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「私は久木さんのように美人でもないし、何の肩書きもない一般庶民です。そんな私が何年も片思いしてた俊彦さんにお付き合いしていただけて、短い間でも同じ時間を過ごせて、それだけでも本当に夢みたいでした」
「ちょっ、琴子。お前、何言って……」
「だから俊彦さんが久木さんのことを選ばれたとしても、私──」
だけどその先の言葉は、言わせてもらえなかった。
「んん……っ」
俊彦さんの唇が、私の口を塞いでしまったから。
今までのどのキスよりも、荒々しくて余裕のないキス。
私の身体は一層俊彦さんの腕によりがっちり固められ、俊彦さんの舌は私の舌さえもつかんで離さないかのように、口内で深く絡めてくる。
こんなときなのに、俊彦さんのキスや熱気を感じてクラクラしてしまう。
何でこんなキスしてくるの?
ようやく口を解放されたときには、さっきまでの勢いづいていた私はどこかへ消えてしまっていた。
「……人の話を聞きもせず、勝手な思い込みで暴走するな」
かわりに、さっきのキスと同じ余裕をなくした表情を浮かべた俊彦さんが口を開く。
「そう、ですけど……」
「直子との婚約の話は、当の昔に断っている」
「……え? そうなんですか!?」
そして、単刀直入に告げられた言葉に、私は思わず目を丸くする。
でも、もちろんにわかには信じられない私もいる。
だって、久木さんは政略結婚だと言っていたし、結婚することで会社にとっても有益なところはあるだろうから、俊彦さんはそれに従わざるを得ないものだと思っていたから。
「何その反応。琴子は俺に直子と結婚してほしかったの?」
私の反応に意地悪な笑みを張り付けてそう聞いて来た俊彦さんに、私は勢いよく首を横にふる。
「そういうわけじゃ、ないですけど……」
だけど、そうは言われても、何となく煮え切らない私を見て俊彦さんはおかしそうに笑った。
え、私、何で笑われたの?
「直子とは確かに一時期政略結婚の話があった。だけど、KRUリテイリングと久木グループの考える方向性にブレがあって結局話は煮詰まらずに白紙に戻ったんだ」
「でも、久木さんはそんなつもりじゃないみたいでしたよね……」
むしろ、俊彦さんと政略結婚する気満々のように私には見えた。
それに久木さんもきっと俊彦さんのことが好きだったんだと思う。
「まぁ……。俺と直子は幼なじみだったからか、直子の父親と俺の父は、政略結婚に付き物の業務提携云々の話そっちのけで俺と直子の結婚話に勝手に盛り上がってたからな。直子は気持ちがまだ切り替えられてないだけだと思う」
俊彦さんと久木さんが幼なじみ……!?
かなりびっくりな事実だけど、これで二人が名前呼びだったのには納得がいった。
「琴子が心配しなくても、あいつは見ての通り強い女だから大丈夫だよ」
俊彦さんの言う通り、確かに久木さんのことはわざわざ私が気にかけなくても彼女は前を向いて歩いていきそうな気がする。
でも、まだひとつ、気になるところがある。
「でも、もしもKRUリテイリングと久木グループの考えが一致してたら、俊彦さんは……」
白紙に戻ったとは言われたけど、もしもそのとき政略結婚の話がまとまっていたら、俊彦さんは久木さんと結婚しても良いと思っていたのだろうか。
結果として政略結婚の話は流れたとはいえ、やっぱり俊彦さん自身の気持ちは気になる。
俊彦さんはそんな私の口を閉じるように、彼の人さし指を私の唇に当てた。
「ちょっ、琴子。お前、何言って……」
「だから俊彦さんが久木さんのことを選ばれたとしても、私──」
だけどその先の言葉は、言わせてもらえなかった。
「んん……っ」
俊彦さんの唇が、私の口を塞いでしまったから。
今までのどのキスよりも、荒々しくて余裕のないキス。
私の身体は一層俊彦さんの腕によりがっちり固められ、俊彦さんの舌は私の舌さえもつかんで離さないかのように、口内で深く絡めてくる。
こんなときなのに、俊彦さんのキスや熱気を感じてクラクラしてしまう。
何でこんなキスしてくるの?
ようやく口を解放されたときには、さっきまでの勢いづいていた私はどこかへ消えてしまっていた。
「……人の話を聞きもせず、勝手な思い込みで暴走するな」
かわりに、さっきのキスと同じ余裕をなくした表情を浮かべた俊彦さんが口を開く。
「そう、ですけど……」
「直子との婚約の話は、当の昔に断っている」
「……え? そうなんですか!?」
そして、単刀直入に告げられた言葉に、私は思わず目を丸くする。
でも、もちろんにわかには信じられない私もいる。
だって、久木さんは政略結婚だと言っていたし、結婚することで会社にとっても有益なところはあるだろうから、俊彦さんはそれに従わざるを得ないものだと思っていたから。
「何その反応。琴子は俺に直子と結婚してほしかったの?」
私の反応に意地悪な笑みを張り付けてそう聞いて来た俊彦さんに、私は勢いよく首を横にふる。
「そういうわけじゃ、ないですけど……」
だけど、そうは言われても、何となく煮え切らない私を見て俊彦さんはおかしそうに笑った。
え、私、何で笑われたの?
「直子とは確かに一時期政略結婚の話があった。だけど、KRUリテイリングと久木グループの考える方向性にブレがあって結局話は煮詰まらずに白紙に戻ったんだ」
「でも、久木さんはそんなつもりじゃないみたいでしたよね……」
むしろ、俊彦さんと政略結婚する気満々のように私には見えた。
それに久木さんもきっと俊彦さんのことが好きだったんだと思う。
「まぁ……。俺と直子は幼なじみだったからか、直子の父親と俺の父は、政略結婚に付き物の業務提携云々の話そっちのけで俺と直子の結婚話に勝手に盛り上がってたからな。直子は気持ちがまだ切り替えられてないだけだと思う」
俊彦さんと久木さんが幼なじみ……!?
かなりびっくりな事実だけど、これで二人が名前呼びだったのには納得がいった。
「琴子が心配しなくても、あいつは見ての通り強い女だから大丈夫だよ」
俊彦さんの言う通り、確かに久木さんのことはわざわざ私が気にかけなくても彼女は前を向いて歩いていきそうな気がする。
でも、まだひとつ、気になるところがある。
「でも、もしもKRUリテイリングと久木グループの考えが一致してたら、俊彦さんは……」
白紙に戻ったとは言われたけど、もしもそのとき政略結婚の話がまとまっていたら、俊彦さんは久木さんと結婚しても良いと思っていたのだろうか。
結果として政略結婚の話は流れたとはいえ、やっぱり俊彦さん自身の気持ちは気になる。
俊彦さんはそんな私の口を閉じるように、彼の人さし指を私の唇に当てた。
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