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第3章
波乱を呼ぶ甘いキス(3)
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「これが、俺が自転車を置いてきた本当の理由」
「えっ、と。柳澤く……」
突然のことに驚いて顔を上げるけれど、その声は柳澤くんの口の中へと吸い込まれる。
「好きだよ、花梨」
触れるだけの、キス。
だけど、この前の修学旅行の夜に交わしたキスよりも長い時間、唇が触れ合っていた。
「え……っ!?」
い、今、花梨って……っ!
「や、そろそろ名前で呼ぼうかな、とか思ってさ。委員長って呼ぶのも、結構好きだったけど」
嫌? と不安げに聞いてくる柳澤くん。
「い、嫌なわけ、ないよ」
確かに以前は、委員長ってあだ名はあまり好きなわけじゃなかった。
だけど柳澤くんを好きになってからは、柳澤くんに委員長って呼ばれるのは好きだった。
でもそれは決して名前で呼んでもらえなくてもいいっていうわけではなくて……。
「なら、これからは花梨って呼ぼうかな」
そんな風に言われて、私の頬に一気に熱が集まった。
でも、私だけ名前で呼んでもらうわけにはいかない、よね……?
「じゃ、じゃあ、私は……そ、そう、奏……」
ひゃ~っ。男子のことを名前で呼ぶなんて初めてだから、なんだかすごく緊張するよ……!
やっぱりこの場合、呼び捨てのほうがいいのかな……?
私がモジモジとなかなか呼ぶことができずにいると、
「奏ちゃんでいいよ。その方が呼びやすいでしょ?」
柳澤くんは苦笑いしながらそう言ってくる。
「え、で、でも……」
「俺、実は花梨に“奏ちゃん”って呼ばれるのも夢だったりするし」
少しはにかみながら言う柳澤くん。
それ、反則だから……!
かっこいいのに、可愛い……。
胸がきゅんとなる中、コクコクとうなずくと
「じゃあ、呼んでみて?」
そう柳澤くんに言われて、私は小さく口を開く。
「……そ、奏ちゃん……」
「花梨」
私が呼ぶと、奏ちゃんも私の名前を呼んで、またひとつキスをくれる。
「うん。よく言えました。やっぱり委員長に奏ちゃんって呼ばれると、興奮する」
「そ、そう?」
「あ、花梨って呼ぶって言ったそばから、委員長って言っちゃったし!」
「いいよいいよ。奏ちゃんになら何て呼ばれてもいいよ」
ドキッとするようなことを言ったと思えば、そんな風に焦る奏ちゃんに思わず笑ってしまう。
「さっきは、事故のこと話してくれてありがとう。俺は、花梨がどんな過去を背負ってても、花梨のことは好きだから」
「……え?」
そうしているうちにも、再び降り注ぐ甘いキス。
もしかして、奏ちゃん。私があの事故のことを話して不安になってたの、気づいてたのかな……?
「ありがとう、奏ちゃん……」
奏ちゃんの言葉に、思わず涙が出そうになった。
なんとなく甘い余韻に浸っていたけれど、そこでハッと周囲をさりげなく見回す。
今更だけど、ちょっと周囲の目が気になったんだ。
まだお父さんが帰ってくる時間帯ではないけれど、万が一ってこともあるし……。
「あ、もしかして、家の人に俺のことバレるとまずい?」
「そういうわけじゃないけど……」
奏ちゃんに気づかれないように、目だけで周りを見たつもりだったのに、あっさり気づかれていたようだ。
だけど、そこで“うん”と言ってしまうと、まるで私たちの関係が反対されているかのように聞こえかねない。
私は思わず口ごもってしまった。
「ってか、そりゃ気にするか。さすがに家の人にキスしてるところなんて、見られたくないもんな」
「う、うん」
ハハッと笑う奏ちゃんに、思わず私も笑顔になる。
「えっ、と。柳澤く……」
突然のことに驚いて顔を上げるけれど、その声は柳澤くんの口の中へと吸い込まれる。
「好きだよ、花梨」
触れるだけの、キス。
だけど、この前の修学旅行の夜に交わしたキスよりも長い時間、唇が触れ合っていた。
「え……っ!?」
い、今、花梨って……っ!
「や、そろそろ名前で呼ぼうかな、とか思ってさ。委員長って呼ぶのも、結構好きだったけど」
嫌? と不安げに聞いてくる柳澤くん。
「い、嫌なわけ、ないよ」
確かに以前は、委員長ってあだ名はあまり好きなわけじゃなかった。
だけど柳澤くんを好きになってからは、柳澤くんに委員長って呼ばれるのは好きだった。
でもそれは決して名前で呼んでもらえなくてもいいっていうわけではなくて……。
「なら、これからは花梨って呼ぼうかな」
そんな風に言われて、私の頬に一気に熱が集まった。
でも、私だけ名前で呼んでもらうわけにはいかない、よね……?
「じゃ、じゃあ、私は……そ、そう、奏……」
ひゃ~っ。男子のことを名前で呼ぶなんて初めてだから、なんだかすごく緊張するよ……!
やっぱりこの場合、呼び捨てのほうがいいのかな……?
私がモジモジとなかなか呼ぶことができずにいると、
「奏ちゃんでいいよ。その方が呼びやすいでしょ?」
柳澤くんは苦笑いしながらそう言ってくる。
「え、で、でも……」
「俺、実は花梨に“奏ちゃん”って呼ばれるのも夢だったりするし」
少しはにかみながら言う柳澤くん。
それ、反則だから……!
かっこいいのに、可愛い……。
胸がきゅんとなる中、コクコクとうなずくと
「じゃあ、呼んでみて?」
そう柳澤くんに言われて、私は小さく口を開く。
「……そ、奏ちゃん……」
「花梨」
私が呼ぶと、奏ちゃんも私の名前を呼んで、またひとつキスをくれる。
「うん。よく言えました。やっぱり委員長に奏ちゃんって呼ばれると、興奮する」
「そ、そう?」
「あ、花梨って呼ぶって言ったそばから、委員長って言っちゃったし!」
「いいよいいよ。奏ちゃんになら何て呼ばれてもいいよ」
ドキッとするようなことを言ったと思えば、そんな風に焦る奏ちゃんに思わず笑ってしまう。
「さっきは、事故のこと話してくれてありがとう。俺は、花梨がどんな過去を背負ってても、花梨のことは好きだから」
「……え?」
そうしているうちにも、再び降り注ぐ甘いキス。
もしかして、奏ちゃん。私があの事故のことを話して不安になってたの、気づいてたのかな……?
「ありがとう、奏ちゃん……」
奏ちゃんの言葉に、思わず涙が出そうになった。
なんとなく甘い余韻に浸っていたけれど、そこでハッと周囲をさりげなく見回す。
今更だけど、ちょっと周囲の目が気になったんだ。
まだお父さんが帰ってくる時間帯ではないけれど、万が一ってこともあるし……。
「あ、もしかして、家の人に俺のことバレるとまずい?」
「そういうわけじゃないけど……」
奏ちゃんに気づかれないように、目だけで周りを見たつもりだったのに、あっさり気づかれていたようだ。
だけど、そこで“うん”と言ってしまうと、まるで私たちの関係が反対されているかのように聞こえかねない。
私は思わず口ごもってしまった。
「ってか、そりゃ気にするか。さすがに家の人にキスしてるところなんて、見られたくないもんな」
「う、うん」
ハハッと笑う奏ちゃんに、思わず私も笑顔になる。
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