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第7章
結婚前夜(2)
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桃華の中にいろんな思いが駆け巡り、溢れそうになる涙を堪えきれなくなり、箸を止める。
「桃華……?」
桃華の父親も母親も驚いた様子で桃華を見つめる。
「お父さん……。お母さん……」
と言葉を漏らすのみで、ポロポロと涙をこぼす桃華に、「あらあら」と桃華の母親は桃華の傍に来て、そっと桃華を抱きしめた。
そして、母親にぎゅうっとしがみつく桃華に、母親はゆっくり口を開いた。
「桃華、お父さんもお母さんも嬉しいのよ。だって、明日は桃華の結婚式。桃華の晴れ舞台なのよ。
健康で丈夫な子どもに産んであげられなくて、いっぱい辛い思いや我慢をさせちゃってごめんなさい。
桃華が無事こうして大きくなって、成人して、結婚する、これ以上に嬉しいことなんてないわ。ねぇ、お父さん」
桃華の父親も桃華の頭に手を添え、口を開く。
「そうだぞ、桃華。
嬉しい気持ちとともに、新しい生活への不安もあるだろう。
でも、拓人くんなら安心して桃華を任せられる。
彼は職業柄、正直言うと初めは不安だった。
でも桃華が1番よく分かってるだろうけど、彼は、どんなに忙しくても桃華との時間を大切にしてくれる男性だ。
それに、桃華の身体のことも理解してくれて、桃華にどんな運命が待っていても、受け入れる覚悟までしてくれている。
なかなかあそこまで強い眼差しで意思を示す人はそういない。
彼の気持ちは生半可なものではない。きっと何があっても、桃華を幸せにしてくれると信じてる。
だから、安心して拓人くんのところへ行きなさい。
お父さんたちはいつでもこの家に居るから、寂しくなったり何か困ったことがあったら、いつでも会いに来てくれたらいい」
桃華はわぁっと子どものように声を上げて泣いた。
両親に甘えられる最後の日のように感じて、桃華は思いっきり甘えた。
たくさん泣いて、たくさん両親の愛を感じて、落ち着きを取り戻した桃華は、少し恥ずかしそうにうつむくと、用意していたプレゼントを差し出した。
父親にはネクタイ、母親には可愛らしいデザインのエプロン。
どちらも、桃華が今までの感謝の気持ちを込めて一生懸命選んだ贈り物。
「ここまで大切に育ててくれて、ありがとう。
重い病気だったのに、見捨てないでくれてありがとう。
いっぱい苦労とかお金とかかかる子どもだったのに、本当に……ありがとう」
桃華なりの精一杯の感謝の言葉だった。
再び大粒の涙をこぼす桃華。
桃華の父親も母親も目にいっぱい涙を浮かべて、目の前で涙を流しながら感謝の言葉を述べる桃華に言う。
「お父さんたちはな、桃華が少しでも元気に幸せになってくれることが1番なんだ。
桃華が幸せになる、それが1番の親孝行だ。
だから桃華、拓人くんと幸せになるんだぞ」
桃華はコクコクと力強く頷きながら涙を拭うと
「……うんっ!」
と力強く返事を返した。
そして、
「私、お父さんとお母さんの子どもとして、桃華として生まれて来て、本当に良かった……ありがとう……」
と言い、父親と母親の手をぎゅっと握った。
泣いても笑っても、明日はいよいよ結婚式。
拓人との幸せな未来を描きながら。
拓人との今までを振り返りながら。
桃華はその夜はゆっくり眠りに就いた。
「桃華……?」
桃華の父親も母親も驚いた様子で桃華を見つめる。
「お父さん……。お母さん……」
と言葉を漏らすのみで、ポロポロと涙をこぼす桃華に、「あらあら」と桃華の母親は桃華の傍に来て、そっと桃華を抱きしめた。
そして、母親にぎゅうっとしがみつく桃華に、母親はゆっくり口を開いた。
「桃華、お父さんもお母さんも嬉しいのよ。だって、明日は桃華の結婚式。桃華の晴れ舞台なのよ。
健康で丈夫な子どもに産んであげられなくて、いっぱい辛い思いや我慢をさせちゃってごめんなさい。
桃華が無事こうして大きくなって、成人して、結婚する、これ以上に嬉しいことなんてないわ。ねぇ、お父さん」
桃華の父親も桃華の頭に手を添え、口を開く。
「そうだぞ、桃華。
嬉しい気持ちとともに、新しい生活への不安もあるだろう。
でも、拓人くんなら安心して桃華を任せられる。
彼は職業柄、正直言うと初めは不安だった。
でも桃華が1番よく分かってるだろうけど、彼は、どんなに忙しくても桃華との時間を大切にしてくれる男性だ。
それに、桃華の身体のことも理解してくれて、桃華にどんな運命が待っていても、受け入れる覚悟までしてくれている。
なかなかあそこまで強い眼差しで意思を示す人はそういない。
彼の気持ちは生半可なものではない。きっと何があっても、桃華を幸せにしてくれると信じてる。
だから、安心して拓人くんのところへ行きなさい。
お父さんたちはいつでもこの家に居るから、寂しくなったり何か困ったことがあったら、いつでも会いに来てくれたらいい」
桃華はわぁっと子どものように声を上げて泣いた。
両親に甘えられる最後の日のように感じて、桃華は思いっきり甘えた。
たくさん泣いて、たくさん両親の愛を感じて、落ち着きを取り戻した桃華は、少し恥ずかしそうにうつむくと、用意していたプレゼントを差し出した。
父親にはネクタイ、母親には可愛らしいデザインのエプロン。
どちらも、桃華が今までの感謝の気持ちを込めて一生懸命選んだ贈り物。
「ここまで大切に育ててくれて、ありがとう。
重い病気だったのに、見捨てないでくれてありがとう。
いっぱい苦労とかお金とかかかる子どもだったのに、本当に……ありがとう」
桃華なりの精一杯の感謝の言葉だった。
再び大粒の涙をこぼす桃華。
桃華の父親も母親も目にいっぱい涙を浮かべて、目の前で涙を流しながら感謝の言葉を述べる桃華に言う。
「お父さんたちはな、桃華が少しでも元気に幸せになってくれることが1番なんだ。
桃華が幸せになる、それが1番の親孝行だ。
だから桃華、拓人くんと幸せになるんだぞ」
桃華はコクコクと力強く頷きながら涙を拭うと
「……うんっ!」
と力強く返事を返した。
そして、
「私、お父さんとお母さんの子どもとして、桃華として生まれて来て、本当に良かった……ありがとう……」
と言い、父親と母親の手をぎゅっと握った。
泣いても笑っても、明日はいよいよ結婚式。
拓人との幸せな未来を描きながら。
拓人との今までを振り返りながら。
桃華はその夜はゆっくり眠りに就いた。
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