええやん、好きなんやから!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししてやるよ」
そんなこうちゃんと相原くんの会話に思わず笑いそうになる。
こうちゃんの頼んだプリンパフェは、豪華に一番上に大きなプリンが乗っている、言わば名前の通りのパフェだ。
そのプリンの上には生クリームとさくらんぼのトッピングまでされていて、一見、プリンアラモードにも見えなくもない。
意外とこのメンバーの男子は、二人とも甘党みたいだ……。
「光樹と相原くんって、何ていうかめっちゃ仲良いんやな!」
実里と同じ抹茶パフェを食べている葉純さんが、こうちゃんと相原くんと見て口を開く。
「言うほど仲良いわけちゃうで?」
「仲良いわけねぇだろ」
そこで二人して声をそろえてそう言うもんだから、葉純さんはもちろん、あたしも実里もプッと吹き出すように笑った。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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