55 / 115
第4章
仕上げ(2)
しおりを挟む
「へぇ。絶好調じゃん」
いつの間にか桃華の後ろに居たユウスケに耳元でそう言われ、桃華は思わずビクッと飛び上がった。
「わわっ!? びっくりしたぁ!?」
「モモ、驚きすぎ~」
ユウスケはいつものようにお腹を抱えてケラケラ笑った。
さっきユウスケの涙を見てしまった桃華は、その姿に少しホッとした。
「その調子で明日も吹けばバッチリだよ。モモは良く頑張ったと思うよ」
「そうかな。ユウくんにそう言ってもらえると、自信出るよ」
「まぁ、俺程じゃないけどね~」
ユウスケは得意げに笑った。
「もしかしてモモ、この前TAKUと俺のことで揉めて、愛が深まっちゃったとか?」
ユウスケに見抜かれて、みるみる内に頬が赤く染まる桃華。
「やっぱり! モモのフルートの音聴いたら分かるよ」
「え……っ」
そしてユウスケは桃華の両肩に両手を添えた。
「明日は頑張ってな。TAKUに嫌なことされたら、いつでも俺のとこ来て良いんだよ」
最後にそう言って、ユウスケは意地悪な笑みを浮かべる。
「ユ、ユウくん……」
「まぁ何となく、あのまま仲直りして、2人の仲が進展したなら大丈夫だとは思うけど」
ユウスケはそう笑った後、明日に向けての注意点やアドバイスをいろいろ話してくれた。
こうして、桃華の拓人への『桃色恋華』は後は本番の明日を控えるのみとなった。
「ここまで来れたのも、ユウくんのおかげだよ。本当にありがとう」
そう言って、桃華は小さなブルーのラッピング袋に包まれたプレゼントをユウスケに渡す。
「これ、良かったら……」
一応カレンダーでは、今日がバレンタイン。
義理だけど、いつもお世話になっているユウスケへの感謝の気持ちを込めて作ったチョコだった。
「え? 俺に……?」
目を見開いて驚くユウスケに、桃華は少し申し訳なさそうに頷いた。
「モモからもらえるとか! 義理でも失敗作でも嬉しいよ! ありがとうっ!!」
「し、失敗作じゃないもん」
(確かに、義理だけど……)
桃華の少し怒ったような姿を、ユウスケは本当におかしそうに笑った。
「モモはさ、TAKUにあの曲聴かせた後も、フルート続ける?」
桃華の心臓が少しだけ反応したような気がした。
「え……、うん」
そして、桃華の返事に桃華の心臓も微笑んだような感じがした。
桃華自身、フルートを始めて、いつの間にかフルートを好きになっていた。
でも、やっぱりそれ以上に桃華の中で感じる物があった。
フルートを吹く度に感じる、桃華の中のもうひとつの魂。
桃華に“今”を与えてくれている、心臓。
自分のためだけじゃなく、自分の中に居るもうひとつの魂のためにも、続けたいって思った。
ユウスケは桃華の返事に安心したように微笑んだ。
「良かった。そのフルート、もうモモにあげるよ」
「えっ!? で、でも……」
「貸す時にも言ったじゃん! それは卒業した中学にあげる予定でいたフルートだったって。あげる相手をモモに変えただけだよ」
桃華は何も言い返せず、「ありがとう……」とフルートをギュッと握りしめた。
「そのかわり、モモが卒業するまでは、こうやって一緒にフルート吹こうな?」
ユウスケは甘えるような瞳で桃華を見つめ、甘えるような声で桃華に言った。
「うん」
桃華が小さく返事をすると、ユウスケは嬉しそうに笑った。
いつの間にか桃華の後ろに居たユウスケに耳元でそう言われ、桃華は思わずビクッと飛び上がった。
「わわっ!? びっくりしたぁ!?」
「モモ、驚きすぎ~」
ユウスケはいつものようにお腹を抱えてケラケラ笑った。
さっきユウスケの涙を見てしまった桃華は、その姿に少しホッとした。
「その調子で明日も吹けばバッチリだよ。モモは良く頑張ったと思うよ」
「そうかな。ユウくんにそう言ってもらえると、自信出るよ」
「まぁ、俺程じゃないけどね~」
ユウスケは得意げに笑った。
「もしかしてモモ、この前TAKUと俺のことで揉めて、愛が深まっちゃったとか?」
ユウスケに見抜かれて、みるみる内に頬が赤く染まる桃華。
「やっぱり! モモのフルートの音聴いたら分かるよ」
「え……っ」
そしてユウスケは桃華の両肩に両手を添えた。
「明日は頑張ってな。TAKUに嫌なことされたら、いつでも俺のとこ来て良いんだよ」
最後にそう言って、ユウスケは意地悪な笑みを浮かべる。
「ユ、ユウくん……」
「まぁ何となく、あのまま仲直りして、2人の仲が進展したなら大丈夫だとは思うけど」
ユウスケはそう笑った後、明日に向けての注意点やアドバイスをいろいろ話してくれた。
こうして、桃華の拓人への『桃色恋華』は後は本番の明日を控えるのみとなった。
「ここまで来れたのも、ユウくんのおかげだよ。本当にありがとう」
そう言って、桃華は小さなブルーのラッピング袋に包まれたプレゼントをユウスケに渡す。
「これ、良かったら……」
一応カレンダーでは、今日がバレンタイン。
義理だけど、いつもお世話になっているユウスケへの感謝の気持ちを込めて作ったチョコだった。
「え? 俺に……?」
目を見開いて驚くユウスケに、桃華は少し申し訳なさそうに頷いた。
「モモからもらえるとか! 義理でも失敗作でも嬉しいよ! ありがとうっ!!」
「し、失敗作じゃないもん」
(確かに、義理だけど……)
桃華の少し怒ったような姿を、ユウスケは本当におかしそうに笑った。
「モモはさ、TAKUにあの曲聴かせた後も、フルート続ける?」
桃華の心臓が少しだけ反応したような気がした。
「え……、うん」
そして、桃華の返事に桃華の心臓も微笑んだような感じがした。
桃華自身、フルートを始めて、いつの間にかフルートを好きになっていた。
でも、やっぱりそれ以上に桃華の中で感じる物があった。
フルートを吹く度に感じる、桃華の中のもうひとつの魂。
桃華に“今”を与えてくれている、心臓。
自分のためだけじゃなく、自分の中に居るもうひとつの魂のためにも、続けたいって思った。
ユウスケは桃華の返事に安心したように微笑んだ。
「良かった。そのフルート、もうモモにあげるよ」
「えっ!? で、でも……」
「貸す時にも言ったじゃん! それは卒業した中学にあげる予定でいたフルートだったって。あげる相手をモモに変えただけだよ」
桃華は何も言い返せず、「ありがとう……」とフルートをギュッと握りしめた。
「そのかわり、モモが卒業するまでは、こうやって一緒にフルート吹こうな?」
ユウスケは甘えるような瞳で桃華を見つめ、甘えるような声で桃華に言った。
「うん」
桃華が小さく返事をすると、ユウスケは嬉しそうに笑った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる