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8*関西旅行!?
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ケーキと紅茶をいただいたあと、こうちゃんに連れられて、あたしたちは2階の一室に移動した。
玄関の傍にあった階段を上ってたどり着いた2階には、今居る部屋の他にあと2部屋あるようだった。
「そういやお前って、中学まではここで暮らしてたんか?」
「いや、おとんとおかんの務める会社の近くのマンションを借りて住んどったんや」
相原くんの疑問に答えるこうちゃんに、今度は実里が口を開く。
「じゃあ、今も早瀬くんのお父さんとお母さんはそこに?」
「せやで」
そういやここに来る前、おばあさんは早くにおじいさんを亡くして一人で暮らしてるって言ってたもんね。
こうちゃんの話によると、本来ならこうちゃんのお父さんとお母さんは、こうちゃんの高校への入学と同時にあたしたちの住む町へ異動願いを出していたらしい。
ほとんど決まっていた異動だったが、急な会社の都合でその異動は延期になったそうだ。
「初めはちょいと遅れて転勤になるのかと思いきや、何ヶ月も先や言われて、俺一人出てきたってわけや」
「ってことは、お前って実は一人暮らしだったのか?」
こうちゃんが引っ越して来たときのことも、同居することになったときのことも話していた実里と違い、なにも知らなかった相原くんが驚くのは当然だ。
「まぁ、そういうことになるな」
あたしのお母さんが帰ってきてからは、こうちゃんとの同居は実質的に解消となり、今はお隣さんの関係に戻ったけれど。
相変わらずご飯を一緒に食べる機会は多く、あたしの家を頻繁に出入りしていることに変わりない。
「へぇ! ならさ、今度、俺がお前ん家に遊びに行ってやるから教えろよ!」
まるでおもしろいことを発見したと言いたげな笑みを浮かべて、そんなことを言い出す相原くん。
「はぁ? なんでそんな上から目線やねん」
だけど、相原くんの言い方が気に入らなかったらしいこうちゃんは、少し嫌そうに顔をしかめる。
「細かいこと気にすんなよ! それとも何? 見られたくないものとかあるんじゃねぇの?」
「んなもんあらへんわ!」
散々こうちゃんをいじくり回した相原くんは、とうとうこうちゃんに頭を押さえつけられてしまった。
「ってぇ! お前、何すんだよ!」
「そっちがあれやこれやうるさく言うからやろ!?」
「そんな簡単に沸点達してたら、いつかお前の脳の血管、プッチンいくぞ?」
「余計なお世話や!」
そんなふうにじゃれあうような二人の光景を見ていると、何だかんだ言って二人は仲がいいのかもしれないと思えてくる。
喧嘩するほど仲がいい、とも言うしね!
「はいはい、いつまでもそんなことやってないで、部屋割り決めるんでしょ?」
そう言って円形に座るあたしたち四人の前に、実里が手元の鞄から一枚の白い紙を取り出す。
「えっと、今いるこの部屋とあと2部屋あるんだよね?」
そう言いながら、準備よく筆箱から黒いペンを取り出して、紙に四角を三つ書く実里。
「せやで。まぁ一応どの部屋で寝てもらっても構わへんのやけど、一人ひと部屋あるわけちゃうから、適当に部屋わけなな」
「じゃあ、俺、水嶋と同室な! いでっ!」
こうちゃんの言葉を聞くなり調子よくそう言った相原くんの耳を、実里が容赦なく引っ張り上げる。
「はぁ!? あんた、頭おかしいんじゃないの!? 誰が狼野郎とわかりきってるあんたと千紗を一緒にするっていうのよ!」
「なんだよ、それ。じゃあ、早瀬ならいいって言うのかよ!」
実里から手を離してもらったとはいえ、涙目になりながらそう言う相原くん。
っていうか、なんであたしの同室の相手が相原くんかこうちゃんの二択になってるのよ……!
