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第5章

寮生活(2)

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「まぁ、桃華に出会うまでは結婚とかしないつもりだったしな。俺自身驚いてるわ」


 拓人はそう言いながら、桃華から来ていたメッセージの返信する。


 その様子を見て、シンジが口を開く。


「桃華ちゃんか?」


「おう! 夜ご飯何食べたかって聞かれたから、パスタとサラダと唐揚げだって送った」


 桃華に携帯電話をプレゼントしてから、桃華からは些細なことでたくさんメッセージが送られて来ていた。


 拓人は空き時間の度に、嬉しそうに小まめに返信していた。


「幸せな奴だな」


 シンジはフッと笑う。 


「拓人? 情報誌の間からこんなん出て来たけど? 頑張んだなぁ」


 ヒロが拓人の目の前にヒラヒラさせたのは、先日桃華と選んで決めた婚約指輪の領収書だった。


「うわっ! おまえ、なくしたら困るから、勝手に出してんじゃねぇよっ!!」


 拓人は慌ててその領収書を取り上げる。



 拓人のオフの日やパンフレット等を利用していろいろ探した結果、婚約指輪はオーダーメイドのお店で、桃華の好みに合わせて作ることにしたのだ。


 拓人も桃華もそこのお店の雰囲気を気に入っていて、後日、結婚指輪もそこに依頼する予定でいた。



「意外と早う準備進んでんねんな。式は来年の春先の予定やんな?」


「一応な。今度ライブツアー終わったら、桃華が希望してる式場のブライダルフェアとかってのに行って来るんだ」


 拓人はヒロとカイトの手元にあった結婚式場のパンフレットのうちのひとつを手に取る。


「めっちゃ海が綺麗そうなとこやん」

 カイトがパンフレットの写真を見て、声を上げる。


「いつも桃華と行く水族館の近くの式場なんだ。見に行って桃華がここが良いって言ったら、ここにするつもりだ」


「でも良いよなぁ~拓人見てるとなんか羨ましい」

 ヒロが少し寂しそうに呟いた。



「何言ってんだ。特定の女を作りもしないおまえが珍しい」

 シンジがヒロの呟きに不思議そうに返す。


「確かに。ヒロの場合、女を1人に絞ることから始めねぇと話になんねぇだろ?」

 拓人も続ける。


「良いじゃねぇかっ! 俺だって憧れんだよ」

 ヒロはそのまま肩を落とした。


「ヒロっ! 何しょぼくれてんねん! ほらっ、これでも食って元気出し?」

 カイトが元気づけるかのようにたくさんの枝豆をヒロの口にほうり込んだ。


 枝豆によりパンパンに膨らんだ頬で、口をモグモグさせながらカイトを睨みつけるヒロ。


「なんやねん! おまえ、人の口にはホイホイ食い物ほうり込むくせに、自分がされたら怒るんかいな!」


 みんなその様子にお腹を抱えて笑った。


 こうしていつものように、にぎやかな楽しい夜は更けていった。

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