「まぁ、ちぃがいいなら、俺は構わへんよ」
そう言ってあたしを見るこうちゃん。
だから! なんでそうなるのよ~!
救いを求めるように実里の方を見やると、実里は呆れたようにため息をひとつ落とした。
「千紗にそんな危険なことさせるわけないじゃない。千紗はあたしと同室」
実里はそう言うと、三つ書いた四角のうち、2階の一番奥に当たる部屋にあたしと実里の名前を書き入れた。
「で、あんたは早瀬くんと」
そう言って、真ん中の四角にこうちゃんと相原くんの名前を書き入れる実里。
「はぁ!? 俺、こいつと同室かよ!」
「当たり前でしょ! こういうときは、カップル同士で来てる場合を除いて、女同士男同士で部屋をわけるのが基本なんだから!」
がっくりと肩を落とした相原くんに実里が一喝。
「で、今あたしたちのいる部屋は、みんなが自由に話したり遊んだりできる空間にしたらいいんじゃないかな?」
どう思う? と実里はこうちゃんに意見を求める。
「ええんちゃうかな。ほな、これでいこか!」
「マジでこいつと同室かよ」
「嫌なら、相原は外で寝てもろうてもええで?」
いつまでも愚痴をこぼす相原くんに、冗談めかしてそんなことを言うこうちゃん。
「べ、別に、仕方ねぇからお前と同室になってやるよ」
強がって言う相原くんの姿に、あたしと実里は顔を見合わせて笑いあった。
その日の夜は、こうちゃんのおばあさんの作る夕飯をいただいた。
順にお風呂にも入らせてもらったあと、あたしたちは部屋割りでみんなの部屋となったところで、トランプをして過ごす。
「くっそう! なんでまた俺がババなんだよ!」
「しゃあないやろ? 相原が異様に弱いんやから」
嘆く相原くんを一瞥して、カードを切るのはこうちゃんだ。
とりあえずみんなルールを知ってたババ抜きをしたんだけど、5回中5回とも相原くんがババを引き当ててしまったんだ。
ケーキと紅茶をいただいたあと、こうちゃんに連れられて、あたしたちは2階の一室に移動した。
玄関の傍にあった階段を上ってたどり着いた2階には、今居る部屋の他にあと2部屋あるようだった。
「そういやお前って、中学まではここで暮らしてたんか?」
「いや、おとんとおかんの務める会社の近くのマンションを借りて住んどったんや」
相原くんの疑問に答えるこうちゃんに、今度は実里が口を開く。
「じゃあ、今も早瀬くんのお父さんとお母さんはそこに?」
「せやで」
そういやここに来る前、おばあさんは早くにおじいさんを亡くして一人で暮らしてるって言ってたもんね。
こうちゃんの話によると、本来ならこうちゃんのお父さんとお母さんは、こうちゃんの高校への入学と同時にあたしたちの住む町へ異動願いを出していたらしい。
ほとんど決まっていた異動だったが、急な会社の都合でその異動は延期になったそうだ。
「初めはちょいと遅れて転勤になるのかと思いきや、何ヶ月も先や言われて、俺一人出てきたってわけや」
「ってことは、お前って実は一人暮らしだったのか?」
こうちゃんが引っ越して来たときのことも、同居することになったときのことも話していた実里と違い、なにも知らなかった相原くんが驚くのは当然だ。
「まぁ、そういうことになるな」
あたしのお母さんが帰ってきてからは、こうちゃんとの同居は実質的に解消となり、今はお隣さんの関係に戻ったけれど。
相変わらずご飯を一緒に食べる機会は多く、あたしの家を頻繁に出入りしていることに変わりない。
「へぇ! ならさ、今度、俺がお前ん家に遊びに行ってやるから教えろよ!」
まるでおもしろいことを発見したと言いたげな笑みを浮かべて、そんなことを言い出す相原くん。
「はぁ? なんでそんな上から目線やねん」
だけど、相原くんの言い方が気に入らなかったらしいこうちゃんは、少し嫌そうに顔をしかめる。
「細かいこと気にすんなよ! それとも何? 見られたくないものとかあるんじゃねぇの?」
「んなもんあらへんわ!」
散々こうちゃんをいじくり回した相原くんは、とうとうこうちゃんに頭を押さえつけられてしまった。
「ってぇ! お前、何すんだよ!」
「そっちがあれやこれやうるさく言うからやろ!?」
「そんな簡単に沸点達してたら、いつかお前の脳の血管、プッチンいくぞ?」
「余計なお世話や!」
そんなふうにじゃれあうような二人の光景を見ていると、何だかんだ言って二人は仲がいいのかもしれないと思えてくる。
喧嘩するほど仲がいい、とも言うしね!
「はいはい、いつまでもそんなことやってないで、部屋割り決めるんでしょ?」
そう言って円形に座るあたしたち四人の前に、実里が手元の鞄から一枚の白い紙を取り出す。
「えっと、今いるこの部屋とあと2部屋あるんだよね?」
そう言いながら、準備よく筆箱から黒いペンを取り出して、紙に四角を三つ書く実里。
「せやで。まぁ一応どの部屋で寝てもらっても構わへんのやけど、一人ひと部屋あるわけちゃうから、適当に部屋わけなな」
「じゃあ、俺、水嶋と同室な! いでっ!」
こうちゃんの言葉を聞くなり調子よくそう言った相原くんの耳を、実里が容赦なく引っ張り上げる。
「はぁ!? あんた、頭おかしいんじゃないの!? 誰が狼野郎とわかりきってるあんたと千紗を一緒にするっていうのよ!」
「なんだよ、それ。じゃあ、早瀬ならいいって言うのかよ!」
実里から手を離してもらったとはいえ、涙目になりながらそう言う相原くん。
っていうか、なんであたしの同室の相手が相原くんかこうちゃんの二択になってるのよ……!
「まぁ、ちぃがいいなら、俺は構わへんよ」
そう言ってあたしを見るこうちゃん。
だから! なんでそうなるのよ~!
救いを求めるように実里の方を見やると、実里は呆れたようにため息をひとつ落とした。
「千紗にそんな危険なことさせるわけないじゃない。千紗はあたしと同室」
実里はそう言うと、三つ書いた四角のうち、2階の一番奥に当たる部屋にあたしと実里の名前を書き入れた。
「で、あんたは早瀬くんと」
そう言って、真ん中の四角にこうちゃんと相原くんの名前を書き入れる実里。
「はぁ!? 俺、こいつと同室かよ!」
「当たり前でしょ! こういうときは、カップル同士で来てる場合を除いて、女同士男同士で部屋をわけるのが基本なんだから!」
がっくりと肩を落とした相原くんに実里が一喝。
「で、今あたしたちのいる部屋は、みんなが自由に話したり遊んだりできる空間にしたらいいんじゃないかな?」
どう思う? と実里はこうちゃんに意見を求める。
「ええんちゃうかな。ほな、これでいこか!」
「マジでこいつと同室かよ」
「嫌なら、相原は外で寝てもろうてもええで?」
いつまでも愚痴をこぼす相原くんに、冗談めかしてそんなことを言うこうちゃん。
「べ、別に、仕方ねぇからお前と同室になってやるよ」
強がって言う相原くんの姿に、あたしと実里は顔を見合わせて笑いあった。
その日の夜は、こうちゃんのおばあさんの作る夕飯をいただいた。
順にお風呂にも入らせてもらったあと、あたしたちは部屋割りでみんなの部屋となったところで、トランプをして過ごす。
「くっそう! なんでまた俺がババなんだよ!」
「しゃあないやろ? 相原が異様に弱いんやから」
嘆く相原くんを一瞥して、カードを切るのはこうちゃんだ。
とりあえずみんなルールを知ってたババ抜きをしたんだけど、5回中5回とも相原くんがババを引き当ててしまったんだ。
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